2023/05/30

雨夜にカラマツの幹を登るザトウムシ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

前回の記事:▶  


2022年10月下旬 
山林でドングリを給餌した餌場をトレイルカメラで見張っていると、未明にザトウムシの一種が2回登場しました。 

シーン1:午前3:40頃 
画面の赤丸に注目して下さい。 
雑木林の斜面をザトウムシがゆっくり登って行きます。 


シーン2:午前4:30頃 
約50分後、雨が降っています。 
画面の赤丸に注目して下さい。 
おそらく別個体だと思うのですが、ザトウムシがいつの間にかカラマツの幹を登っていました。 
少し登ってから立ち止まると、長い歩脚で謎の屈伸運動をしています。 
幹を滴り落ちる雨水を飲んでいるのかな?と想像したりするものの、定かではありません。
以前の観察で、笹の葉から水滴を飲んでいたザトウムシは、上下動せずに歩脚を曲げたままでした。

関連記事(12年前の撮影)▶ 水を飲むザトウムシ

ちなみに、この日の日の出時刻は午前5:52。 
撮影時刻は夜明け前で、最低気温になっているはずです。 
秋の寒い雨夜でもガガンボが飛来したり、小型の直翅目(コノシタウマ?)がドングリ給餌場の下の斜面を徘徊したりと、意外に賑わっています。 
このトレイルカメラ旧機種は、動画撮影時に気温の測定値が記録されないのが残念です。

ザトウムシは変温動物なので、いくら動き回ってもトレイルカメラのセンサーは反応しません。 
温血動物の野ネズミが餌を探し回って画面を横切ったときに偶然録画されるだけです。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施して明るく加工しています。 

2023/05/29

杉林道を歩くニホンカモシカの記録:2022年10月下旬【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2022年10月下旬 

里山のスギ林道に設置した自動センサーカメラに写ったニホンカモシカ(Capricornis crispus)の記録です。 
この期間は昼夜を問わず6日連続で登場しました。 
同じ日に何回も通りかかるときもあります。
未だしっかり個体識別できていませんが、どうやら複数の個体が同じ林道を巡回しているようです。 
夜になると気温が10℃を切り、冷え込むようになりました。 

眼下腺マーキングの有無によって別の動画に切り分けるのを止めました。 
どういうときにマーキングして、どういうときに素通りするのでしょうか? 


シーン1:10/25・午後14:20・気温9℃(@0:00〜) 
画面の下から登場したということは、林道脇の法面の獣道を下ってきたのかもしれません。
林道を横断すると、道端から突き出したスギ落枝の先端の匂いを嗅いでから顔の眼下腺を擦りつけてマーキングしました。 
舌をペロペロと出し入れしながら右へ歩き去りました。 
右肩に黒い斑点がある個体でした。 


シーン2:10/26・午後17:44・気温8℃(@0:36〜) 
翌日、とっぷりと日が暮れた林道を右から歩いて登場しました。 (ちなみに、日の入り時刻は午後16:51。) 
道端のスギ落枝に眼下腺マーキングしてから左へ立ち去りました。 


シーン3:10/27・午後21:12・気温7℃(@1:20〜) 
次の日の晩に林道を左から登場。 
いつものスギ落枝に眼下腺で匂い付けしました。 
体を右に強く曲げて右腿の匂いを嗅ぎました。 
吸血性の昆虫に刺されて痒いのかな? 
次は林道上に残されたタヌキとアナグマの溜め糞場sの匂いを嗅いでから右に歩き去りました。 
この個体は右背に黒点はありません。 


シーン4:10/28・午前00:15・気温6℃(@2:05〜) 
翌日の深夜、林道を右から登場したようです。 
溜め糞場sの匂いを嗅ぎ回ってから左に歩き去りました。 
今回は珍しく道端のスギ落枝に眼下腺マーキングをしませんでした。 
(むしろ迂回するように通り過ぎました。) 


シーン5:10/28・午後15:00・気温12℃(@2:22〜) 
約15時間後。 
同日の明るい午後にカモシカが右から登場。 
スギ落枝を素通りして、左に立ち去りました。 


