2022年9月中旬・午前11:30頃・小雨
私が山道を静かに歩いていると、前方にニホンカモシカ♂(Capricornis crispus)を見つけました。
足音を忍ばせながら早足で追いつくと、カモシカは緩やかに登る坂道の途中で振り返り、私の方を見ていました。
間の悪いことに、ニホンアマガエル♪が鳴く声と共に、小雨がぱらつき始めました。
ガサガサといういう耳障りな物音は、カメラが雨に濡れないように、ありあわせのビニール袋をカメラの上にかざした音です。
たとえ生活防水のカメラでも、なるべく雨で濡らしたくありません。
急いで雨具を着たりザックカバーを装着したりしたいところですが、未だ小雨なので野生動物の撮影を優先します。
後ろ姿の毛深い股間に睾丸が揺れていたので、♂と判明しました。
真横を向いた際に、下腹部に黒い陰茎も見えました。(@0:47〜0:55)
フィールドで遭遇したカモシカの性別が外性器で見分けられるのは稀です。
カモシカ♂は近視で私の姿がよく見えてないのか、なぜか私に対して鼻息を荒らげて威嚇してきません。
角や耳介に目立った特徴は無く、私には見覚えのない個体ですが、向こうからしたら私は顔馴染みの(匂いで記憶している?)ヒト個体なのかもしれません。
やがてニホンカモシカ♂は方向転換すると、林道から右に逸れて行きました。
カモシカはスギが植林された斜面を登り始め、スギ木立の陰に隠れました。
雨宿りするために杉林に入ったのかな?
私も追いかけるようにそっと移動して撮影を続けます。
カモシカ♂は緩斜面のスギ林の途中で立ち止まり、こちらを振り返っていました。
鬱蒼としたスギ林の林床は昼間でもかなり薄暗く、画質が粗くなってしまいます。
スギ高木の下は日光が遮られるだけでなく、雨も地上に達する前に枝葉に弾かれて蒸散してしまいます。(TV番組『所さんの目がテン!』2023/03/05林業の回より)
つまり、スギ林は雨宿りに最適です。
カモシカは急に駆け出して逃げるかと思いきや、油断なく私を見下ろしながらじっと佇んでいます。
立ったまま(立位休息)で口をモグモグと咀嚼し、反芻を始めました。
雨の日の森の中は蚊やブヨなどの吸血昆虫が多いらしく、私よりもカモシカ♂の方が悩まされています。
眼球から涙を吸汁しようと飛び回るメマトイがいます。
カモシカ♂は頻りに頭や尻尾を振って、まとわりつく虫を追い払おうとしています。
胴体の皮膚がときどきピクッと動くのも、蚊やブヨに刺された反応なのでしょう。
耳を左右別々に動かして、顔にたかる虫を追い払っています。
舌舐めずりした際に、舌はピンク色でした。
林床に生えた常緑のエゾユズリハと思しき幼木の葉の匂いを嗅いでから、顔の眼下腺を擦り付けてマーキングしました。(@5:55〜6:06)
にわか雨が止むと、カモシカ♂は斜面をゆっくりトラバースし始めました。
長撮りしている間、私に対して鼻息威嚇♪を一度もしなかったのは、斜面で私よりも高い位置に居るので優位性を感じているからでしょう。
カモシカ♂が「スギ林に入って雨宿りした」という私の解釈は、ただの擬人化した結果論かもしれません。
つまり、毛皮に覆われたカモシカ♂はにわか雨(しかも小雨)に濡れることなど全く気にしてなくて、たんに追跡者の私を警戒してスギ林の斜面に逃げ込んだだけという可能性もあります。
しかし以前、望遠レンズを使って遠くから撮影した動画でも野生のカモシカは雨宿りしていたのを思い出しました。
関連記事(2年前の撮影)▶ 山腹に座って反芻・雨宿りするニホンカモシカ
私が人畜無害(あるいは顔馴染み)だと分かるとカモシカは警戒を解き、藪に覆われた斜面をゆっくりトラバースして元の林道に戻りました。
カモシカ♂が林道を横断してスギ林と反対側の草地へ入るシーンは撮り損ねてしまいました。
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