2023/02/19

ノブドウの果実を次々に採食するニホンザル

 

2022年9月中旬・午前11:00頃・くもり(にわか雨が降る前)

林道の脇に生えたオニグルミの樹上にニホンザル(Macaca fuscata fuscata)の若い個体が登っていました。 
ノブドウの蔓がクルミの木に巻き付いて伸びた結果、覆い尽くすようなマント群落になっています。 
ノブドウの果実を若いニホンザルが次々に食べていました。 
ニホンザルの採食メニュー一覧が載ったPDF資料を見ると、ノブドウが含まれていました。
三戸幸久. "ニホンザル採食植物リスト." Asian paleoprimatology 2 (2002): 89-113.
ノブドウは色とりどりの果実を付けますが、我々の常識に反して熟果は白色なのだそうです。(衝撃の事実!) 
青や紫に色づいた果実は、虫こぶ(虫えい)で、ノブドウミタマバエ(Asphondylia baca)やブドウトリバ(Nippoptilia vitis)などの幼虫が寄生した結果とされています。 
しかし図鑑や本に書いてあることよりも現実ははるかに複雑怪奇(完全には解明されていない)らしいので、いつか自分でも採集・飼育してこの辺りを確かめてみたいところです。 

樹上のニホンザルは片手でオニグルミの枝葉を掴んで体勢を確保し、逆の手を伸ばして果実の付いたノブドウの蔓を口元に手繰り寄せました。 
手を伸ばしてノブドウを次々と摘果して口に運ぶこともあります。 
左手でも右手でも摘果したので、特に偏った利き手は認められませんでした。 
いくら食べても口から色付きの果汁が滴り落ちることはなく、唇が紫色に染まることもありませんでした。 
ノブドウの葉は決して食べずに果実だけを選んで食べています。 
緑色の未熟な果実は食べませんでした。 
何口か咀嚼した後に吐き出す残渣は、ノブドウ果実の中にある硬い種子と思われます。 
薄甘い(?)果肉と果汁だけ摂取しているようです。 
しかし、ノブドウの白い熟果(正常果)だけでなく色づいた寄生果(虫こぶ)も構わずに食べているのだとすれば、中に潜む寄生者の幼虫や蛹を捕食している可能性も考えられます。 
特に不味かった虫こぶだけ、サルは吐き出しているのかもしれません。 
「虫こぶは不味くて食べられない」という「定説」はどこまで本当なのでしょうか? 
ちゃんと体を張って味見(毒味)をしたヒトはいるのかな? 
他人任せにしないで、私も自分で味見してみるべきですね。
色とりどりの宝石のような実。実の一部はノブドウミタバエ(原文ママ:正しくはノブドウミタマバエ)などが寄生して虫こぶになる。(中略)果肉や種子の状態から、濃い青や紫の実は未熟で、白い実が熟果であるようだ。白い実の果肉は白く半透明で、少々舌に残るがブドウに似た食感でほのかに甘い。ただし青や紫の実の種子もまけば正常に発芽する。 (『身近な草木の実とタネハンドブック』p120より引用)


猿はときどき振り返って私の様子を窺いながら、採食を続けます。 
しつこくカメラを向けている私に警戒したのか、オニグルミの枝葉の陰に隠れてしまいました。 
茂みの陰に隠れながらもノブドウの果実を食べ続けています。 


オニグルミ樹上のニホンザルはやがて、見通しの良い枝に移動してくれました。 
枝に腰掛けて餌を咀嚼しながら、後脚で体を掻いています。 (@3:27〜)
このとき股間に見えたピンクのでべそのような突起物は♂の陰茎にしては小さいので、♀のような気がします。 (間違っていたらご指摘ください。) 
胸に長い乳首が見えないので、経産婦♀でないことは確かです。 

しばらくすると猿はオニグルミの下部の枝に移動し、ノブドウのマント群落から果実採食を再開しました。 
今度は採食シーンがよく見えるようになりました。 
私がじっと動かず静かに撮影していたら、警戒を解いてくれたようです。






後半に私が少し近づいてみると、猿はオニグルミの横枝にぶら下がり、ゆっくりと慎重に地上に降りました。 
木から降りたニホンザル♀は急に走り出すと砂利道の林道を横断し、姿を消しました。 

