2024/01/30

深夜の原っぱで遊ぶホンドタヌキの幼獣を親が1頭ずつ巣穴に連れ戻す【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月上旬 

休耕地に営巣したホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の家族を自動センサーカメラで見張っています。 


シーン1:6/1・午後23:14・気温18℃・小雨(@0:00〜) 
小雨がぱらつく深夜に、親タヌキが1頭の幼獣aを口に咥えて原っぱを右に運び、奥の巣穴に運び入れました。 
手前に生い茂るヨモギの群落が邪魔ですけど、手前にある別の巣口で複数頭の幼獣が待っていて(冒頭の赤丸に注目)、ミャーミャー♪と猫のような鳴き声を発しました。 
親タヌキがすぐにまた巣穴から外に出てきて、原っぱで夜遊びしている幼獣たちの元へ向かいました。 
せっかく巣穴に連れ戻した幼獣aが、その間に巣口に出てきてしまっています。 
親が次の1頭bの首筋を咥えて奥の巣穴へ搬入します。 
原っぱに残された幼獣2頭c,dが相次いで駆け出し、自力で親ダヌキを追いかけて行きました。 
この映像を見る限り、少なくとも計4頭の幼獣が育っていることになります。 


シーン2:6/1・午後23:29・気温18℃・小雨(@1:04〜) 
約13分後、奥の巣口付近の原っぱで、1頭の幼獣が元気に飛び跳ねています。 
独りで深夜の原っぱを探索しているようです。 
別個体の幼獣が巣口に居残っている姿も草葉の陰からちらっと見えています。 


シーン3:6/1・午後23:30・小雨(@2:03〜) 
気温24℃と表示されているのは異常値(暗視動画の連続撮影によるカメラの放熱)です。
原っぱで独り遊んでいた幼獣を親タヌキが連れ戻しに来ました。 
首筋を咥えられた幼獣はおとなしく巣穴へと運ばれて行きます。 

ようやく幼獣全員を巣内で寝かしつけてから、親が独りで右へ立ち去りました。 
餌を探しに出かけたのでしょう。(探餌徘徊) 


※ タヌキ幼獣の鳴き声が聞き取れるように、動画の編集時に音声の一部を正規化して音量を強制的に上げています。 


細い山道に座り込んで反芻するニホンカモシカ♂

 

2023年6月上旬・午後12:35頃・晴れ 

里山でつづら折れになった細い山道を私が静かに登っていると、前方に座り込んでいるニホンカモシカ♂(Capricornis crispus)を発見。 
画面の左が山側で右が谷側という斜面になっていて、しかも画面の手前から奥に向かって上り坂になっています。
カモシカの方が私よりも斜面の上に位置しているので優位性があり、私をあまり恐れていません。 (いざとなったら余裕を持って逃げられる、と知っている。)
カモシカは近視なので私の姿が見えてないのかもしれませんが、座ったままでこちらを見下ろしています。 

角や耳介に個体識別できる分かりやすい特徴は無いものの、顔馴染みの個体だと思います。 
やがて警戒を解くと、横(谷側)を向いて反芻を始めました。 
反芻胃から未消化の食物を吐き戻して、植物繊維を臼歯で磨り潰すように噛み直しています。 
口が届く範囲に下草がいくらでも生えているのに、それを食べようとはしません。 

咀嚼しながら鼻面で右前脚に擦り付けたのは、鼻面が痒くて掻いたのかもしれません。
右脇腹の筋肉をピクピクと痙攣のように繰り返し動かしています。 
吸血性昆虫を追い払うための動きなのでしょう。 
耳介を動かして、頭部の周りを飛び回る吸血性昆虫を追い払います。 

カモシカはときどき私を見下ろしながらも、反芻を続けます。 
周囲ではホトトギス♂(Cuculus poliocephalus)などの野鳥が鳴く声♪が聞こえます。 
カモシカが座っているのは山道の日陰(木陰)ですが、木漏れ日が少し胴体に射しています。

反芻するカモシカの目が少しトロンとしてきたものの、寝るまでは至りませんでした。(@5:55〜) 
ここまでリラックスした姿を見せてくれるのは有り難いです。 (私を信頼してくれているのかな?)

遂にカモシカが立ち上がりました。(@6:33〜) 
このとき股間で睾丸がブラブラ揺れたので、♂と判明しました。 
フィールドで野生カモシカの性別を見分けるのは至難の業なので、貴重な事例となりました。  


下り坂の山道に立って踏ん張る前脚の蹄を大きく開げて体重を支えていることが分かります。 
右肩の辺りが痒かったのか、右後脚の蹄で器用にゴシゴシと掻きました。 
身震いしてから細い山道を伝って、なんと私の方へゆっくり下り始めました。 
 少し歩いただけですぐに立ち止まると、道端に自生するユキツバキ幼木の葉に顔を擦り付けて眼下腺マーキングしました。(@6:51〜) 
他個体のニホンカモシカに対して縄張りを宣言する行動です。 
異種の私に対してやんわりと縄張りを主張する意味もあるのでしょう。
ところが、私は肝心なところで録画を中断してしまいました。 
動画を撮りながら静止画スナップショットを撮るつもりが、うっかり隣の録画ボタンを押してしまったのです。 (痛恨のミス)
急いで続きを撮り始めたときには、眼下腺による匂い付けを止めていました。 

