2024/07/22

クリ園に残されたツキノワグマの糞塊を調べると…

 

2023年10月中旬・午後14:10頃・晴れ 

里山で砂利が敷かれた林道にクリ(栗)のイガや落果が大量に散乱し、往来する車によって踏み潰されていました。 
山に自生するクリの木から落ちたのではなく、砂利道の左右は栗園になっていて、大規模に植栽されたクリ(栗)の木が大きく育っていました。 

栗園の道端に巨大な獣糞を見つけました。 
タヌキの溜め糞でもなさそうですし、1回分の排泄物だとすると、おそらくツキノワグマ(Ursus thibetanus)の大便だと思われます。 
採寸代わりに、熊よけスプレー(長さ20cm)を糞塊の横に並べて置いてみました。 
糞の表面はやや乾いていたものの未だ新鮮で、糞虫やハエなどはなぜか来ていませんでした。 

即席で糞分析をしてみることにしました。 
拾った小枝を使って糞塊をほぐしてみると、柔らかい触感で、薄い黄土色のペースト状になりました。 (※追記参照)
作業中にクマの糞塊から小型のコオロギがピョンと跳んで逃げたような気がしたのですが、見失ってしまいました。 



どうやらツキノワグマがクリの堅果(落果)をたらふく食べた後に排便したようで、糞の中に未消化の種子は含まれていませんでした。 


本格的に調べるには獣糞を水で洗い流しながらザルで濾す必要があるのですが、少なくともアケビやカキノキの種子のような分かりやすい種子は出てきませんでした。 
クリの実(堅果)を食べたのなら、茶色い果皮の断片が糞に含まれていそうなものですが、ありませんでした。
噛み砕いてから果皮を吐き出すのかな?(※追記参照)
糞分析に使った小枝の先端に付着した糞におそるおそる鼻を近づけて匂ってみたのですが、驚くことにほぼ無臭でした。 
なんとも形容し難い生臭さだけで、いわゆる糞便臭はありませんでした。 

関連記事(4年前の撮影)▶ ツキノワグマの糞塊をほぐしてみると… 


ツキノワグマは食肉目特有の単純な構造の消化器官を持っているため、多くの植物質の食物の消化効率はよくはない。そのため、一度に大量に摂取することができる植物を食物として選択し、(中略)できる限り採食効率を高めていると考えられる。(『日本の食肉類: 生態系の頂点に立つ哺乳類』第9章:ツキノワグマp214より引用)


クマはクリの実を噛み砕いて食べるので、排泄した糞からクリが芽生えることはありません。
したがって、クリにとってツキノワグマは種子捕食者になります。
野ネズミがクリの落果を持ち去って冬の食料として貯食しますが、食べ忘れた少数のクリから発芽します。
つまりクリの種子は貯食型の動物散布で分布を広げます。

現場のクリ園は電気柵で囲われていないため、ツキノワグマが自由に出入りして食べ放題になっています。
つまり、現状ではクマを里山で餌付けしていることになります。

2023年10月18日のNHKニュースによると、山形県にクマ出没警報が発令されました。 
「ことしは、クマの好物であるブナの実が凶作」とのことです。 
(なんか、毎年同じこと言ってない?) 


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※【追記】
山形県と秋田県をフィールドとしてツキノワグマの調査を続けておられる永幡嘉之さんの著作『クマはなぜ人里に出てきたのか』を読むと、個人的な謎が解けました。

 ミズナラやクヌギのドングリを食べたクマの糞を見て、違和感をおぼえました。まるでモンブランのようにペースト状で、殻が含まれていないのです。それは各地で見たクリでできた糞についても同じです。クリを食べた跡を観察した際には、外側の固い皮(鬼皮と呼ばれます)が地面に散乱していました。実の大きなクリならまだわかるのですが、より小さいミズナラまで殻を外して食べています。その際に手を使うとは考えられませんので、おそらく口のなかで皮を外しているはずなのです。
 一方で、ブナの実を食べたクマの糞には、常に殻がびっしりと詰まっていますし、より実が小さなソバやイネでも同じです。(p95より引用)

クマがクリを食べた跡。鬼皮と呼ばれる殻だけを外している。(p129に掲載された写真のキャプションより引用)

野ネズミもクリの落果を食べたり持ち去って貯食したりするはずですが、野ネズミ/クマによるクリの食痕は見分けられるのでしょうか?