シーン6:10/29・午前7:46・気温9℃(@2:31〜) 
翌日の明るい朝に左から来たカモシカが右へと素通りしました。 
この個体は右背に黒い斑紋があるものの、ぼやけています。 


シーン7:10/29・午後15:16・気温10℃(@2:42〜) 
7時間半後、またカモシカが左からやって来ました。 
道端から突き出たスギ落枝に対して久しぶりに興味を示し、先端部の匂いを念入りに嗅いでいます。 
角研ぎではなく、明らかに顔の眼下腺を擦りつけてマーキングしました。 
角を研ぎたいのなら、こんなグラグラした落枝ではなく、どっしりと安定した立木の幹にやるはずです。 
右に立ち去るときはカメラに右半身を見せてくれます。 
右肩に黒い斑紋がある個体でした。 


シーン8:10/29・午後18:03・気温8℃(@3:14〜) 
約2時間45分後、暗い夜道を左から登場。 
いつものように眼下腺マーキングをしてから、溜め糞場sの匂いを嗅ぎながら右に立ち去りました。 
前肢にたくさん付着しているのは「ひっつき虫」(動物散布型の種子)でしょうか? 

この個体は右背に黒班はありません。 
ということは、スギ落枝に別個体が2時間45分前に付けた匂いに対抗して眼下腺マーキングしたことになります。 
同一個体が連続して通りかかったときには、眼下腺マーキングを省略すると考えればシンプルに説明できそうです。



シーン9:10/29・午後19:11・気温8℃(@3:40〜) 
約1時間後、今度は林道を逆に(右から左へ)素通りしました。 
至近距離からカメラの赤外線を浴びて、少し白飛びしてしまっています。 


シーン10:10/30・午後23:09・気温7℃(@3:49〜) 
翌日の深夜に左から登場。 
あるいは林道脇の法面を降りて来たのかもしれません。 
いつものようにスギ落枝先端の匂いを嗅いだものの、眼下腺マーキングせずに右へ歩き去りました。 

ところで、シーン10で夜風に乗って下から上に飛んでいる無数の小さな物体は何なのでしょう? 
雨粒なら重力に従って上から下に流れるはずです。 
粉よりも粒子が大きく、昆虫の飛ぶ動きとは違うようです。
キノコやシダの胞子が風で大量に舞っているのかな?(当てずっぽう) 
胞子ではなく種子かもしれませんが、秋の山林で細かな種子を風散布する植物が思いつきません。 
毛羽立った樹皮を擦ると、確かこのような荒い粒子?が舞います。 
もしかするとカモシカが近くの立木の幹で角研ぎをした直後なのかもしれない、と想像しました。



ケカビの生えたタヌキの溜め糞を食べるセンチコガネ

 

2022年10月下旬・午後12:45頃・晴れ 

里山の西斜面を直登する細い山道が廃れ、藪が生い茂る獣道となっています。 
ここにホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)が残したと思われる溜め糞場kがあり、私はときどき通って定点観察しています。 

黒土と化した古い溜め糞場には、糞虫の羽化孔と思われる穴がたくさん開いていました。 
その少し下に、比較的新しい溜め糞がありました。 
地面には枯れた落ち葉が散乱し、その上に排便したタヌキの糞の表面に毛羽立った白カビがびっしり生えていました。 
点々と散らばった獣糞の全てが白カビの菌糸(?)で覆われています。 

そこにセンチコガネ(Phelotrupes laevistriatus)が1匹だけ来ていました。 
センチコガネは白カビの生えた獣糞の下に頭を突っ込んで、小刻みにグイグイ押しています。 
「糞ころがし」のように巣穴に向かって獣糞を運んでいるのではなく、その場で食糞しているようです。 
そもそもセンチコガネは糞玉を巣穴へ運ぶ際には後ろ向きに転がすはずです。

関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ タヌキの溜め糞を崩し、後ろ向きに転がして巣穴に運ぶセンチコガネ

もしかすると、センチコガネは獣糞そのものよりも、それに生える菌糸やカビの方を好んで食べているのかもしれません。
我々ヒトの衛生感覚では不潔極まりない物ばかり食べても病気にならない悪食のセンチコガネは、よほど強力な抗菌作用をもっているのでしょう。

関連記事(1.5ヶ月前の撮影)▶ 白い菌糸塊?を食べるセンチコガネ

同定のため、動画撮影後に糞虫を採集しました。 
不潔なので、持参したビニール袋を手袋のように使って採取。 
標本の写真を以下に掲載予定。 
センチコガネの性別は? 