今回、採食行動を直接観察した限りでは、ニホンザルはノブドウの種子散布にさほど貢献していない印象を受けます。 
ノブドウの果実を食べたニホンザルは、ほぼその場で種子を吐き出している(ように見える)からです。 
一部の果実を丸ごと飲み込み、遠くへ移動してから糞と一緒に未消化の種子を排泄するのかな?(周食型散布) 
この問題を自力で突き止めるには、ニホンザルやタヌキなど野生動物の糞分析もいつか自分でやらないといけません。 

ノブドウの種子散布者の本命は鳥なのでしょうか? 
『野鳥と木の実ハンドブック』でノブドウについて調べると、否定的でした。
10月頃には熟すが、鳥が採食することは少なく、12月頃になってカワラヒワなどがときどき採食する程度。本当の実の色は赤紫色で、紫色や紺色になるのはブドウタマバエやブドウトガリバチの幼虫が寄生しているためだと言われている。(p49より引用:熟果の色に関しては筆者の誤り?)

タヌキの溜め糞を舐めて吸汁するヨコジマオオハリバエ

 

2022年9月中旬・午後13:25頃・晴れ 

里山の尾根道にもホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)の溜め糞場cがあります。 
利用しているタヌキの個体数が少ないのか訪問頻度が低いのか分かりませんが、私が定点観察に通っても新鮮な糞がなかなか見つかりません。
昨年短期間だけトレイルカメラを設置したものの、すぐに撤去してしまいました。 
この溜め糞場は自然消滅した(使われなくなった)と一時は考えていました。 
もしかすると気温の高い時期は糞虫らの分解活動が活発で、たちまち食べられたり埋められたりするために、糞塊が残りにくいのかもしれません。 
尾根道にあるということは、溜め糞調査のために私が麓から登り始めても標高が低い地点の溜め糞から順に調べていくと、尾根に到着する時刻がどうしても遅くなってしまいます。
夜行性のタヌキが排便した溜め糞を新鮮なうちに(糞虫に処理される前に)観察するためには、午前中の早い時間に現場入りする必要があるのです。

この日は珍しく立派な糞塊が残されていました。
少しだけ離して2箇所に排便しています。 
全く同じ地点に溜め糞場が復活したということは、同一個体のタヌキが戻って来て過去の記憶を頼りに溜め糞するようになったのでしょうか?
強烈な糞便臭が辺りに漂い、否が応でも気づきました。
これがタヌキ特有の匂いなのでしょう。 
(不思議なことに、他の溜め糞場ではあまり臭いと感じたことがありません。) 
様々なハエ類がタヌキの糞塊に群がっていました。 

まず注目したのは、単独で来ていたヨコジマオオハリバエ(Tachina jakovlevi)という寄生バエです。 
本種が獣糞を吸汁する様子は初見です。
背側から見下ろすように撮影したので、肝心の口吻の動きがよく見えませんでした。
したがって、♀が獣糞に産卵していたという可能性も考えられます。 (ヨコジマオオハリバエの性別の見分け方を私は知りません。)
ヨコジマオオハリバエは寄生バエですから、獣糞に産卵するはずがありませんね。
真横から撮りたくても、私が下手に動くとハエはすぐに飛び去ってしまうので、ハエが自ら動いて横を向いてくれるまでじっと我慢して撮り続けるしかありません。


左に居る瑠璃色のハエの名前を知りたいです。

2023/02/18

ニホンリスの垂直跳び

 

2022年9月中旬・午前10:00頃および12:20頃 

里山の雑木林の斜面に立つ泥カラマツを監視しているトレイルカメラに、ある日ニホンリス(Sciurus lis)が何度も写りました。 
斜面から土がポロポロとこぼれ落ちてきた後に、カラマツの幹の背後からリスが左に走って登場しました。 
林床をチョロチョロと徘徊し、地面に落ちた木の実(落果)などの餌を探索しているようです。 
泥カラマツの左に生えたシシガシラという羊歯植物の群落で餌を探していたニホンリスが急に真上へ飛び上がり、細い枝に跳び移りました。 
華麗な垂直跳びを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@0:52〜) 
リスの高い身体能力に惚れ惚れします。 
その枝を伝って林床に戻ると、斜面を駆け上がって姿を消しました。 

後日、現場検証すると、リスが跳び乗ったのはリョウブの幼木でした。 
多雪地帯の斜面に特有の樹形です。 
深い積雪の重み(雪圧)で根元付近が大きく湾曲しており、斜面からほぼ横に向かってしばらく伸びてから上に伸長しています。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



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