2019/04/17

ウラナミシジミ♀が後翅を擦り合わせる訳とは?



2018年10月中旬

水路沿いに咲いたセイタカアワダチソウの群落でウラナミシジミ♀(Lampides boeticus)を見つけました。


▼前回の記事(2ヶ月前の8月中旬に撮影)
尾状突起を破損したウラナミシジミの飛び立ち【HD動画&ハイスピード動画】

東北地方をフィールドとする私にとってウラナミシジミは去年まで一度も見たことのなかった珍しい蝶なのですが、今年になってこれが早くも2頭目の出会いとなります。
本種はツマグロヒョウモンと同じく南方系で渡りをする蝶ですから、今年の夏の猛暑や地球温暖化を利用して北進中なのでしょう。



この個体は訪花中ではなく、翅を閉じて蕾に止まり休んでいました。
飛び立つ瞬間を動画撮影しようと私がしつこくちょっかいをかけたら、左右の後翅を擦り合わせる行動を始めました。
地味な動きですけど、これは自衛のための自己擬態行動なのでしょう。


福田晴夫、高橋真弓『蝶の生態と観察』によると、

ウラナミシジミ類などの後翅には、糸のような尾状突起がある。このつけ根には赤斑や黒点などがあり、翅を閉じてとまると、ある種の昆虫の頭部に見えるのかもしれない。後翅をすり合わせるようにして動かすと、1対の尾状突起は、ちょうど昆虫の触角のように動くので、捕食者が偽の「頭部」を攻撃すると、蝶はそれを与えて反対側に飛び、難をのがれることになる。この場合、尾状突起の先端が白色となりめだちやすいことは注目される。 (p104より引用)


(ウラナミシジミの)後翅の後端には黒い斑点が2つあり、2つの斑点の間には細い尾状突起が突き出ている。この黒い斑点と尾状突起は複眼と触角に似ていて、頭部に似た模様をもつことで身体の方向や頭部の位置について敵の目をあざむいていると考えられている。(wikipediaより引用)


ところが、この個体は右の尾状突起が破損していて左側しか残っていませんから、擬態の効果は半減してそうです。
右後翅の肛角部付近の眼状紋を狙って鳥が嘴でつついたのかもしれませんが、通常のビークマークは左右対称に破損するはずです。
更に、前翅も縁がギザギザに損傷していることが長旅の苦労を偲ばせます。
欲を言えば、翅の状態がきれいな(尾状突起が無傷の)個体で撮り直したいものです。

やがて少し飛んで近くのセイタカアワダチソウの葉に止まり直しました。
今度は翅を全開にして日光浴です。
残念ながら私には翅表を見せてくれず、下面しか撮れませんでした。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。

つづく→飛び立ち


ウラナミシジミ♀:翅裏@セイタカアワダチソウ蕾
ウラナミシジミ♀:下面@セイタカアワダチソウ葉+日光浴

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