関連記事(同時期および1年前の撮影)▶ 

アナグマの溜め糞場があるスギ林床で採食するキジバトとヤマガラの混群【野鳥:トレイルカメラ】

 

2023年10月中旬 

シーン1:10/12・午後14:00・晴れ(@0:00〜) 
平地のスギ防風林で、明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の様子です。 
画面の中央で風倒木の朽ち果てた切株があります。 
切株の手前の溝(涸れた水路)に古い手押し車(一輪車)のフレームが錆びたまま放置されています。 
このフレームの中にニホンアナグマ(Meles anakuma)専用の溜め糞場stmpがあり、黒い軟便が溜まっています。 


シーン2:10/17・午後12:07・晴れ(@0:03〜) 
スギの林床に3羽のキジバト(Streptopelia orientalis)が散開し、各々が餌を探し歩いていました。 
種子食性のキジバトが好むような木の実や種子は落ちてないと思うのですけど、一体何を食べに来たのでしょうか? 
スギ防風林に繰り返しやって来るということは、うっかり迷い込んだ訳ではなさそうです。

関連記事(9日前に現場近くで撮影)▶ スギ防風林に迷い込んだキジバト【野鳥:トレイルカメラ】 


同時に朽ちた切り株の陰に来ていた小鳥はヤマガラ(Sittiparus varius)でした。 
ヤマガラの採餌行動に注目するために、1.5倍に拡大した上でリプレイしてみましょう。(@0:43〜) 
切り株に飛び乗って獲物となる虫を探してから、右に飛び去りました。 

余談ですが、アナグマの溜め糞stmpの周辺で飛び回っているハエはおそらくベッコウバエ♀♂(Dryomyza formosa)と思われます。 
後日、現場入りした際に求愛行動を観察しました。(映像公開予定) 

秋風が吹くと、防風林でスギの幹が左右にゆっくり揺れます。 
その風揺れのせいでトレイルカメラが頻繁に誤作動するので、厄介です。 


シーン3:10/17・午後12:11・晴れ(@1:08〜) 
画面の左奥から1羽のキジバトが再び歩いて登場しました。 
スギの落ち葉が堆積した林床をあちこち啄んでいます。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
ヤマガラは他のカラ類(シジュウカラやヒガラ、コガラなど)と行動を共にしながら採食することが知られています。 
しかし今回のようにキジバトと混群を形成するのは、かなり珍しく思いました。 
たまたまなのかな? 
キジバトの群れの動向が気になって、ヤマガラが偵察に来たのかもしれません。

今回登場したキジバトもヤマガラもアナグマ専用の溜め糞stmpに興味を示しませんでした。
すぐ近くにあるタヌキの溜め糞場wbcと比べてアナグマは排便に通う頻度が低いために、食糞性の昆虫もあまり集まらず、鳥にとって魅力がないのでしょう。 
アナグマは主にミミズを食べるらしく、未消化のまま排泄された種子なども溜め糞stmpには含まれていません。 


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2024/07/21

アナグマの空き巣に侵入して中に潜む虫を捕食する秋のホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年10月中旬〜下旬

シーン0:10/12・午後14:38・晴れ・気温28℃(@0:00〜) 
シーン0:10/12・午後16:59・晴れ(@0:04〜) 
明るい時間帯にたまたまフルカラーで録画された現場の状況です。 
ニホンアナグマ(Meles anakuma)の旧営巣地(セット)がある平地の二次林を新旧2台のトレイルカメラで監視しています。 


シーン1:10/17・午後17:04(@0:08〜)日の入り時刻は午後17:03。 
ちょうど日没前後にホンドテン(Martes melampus melampus)が現れました。 
毛皮が白っぽく見えますが、旧機種による動画撮影では夏毛か冬毛か見分けられないのが残念です。 
アナグマの巣口Rの奥を覗き込んでしばらく匂いを嗅ぎ回ってから、巣の主(アナグマ)が留守だと判断したようです。
遂に意を決して巣穴Rの奥に侵入しました。 
巣内で方向転換したようで、しばらくすると頭から外に出てきました。 
その後は、巣口R付近の林床を逃げ回る小さな虫を捕食しようとしています。


シーン2:10/26・午後22:29・気温9℃(@1:08〜) 
9日後の晩に登場したテンがアナグマの巣口Lを覗き込んでいました。 
アナグマが3時間前に掘り出した(映像公開予定)ばかりの新鮮な土の匂いをアクセストレンチLで嗅ぎ回り、慎重に巣穴Lへ侵入しました。 
しばらくすると慌てて外に飛び出したホンドテンが何か虫を捕食していました。 
巣穴Lに潜む穴居性の昆虫を狩ったようです。 
映像では小さな獲物の正体を見極められませんが、例えばカマドウマの幼虫ではないかと予想しています。 
狩りの成功体験に味をしめしたテンは、再び入巣L。 
残念ながらここで1分間の録画が終わり、出巣Lの瞬間まで見届けられませんでした。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 


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【考察】
近所のホンドタヌキだけでなく、ホンドテンもニホンアナグマの空き巣に通って虫を捕食していることが分かりました。

関連記事(同所同時期の撮影)▶ 


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