2016年7月下旬
住宅地の道端に咲いたメマツヨイグサの群落で夜、スズメガ科の一種が訪花していました。
暗闇でホバリング(停空飛翔)しながら吸蜜する様子を赤外線の暗視カメラで撮り始めたものの、すぐに逃げられてしまいました。
同定用の、写真も撮れていません。
Newton special issue『植物の世界―ナチュラルヒストリーへの招待〈第2号〉』p12によると、
淡い光でも目立ち、やわらかな香りを放つこの花(オオマツヨイグサ)には、スズメガの仲間がよく訪れる。花粉は粘着糸でつづられていて、ガに一部でもつくと、ぞろぞろと多量の花粉がからみついていく。
十亀好雄『ふしぎな花時計:身近な花で時間を知ろう』によれば、
マツヨイグサの仲間は、花粉がねばりけのある糸で数珠のようにつながっていて、夜、スズメガなどがやってくるとその体にまとわりついて、たくさんの花粉を一度に運ばせることができるしくみをもっています。(p113より引用)
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翌日の晩にも現場を再訪しました。
記録映像として同じ群落のメマツヨイグサを白色LEDで照らしながら撮っていたら偶然、開花の瞬間に立ち会えました。
微速度撮影や早回し映像にしなくてもリアルタイムで蕾がポンと解けて直径5cmほどの黄色い花がみるみる内に広がります。
花の芳香が強く素晴らしいのは、夜行性のスズメガを誘引して花粉を運んでもらうためです。
昨年は切り花を室内に持ち込んで開花の瞬間を撮影しましたけど、野外で直に観察できたのは非常に幸運でした♪
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【追記】
加藤真『夜の送粉共生系』によると、
アカバナ科のマツヨイグサ類などはスズメガ媒花として適応放散した一群である。日本のスズメガ媒花はひじょうに少ない。(中略)日本産スズメガの種数はけっして少なくはないが、琉球列島を除けばその多くはマルハナバチ媒花の盗蜜者の地位にあると思われる。 (『花の自然史:美しさの進化学』p82より引用)
【追記2】
石井博『花と昆虫のしたたかで素敵な関係:受粉にまつわる生態学』によると、
夜行成果薄明薄暮性の蛾に受粉を依存する植物(ガ媒)の花は、以下の特徴をもつことが多いといわれています。
- 夜か薄明の時間帯に咲く。
- 花の色は白科緑、薄色系、または褐色。
- 花筒か距が発達して細長く、花蜜が奥深くに隠れている。
- 葯や柱頭が外に向かって飛び出しているものも多い。
- 強くて甘い香りをもつ。
- 花蜜の濃度は薄い。 (p65より引用)
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