2021/06/20

繁殖池の底で♀の死骸に抱接を続けるヤマアカガエル♂(屍姦)

前回の記事:▶ 岸辺の卵塊に潜り込むヤマアカガエルの抱接ペア♀♂

2021年3月中旬・午前11:35〜午後13:35頃・くもり 

ヤマアカガエル(Rana ornativentris)が繁殖する池Hの底に沈んだまま仰向けで白い腹を見せている大型の個体が気になります。 
多数の独身♂が殺到して激しい蛙合戦が繰り広げられているので、おそらく♀なのでしょう。 
池の中央部で最も深い底でした。

しかし、この♀は池の底で仰向けのまま長時間全く動かないので、どうやら死んでいるようです。(溺死?)
雪解け水が溜まったこの池は水温が低いですから、死骸が腐敗する進行は遅いはずです。 
♀溺死体の腹部が膨満しているのは、腐敗してガスが溜まっているというよりも、産卵前の卵が卵巣に詰まっているからでしょう。(体内にガスが溜まった死骸は浮くはず) 
 
数時間後、♂同士の蛙合戦の決着が付いたようです。 
1匹の勝者♂が死んだ♀の腹側に抱きついていました。 
蛙のカップル♀♂にとってこの体勢は「正常位」ではありません。 
カエルの♂が抱接するには♀の腹側ではなく背側にしがみつかないといけないのですが、とりあえず相手を確保しておきたいのでしょう。 
♀の死骸に抱きついたまま、♂は水底でじっとしていました。 
抱接ペアが形成されると、それ以降の行動(産卵地探索など)は♀が主導権を握ります。 
この♂は水中で息が続く限り、動かない♀の死骸を抱き続けるのでしょう。 
激しい♀争奪戦の末に♀を殺してしまうのも、♀が死んだことに気づかずに抱接し続けるのも、本能行動の愚かしさの一例です。
遺伝子でプログラムされた本能行動は長い進化の結果、おおむね上手く働くのですが、決して完璧ではありません。
♀死骸に執着している♂よりも、「何かおかしい」と気づいてすぐに離れる♂個体の方が次世代を残す上で適応的と言えます。 
ヤマアカガエルの独身♂は動くものなら手当たりしだいに飛びつくらしいので、ゴム製のカエルの玩具やリアルなルアーなどを繁殖池に投入する実験をしたら面白そうです。

ヤマアカガエルは池の底で冬眠するらしいのですが、いくら雪解け水の水温が低くて代謝が抑えられるとは言え、無呼吸でどれだけ耐えられるのでしょう? 
水中の皮膚呼吸だけで生存可能なのでしょうか? 
厳冬期のヤマアカガエルの様子を私は未だ見てません。(この池の水面は凍結していました) 
早春の繁殖期が始まると、水中での蛙合戦の合間に♂はときどき息継ぎのため水面に浮上しているようです。
関連記事(3日前の撮影)▶ 早春の池で水面に浮かぶヤマアカガエル♂
水中の蛙合戦はヒトの水球競技やシンクロナイズド・スイミングよりも体力を消耗しそうです。
無呼吸で永遠に続けられるはずはありません。
多数の♂に抱きつかれ蛙合戦で長時間もみくちゃにされた結果、♀が溺死してしまったのだろうと私は死因を推理しました。
しかし別の死因として、冬眠に失敗して凍死した♀個体という可能性もありそうです。 
ヤマアカガエルの喉には斑紋があるのが特徴らしいのですが、この溺死体では見えません。(まさか別種のカエルなのかな?) 
あいにく私はタモ(手網)を持ってこなかったので、死骸を回収して確かめられませんでした。

池の底に横たわる死骸はいずれ、ヤマアカガエルの卵塊から孵化したオタマジャクシ(幼生)や他のスカベンジャー達の餌となるはずです。 

風で水面が波立つと、深い池の底の様子がグニャグニャに歪んでしまいます。 
来年は水中カメラで蛙合戦を撮影してみたいものです。 

つづく→ 

以下に掲載するのは、不鮮明だった写真を自動色調補正処理したものです。

2021/06/19

睡蓮の葉の上で交尾するアメンボ♀♂

 

2019年8月中旬・午後12:10頃・晴れ 

真夏の睡蓮池でアメンボの一種がヒツジグサの濡れた葉の上で交尾していました。 
アメンボの♀♂カップルは葉の上を歩くと最後はピョンと跳び下りて池の水面に戻りました。 
風で波打つ水面を滑るだけでなく、ピョンピョン跳ねて移動して行きます。 
ところがしばらくすると、別のスイレンの葉に再び打ち上げられてしまいました。 
風で荒れる水面から自発的に避難したのかな?
アメンボも大シケだと船酔いしたりして…?