この地点にはトレイルカメラを設置しにくいこともあり、本当にタヌキが通う溜め糞なのかかどうか証拠映像を未だ撮れていません。 

秋になると、他の地点の溜め糞場にも白カビが生えるようになります。 
この時期以外では白カビの発生した獣糞を野外で見かけた記憶がありません。 
秋の長雨によるものか、それとも気温が下がって糞虫や蛆虫(ハエの幼虫)の活動が低下することで白カビが優勢になるのかと、素人ながら勝手に推測していました。 
興味深いことに、溜め糞に生えたモサモサの白カビは数日後に消失します。 
さすがにセンチコガネが白カビを全て食べ尽くすとは思えません。
インターバル撮影で獣糞上に生えるカビやキノコ(糞生菌)の遷移(栄枯盛衰)を観察するのも面白そうです。 

相良直彦『きのこと動物―森の生命連鎖と排泄物・死体のゆくえ』という名著を読むと、知らないことばかりで興奮しました。
特に筆者の専門である「排泄物ときのこ」と題した第4章がとても勉強になりました。
ど素人の私は漠然と「白カビ」と呼んでいましたが、専門的にはケカビというらしい。
・(採取した馬糞を培養して1週間後には:しぐま註)たいていケカビ類(Mucor、接合菌)もいっしょに生えていて、糞塊が綿でくるまれたように見えることが多い。(p74より引用)
・ 接合菌のケカビ類はセルロースを分解する能力がなく、糖類のような可溶性炭水化物を必要とする。その胞子は発芽しやすく、菌糸の生長は早い。このような性質によって、糞に糖類やヘミセルロースなど消費されやすい可溶性物質が存在する初期のあいだは、ケカビ類の増殖期となる。(p78より)
・糞には、蛋白質が半ばこわれたペプトン様の物質が含まれていて、それがケカビ相を産んでいるのではないかと(筆者は:しぐま註)想像する。(p82より)
・(京都で見つけたホンドタヌキの糞場で:しぐま註)比較的新鮮なふんにはケカビの1種とスイライカビの1種が生えていた。(p95より)
・タヌキの溜め糞場に生えるキノコ(アンモニア菌類など)についても詳しく書かれています。(p94〜98)

にわか仕込みの知識を踏まえて、私は次のように想像してみました。
秋になってタヌキが熟した柿の実を食べるようになると、糞には未消化の柿の種が含まれるようになります。
タヌキが甘い熟柿を食べると糞に含まれる糖分の濃度が上がり、ケカビの生育に適した条件が整うのではないでしょうか?
獣糞の糖分が消費され尽くされるとケカビは消失し、次の遷移状態に進みます。
タヌキの溜め糞で見つけた白カビを顕微鏡で観察したり培養したりしてケカビとしっかり同定できていないので、あくまでも素人の推測です。
野生動物がせっかく摂取した果肉から糖分を完全に消化吸収できないまま無駄に排泄するのかどうかも疑問で、実際に調べてみないと分かりません。
タヌキの尿に糖が含まれるとしたら、糖尿病に罹患していることになります。
まさか獣糞が甘いかどうか舐めてみる訳にもいきませんし、フィールドで得た試料から糖分をかんたんに検出する試薬のキットが欲しいところです。
高校化学で習った昔懐かしのベネジクト溶液で調べるしかないのかな?




↑【おまけの動画】
"The Life Cycle of the Pin Mould" by the British Council Film Archives
『ケカビの生活史』
モノクロの古い教育映画ですが、ケカビの一生を顕微鏡で丹念に微速度撮影した労作です。


ランダムに記事を読む