私をじっと見下ろしながら、ときどき舌舐めずりしています。 
鼻をヒクヒク動かして、風の匂いを嗅いでいます。 
カモシカ♂の動きがソワソワと落ち着かなくなりました。
きっと、山道を塞いでいる私に退いて欲しいのでしょう。 
この山道はとても狭くて、道を譲れませんし、すれ違うのも困難です。 
せっかく登って来た山道を引き返して、カモシカに背を向けたくありません。
(もしも万一、鋭く尖った角を持つカモシカが私を攻撃しようと坂を駆け下りてきたら、熊よけスプレーを噴射して撃退するつもりでした。)
仮に私が山側の茂みの中に退避すればガサガサと物音を立ててしまい、それに驚いたカモシカがパニックを起こして逃げてしまうような気がしたのです。 
私はその場から一歩も動かず静かに撮影を続けます。
カモシカ♂は鼻息を荒らげたり、蹄を地面に叩きつけるように足踏みして(地団駄を踏む)蹄を鳴らしたりする威嚇行動や苛立ちを示す行動を全くやりませんでした。 
おそらく過去にも山中で私と何度も遭遇していて、人畜無害だと分かっているのでしょう。 

 カモシカ♂は大きく身震いして、体にまとわりつくように飛び回るヤブ蚊やブヨを追い払いました。 
立ったまま左後脚の蹄で左耳の後ろをゴシゴシと掻いてから(@8:25〜)、再び顔をプルプルと振りました。 
さっきマーキングしたユキツバキ幼木とは別の株の葉の匂いを再び嗅ぎました。 
もぐもぐと少しだけ反芻咀嚼。 

遂にニホンカモシカ♂は痺れを切らし、細い山道から谷側に外れて私を迂回してくれました。 (@9:30〜)
ユキツバキ群落の茂みに突入すると、ガサガサと藪漕ぎしながら急斜面を下って行きます。 (つづら折れをショートカット)
ここでカモシカの姿を見失いました。 
なかなか濃密な直接観察の時間を過ごすことができて、大満足です。 

関連記事(1、3、12年前の撮影)▶  





カモシカが長時間座っていた辺りを
動画撮影の直後に現場検証すると、おそらくイタドリと思われる草の葉に食痕が残っていました。 
採食シーンは見てませんけど、ニホンカモシカの食痕には特徴があります。
熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』によると、
カモシカはシカと同様に、上顎に前歯はない。そのため、草や小枝を食いちぎった跡は(中略)、植物の一部に繊維が残る。ウサギ類の食痕(スパッとした切り口)と比べると、雑な印象だ。 上顎の前歯の代わりに、板歯(硬い歯茎)をまな板にして、下顎の前歯を包丁のようにして使う。 (p92より引用)



古い本ですが、羽田健三・監修『ニホンカモシカの生活 (1985年)』 によると、長野県内におけるカモシカの食痕調査で

家畜にとって有害だと言われている草木まで食べていることがわかりました。(中略)そのほかにも、毒ではありませんが、鋭いとげがあって一般の家畜の餌にならないタラノキの幹やキイチゴ類の枝も採食していました。(p112〜113より引用)

タデ科のイタドリには家畜全般に対する有毒成分として、クリピダチンという有毒成分が全草に含まれているのだそうです。

ただし、「クリピダチン」なる毒をネット検索しても、何もヒットしません。


2024/01/29

大量の落ち葉を掻き集めて引っ越し先の巣穴に運び入れるニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月上旬 

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が巣材集めを繰り返す様子をまとめてみました。  


シーン1:6/1・午後23:09・(@0:00〜) 
幼獣を手前の巣穴Lに運んでから(R➔L)1時間40分後。 
夜更けに手前の巣穴Lから外に出てきた♀が、アクセストレンチから離れて左へ向かいました。 
しばらくすると、♀が左からピョンピョン跳ぶように後退りしながら戻って来ました。 
林床の落ち葉を前脚で大量に掻き集めて来たのです。 
落ち葉を両腕いっぱいに抱えたまま、後ろ向きで巣材を巣穴Lに搬入しました。 


シーン2:6/4・午後18:18・(@0:33〜)日の入り時刻は午後19:00。 
3日後の夕方に自動センサーカメラが起動すると、♀(?)が巣材を奥の巣穴Rへ運ぶ途中でした。 
両腕に大量の落ち葉を抱えたまま、立ち止まって地面に鼻面を突っ込んでいます。 
何か虫(獲物?)を見つけてしまったようです。 
気が散ったアナグマは、その場に座り込んで毛繕いを始めました。 

ようやく巣材運びを再開。 
今回は興味深いことに、巣材(寝床、敷き藁)の落ち葉を巣内には持ち込まずに巣口Rに雑に置いただけでした。 

そのまま奥の広場に座り込むと、体の痒い部位をボリボリ掻いたり仰向けで毛繕いしたりし始めました。(5倍速の早回し) 
大股開きになった股間に陰茎は見えませんでした。 
下腹に見えた突起は乳首なのかな? 