※ 交尾器の結合状況がよく見えなかったのですが、交尾前または交尾後の配偶者ガードかもしれません。

岸辺の卵塊に潜り込むヤマアカガエルの抱接ペア♀♂

前回の記事:▶ 浅くて小さな池は繁殖期のヤマアカガエルに不人気?(岸辺で♀を待つ♂同士の誤認抱接/縄張り争い)

2021年3月中旬・午後13:30〜13:45頃・くもり 

定点観察のため前回から3日後に山中にあるヤマアカガエル(Rana ornativentris)の繁殖池を再訪しました。 
里山の雪解けが更に進み、池の周囲で地面が露出した部分が増えています。 
池Hの東端には前回よりも多くの卵塊が産みつけられていました。 
ゼラチン質のブヨブヨした卵塊は水中で浮遊していて、風が吹くと波の動きで揺れています。 
卵の中の黒い点で胚発生がゆっくりと進行中です。 





卵塊の真下の水中に抱接ペアが潜んでいました。 
いよいよ産卵してくれるかな? 
♀の額が白く汚れていて、個体識別に使えるかもしれません。 
例によってヤマアカガエルの抱接ペアはとても臆病かつ慎重で、なかなか岸辺に上がってくれません。 
遂に♂を背負った♀が池の底を登り始め、岸辺の卵塊に近づきました。 
抱接ペアは既存の卵塊の下に潜り込んで静止しました。 
次には卵塊をかき分け、上にのしかかるように静止しました。 
水面から顔を出した♀は水中で仁王立ちのように後脚でほぼ直立しています。 
♀が水中に居る限り(上陸しない限り)、抱接♂は鳴かないようです。 
しかし、いくら待っても産卵を始めてくれません。 

突然、方向転換して卵塊から離れてしまいました。 
潜水して水底でしばらく待機すると、岸辺の別区画(卵塊なし)に近づいています。 
この♀は産卵地の探索モードなのでしょう。

赤外線温度計で池Hの水温を測定すると、 岸辺に産みつけられた卵塊の表面(濡れている)は10.2℃。 浅い岸辺の水底は6.5〜8.4℃。(別地点) 深い水底は5.2℃でした。 非接触式の赤外線温度計を使うと、普通の温度計で測定するよりも私が色々と動き回らずにすみます。 とにかく警戒心の強いヤマアカガエルを撮影するには、なるべく刺激したくありません。 

どうして抱接ペアは産卵してくれないのでしょうか? 
日が暮れるのを待っているのか、それとも曇りという天候が気に入らないのかな? 
(後に資料を読むと、雨の日にヤマアカガエルの産卵が活発になるのだそうです。) 
この池Hでは独身♂による求愛歌のコーラスが聞こえず静まり返っているので(沈黙の春)、抱接ペアの♀は警戒しているのかもしれません。 
そもそもこの日は、岸辺で待機する独身♂の姿をほとんど見かけませんでした。 

岸辺の卵塊付近で待機する独身♂2

池の底の卵塊付近で待機する独身♂



残念ながら、ヤマアカガエルの繁殖期は終わりつつあるのかもしれません。 
来季は気合を入れて、雨の降る日に夜通しの終日観察をしてみる必要がありそうです。 
池の畔に予め本格的なブラインドを張って(かまくら制作?)中から隠し撮りすれば、カエルに見つからずに撮影できそうです。
いっそのこと、岸辺に無人カメラを仕掛けたり、抱接ペアを捕獲して飼育下で産卵させる方が早いかも。



ランダムに記事を読む