2021/06/28

キジ♀につきまとう♂:配偶者ガード(春の野鳥)

 

2021年4月中旬・午後15:10頃・晴れ 

何か作物を昨年刈り取った後の畑なのか、郊外の休耕地でキジPhasianus versicolor)の♀♂つがいを見つけました。 
私にとって♂よりも♀の方が珍しいので、♀の行動に注目することにしました。 
キジ♀は地味な色ですけど、未だ枯れ草の多い原っぱでは見事な保護色となって紛れ込んでいます。 
静止していたらまず見つけられないでしょう。 
歩き回って餌を探しているようです。 
冒頭で、キジ♀が軽く屈みながら脱糞していました。(@0:06
一方、派手な色の♂は♀の後を少し離れてついて来ます。 
先導するキジ♀が車道に近づいたものの、大型トラックが轟音を立てて走り抜けると驚いて原っぱに駆け戻りました。 
自由気ままに地上採食しているように見える♀も、やはりいざとなると♂の傍が安心するようです。
しばらくすると再び♀が移動を始め、舗装された車道を遂に横断しました。 
♂も♀の後を追って車道を渡り始めました。 
向こうから軽トラが走って来たので最後は焦って少し小走りになり、無事に♂も車道を渡り切りました。 
田舎の道でも昼間は交通量が結構あります。 
目の前でキジ♀♂が車に轢かれずに済んで、私もホッとしました。 

キジ♀♂のペアは、枯れ草や蔓植物の藪に覆われた空き地を移動しています。 
♂は歩きながらときどき地面をついばみました。 
ラッパスイセンの黄色い花が咲いている横を素通りすると、 段差を跳び上がって、原っぱから隣の駐車場の敷地に侵入しました。 

キジの婚姻形態は一夫多妻のハーレムもあり得るのですけど、今回は一夫一妻でした。 
キジ♂は♀を先導することは一度もなく、ただ♀の後を従順について歩くだけでした。 
♂は頭を下げて歩きますが、ときどき頭を高く上げて背伸びして、先を行く♀の姿を探します。 
交尾のチャンスが巡ってくるまで♀がライバル♂に奪われないように「配偶者ガード」しているのでしょう。 
キジ♂の縄張りの外に♀が出そうになった時も「去る者は追わず」なのか、興味深いところです。
▼関連記事(4、5、8年前の撮影) 
田んぼで♀の尻を追いかけるキジ♂(野鳥) 
農道で採食するキジ(野鳥)の♂♀つがい 
春の湿地帯で採食するキジの♂1♀2ハレム(野鳥)
採食しながらどんどん移動を続ける♀は、低い土手を登りました。 
最後だけ♂が先導するように土手を越えて向こう側に降りました。 
♀も♂の後を追って土手を越えました。 
満開の桜(ソメイヨシノ)や落葉樹が植栽された土手の奥は某施設の駐車場になっていて、ヒトや車がよく通るはずですが、忍び込んだキジ♀♂は大丈夫かな? 
ここで私は見失ってしまいました。 
キジ♀は一体どこに営巣するのでしょう? 

今回、配偶者ガード中のキジ♂はなぜか一度も縄張り宣言の母衣打ち♪をしませんでした。 
石塚徹『歌う鳥のキモチ』という本を読んでいたら、その理由がしっかり書いてありました。
一般的には、つがい形成前に歌いたいキモチのピークが来て、♀の受精可能期間には、♂はそのガードに専念するため、あまり歌わない鳥が多い。
また、同書を読んで最も意外で勉強になった(目から鱗が落ちた!)のは、キジ♂の母衣打ち♪を鳥の専門家は囀りさえずりとは呼ばないということです。
私はここの理解があやふやでした。
 一般的に、鳴禽類(小鳥目=スズメ目)と亜鳴禽類(ヤイロチョウなど)が「歌う鳥」だ。それ以外の、キツツキ、アマツバメ、ハト、カッコウ、カワセミ、キジ、それに猛禽や水鳥などは「歌わない鳥」扱いとされる。それでも、音声コミュニケーションが発達していないわけではない。(中略)キジやヤマドリの♂は翼を自分の体に打ちつけ「ドドドドッ」と音を出す(ほろ打ち)(中略)小鳥(スズメ目:しぐま註)の歌が学習によるものなのに対し、小鳥以外のこれらの音声は本能によるものだ。すなわち遺伝的にインプットされたものなので、再生までのからくりが小鳥の歌とは違う。機能としては同じでも、小鳥以外の「繁殖期の特別な音声」は、厳密には歌とは定義されない。

2021/06/27

飛びながら池で水浴する2羽のツバメ【ハイスピード動画】(野鳥)

 

2021年4月中旬・午後15:15頃・晴れ

溜池の上を飛び回る2羽のツバメHirundo rustica)が高速で飛びながら池の水面に何度も飛び込んでいました。 
これはツバメに独特の水浴法です。 
240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。 
波紋が広がる水面に置きピンします。 