シーン3:6/6・午前3:58・(@1:16〜) 
2日後の未明。 
幼獣を奥の巣穴Rに運んでから(L➔R)2時間15分後に、♀が画面の右下(巣口Lの横)で落ち葉を前足で掻き集めていました。 
監視カメラの電池が消耗していて断片的な映像ですが、後退しながら巣材と一緒に奥の巣穴Rに入りました。 


シーン4:6/6・午後19:39・(@1:28〜) 
同じ日の晩。 幼獣を手前の巣穴Lに運んでから(R➔L)13分後。 
♀が落ち葉を集めて巣穴Lへ搬入しました。 
巣口Lのアクセストレンチには細長い落枝が数本放置されていて、それに落ち葉が引っかかり、搬入作業の邪魔になっています。 


シーン5:6/6・午後19:42・(@1:43〜) 
次の巣材集めから後ろ向きで戻って来た♀が、落ち葉を手前の巣穴に運び入れました。


シーン6:6/7・午前1:31・(@2:04〜) 
日付が変わった深夜に、今度は奥の巣穴Rへ巣材を搬入しました。 
 幼獣を奥の巣穴Rに運んでから(L➔R)1時間35分後のことでした。 


シーン7:6/9・午後18:14・(@2:09〜)日の入り時刻は午後19:03。 
2日後の夕方。 
昼間に寝た後の寝起き状態の♀?が、営巣地(セット)をうろついたり、地面に座って体を掻いたりしています。
やがて手前の巣穴Lに入りました。 

しばらくすると再び出巣Lした♀が、アクセストレンチの上端で身震いしてから左に立ち去りました。 
後ろ向きで集めてきた落ち葉を巣穴Lに搬入。 


シーン8:6/9・午後18:16・(@2:47〜)
出巣Lした♀が左上奥の林内に向かいました。 
しばらくすると、いつものように後退しながら落ち葉を運んできたものの、量が全然足りないので、落ち葉を求めて今度は左へ向かいました。 
アナグマの営巣地周辺(セット)の地面には落ち葉がきれいさっぱり無くなっているので、逆にそれが目印(フィールドサイン)になるかもしれません。
(落ち葉が無くなれば、生葉を集めてくることもあります。)
巣材が大量に得られない環境には営巣できないことになります。
引越し祝いで稲藁などを与えてやれば、アナグマ♀は嬉々として巣内に運び入れ、巣材として使ってくれるでしょう。


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。


【考察】 
アナグマ♀は幼獣を引っ越した先の巣穴に必ず新しい巣材を補充することが分かりました。 
この行動パターンはよく理解できます。
ただし、引越し先に予め新しい巣材を用意しておくことはないようです。
幼獣引っ越しのシーン(前回の記事)と巣材搬入のシーン(今回の記事)を別の動画に切り分けたのですが、単純に時系列順にお見せした方が分かりやすかったかもしれません。 
しかし実は、幼獣引っ越しと巣材搬入の間に長々と別な行動(毛繕いや徘徊など)が挟まることが多いのです。 

アナグマは二次林で林床の落ち葉を大量に掻き集めて地中に搬入し、腐葉土を作る役割を果たしている、と言えそうです。 
使い古した巣材をときどき巣外に搬出することがあります。 
落ち葉の分解や発酵を促進しているとしたら、カブトムシなど腐葉土に産卵する虫がアナグマの巣穴に来たりしないのでしょうか?
巣材の腐葉土を餌にしてカブトムシの幼虫が育ったら、それをアナグマが捕食するかもしれません。 

落ち葉と言えば秋の印象ですから、初夏の林内に落ち葉が残っているのか?と疑問に思うかもしれません。 
春から初夏にかけて若葉があっという間に成長して林冠をびっしり埋め尽くすと、日光が林床まで届く前に遮られて昼間でも林内は薄暗くなります。 
そうなると林の上層部(林冠)より下の枝から生えた若葉は日照不足となり、競争に負けた木は黄変した葉を惜しげもなく落としてしまいます。 
実際、この時期に撮れたトレイルカメラの映像に、落ち葉がはらりと舞い散る様子がたまに写っていることがあります。 

巣口Lのアクセストレンチには細長い落枝が数本放置されていて、苦労して運んできた落ち葉がそれに引っかかり、搬入作業の邪魔になっています。 
我々の感覚だと、邪魔な落枝を玄関から早く取り除けば良いのに…と思うのですが、横着者のアナグマは放置したままです。 
もしかすると、この落枝には防犯の意味があるのかもしれません。 
侵入者が巣口に近づくと落枝を踏んでしまい、その物音で巣内のアナグマに知らせる警報装置になっているのではないか?と思いつきました。 


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