高速で飛ぶツバメが画面を何度も横切ります。 
水面にツバメがダイブすると水飛沫が上がりますが、潜水する訳ではありません。
まるで水切りの石投げ遊びのように、そのままツバメは飛び去ります。 
水面から飛び去る際に、濡れた尾羽を不規則に振っていました。 
これをツバメは何度も繰り返して行水するのです。 
その結果、池の水面に同心円状の波紋が広がります。 
池の中でも水浴に飛び込む地点は大体決まっているようでした。

逆光のアングルなのでツバメのシルエットしか写っていませんが、念願だったツバメの水浴飛翔を動画に記録できて大満足です。 
今回はハイスピード動画での撮影を優先しました。 
高画質のHD動画に切り替えようとしたら、ツバメはもう居なくなってしまいました。 
よく晴れて暑い日でしたが、気温を測るべきでしたね。 

菅原光二『科学のアルバム:ツバメのくらし』によると、  
ツバメはむかし、がけなどのかべに巣をつくっていたといわれています。そのため、歩くことのすくなくなったツバメの足は退化し、現在では、物にとまるぐらいの役めしかしません。しかし、空中で虫をおいかける生活をつづけたツバメのからだやつばさは、大空を自由にとべるように発達しました。(中略)  水あびや水のみも、ほとんどの鳥は地上におりたってしますが、ツバメは水面すれすれにかすめとび、瞬時に水あびをしたり、水をのんだりします。ツバメは、空中生活者なのです。(p44-45より引用)

七尾純『テクテク観察:ツバメ日記』によれば、
 水しぶきがあがりました。ツバメが池に飛びこんだのです。水浴びです。ツバメはからだを水面にたたきつけるように飛びこむと、水しぶきを飛ばしながら上空にまいもどりました。  池のあちこちで、水しぶきがあがっています。まるでショーを見ているようです。(中略) 「ああ、水浴びですよ。虫をおいかけながら、ときどきああやって水浴びをして、からだを冷やしたり、からだについたダニやよごれを落とすんですよ。」(中略) えさをつかまえるのも、水浴びをするのも、飛びながらです。そのかわり足が小さく、どろ集めのとき以外はめったに地面におりません。 (p64より引用)
ツバメが高速で飛びながら水面の水をすくって飲むシーンもハイスピード撮影してみたいテーマのひとつなのですけど、なかなかチャンスがありません。 
そもそもの問題として、私のフィールドで近年はツバメの数が激減している気がしてなりません。
おそらくツバメは住宅難(営巣地不足)で困っているのでしょう。
普通種のツバメがレアな鳥になる時代が来るなんて…。 

【追記】
1.5ヶ月後に同じ池でツバメの水浴シーンを高画質のFHD動画で撮影できました。

ツバメとカワラヒワの鳴き真似♪をするモズ♂(野鳥)

 

2021年4月中旬・午後15:40頃・晴れ 

田畑に灌漑する用水路沿いの落葉灌木(おそらくオニグルミ)にモズ♂(Lanius bucephalus)が止まって尾羽を上下に振り立てながら賑やかに鳴いていました。 
しかしよく耳を澄ますと、モズらしくない奇妙な鳴き声です。 
 ※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

撮影中はヒバリの囀りを真似しているのかと思ったのですが、動画で何度も聞き直すとカワラヒワ♂(Carduelis sinica)の鳴き真似でしょう。 
前半はツバメHirundo rustica)の鳴き真似と思われます。 
もしかするとムクドリの鳴き真似も混じっていますかね? 
絶対音感の無い私は鳥の鳴き声の聞きなしも苦手なので、間違いなどありましたらコメントお願いします。 

このとき、鳴き真似のモデルとなった種類の鳥はモズ♂の周囲におらず、反応を見れなかったのは残念です。
 
【追記】
大庭照代『鳴き真似の世界:鳥類の音響擬態』という総説を読むと、
 残念だが日本では私の知っている限り、またモズを丁寧に観察する人々の間でも、モデルの鳥がモズの鳴き真似に誘い出される様子は観察されていない。 (『擬態―だましあいの進化論〈2〉脊椎動物の擬態・化学擬態』p109より引用)

私が想像するに、♀に対する求愛歌(囀り)として鳴き真似のレパートリーを誇示するように熱唱していたと思うのですが、実際に近くでモズ♀が聞いていたのかどうか不明です。  
鳴き真似中のモズ♂は腹話術のように嘴をしっかり閉じているので、ほとんどリップシンクロしていません。(嘴の動きと鳴き声がほとんど一致しない。) 
百舌鳥はその名の通り鳴き真似の名手で、一流の腹話術師でもあることが分かりました。 

モズ♂の鳴き真似を声紋解析してみたいのですが、風切り音と私の背後を流れる用水路の水音がピンクノイズとなってきれいな声紋が得られそうにありません。 

最後にモズ♂は白い糞をポトリと1滴排泄すると止まり木の枝で方向転換し、飛び去りました。
▼関連記事(5〜8年前の撮影) 
モズ♂の鳴き真似♪と虫捕食、ペリット嘔吐【野鳥】 
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電線で鳴き真似♪を練習するモズ♂(野鳥) 
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