2018年10月上旬
快晴の昼下がり。
河川敷の遊歩道のすぐ横の草むらでツマグロヒョウモン♂(Argyreus hyperbius)が日光浴をしていました。
クズの葉先や地面にしばらく止まっていた♂は、急に飛び立つと蝶道のように数往復してからほぼ同じ場所に舞い戻ります。
飛来したトンボを縄張りから追い払うのも目撃しました。(映像なし)
日光浴しながら、交尾相手の♀が飛来するのを待ち構えているのでしょう。
静止中の口吻に注目しても何かを舐めている訳ではないので、吸水やミネラル摂取ではありません。
初めはクズの葉の先端部に止まり、翅を全開にして昼下がりの強い日差しを浴びていました。
翅は半開きでゆるやかに開閉することもありました。
飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:10〜0:36、および2:06〜)
日差しが強く、絶好のスーパースロー撮影日和です。
こういうときに私は普段、物を投げつけて強制的に飛び立たせることもあるのですが、今回は蝶が自発的に飛び立つまで少し離れた所から気長に待ちました。
翅裏の斑紋も撮りたくて私が回り込もうとすると、警戒したツマグロヒョウモン♂が飛んで逃げ、縄張りの拠点を少し変えてしまいました。
遊歩道のシロツメクサの葉などに止まり直しました。
縄張りを張るのなら少し高い所を選んで止まる方が辺りを見渡せて良いと思うのですが、地面に近くてもあまり気にしないようです。
(私が立ち去るのを待っていただけかもしれません。)
左からシジミチョウの仲間(種名不詳)が飛来し、地面で日光浴していたツマグロヒョウモン♂の目の前を横切りました。(@2:06〜)
なんとなく、ヒメシジミやツバメシジミではないかと思うものの、定かではありません。
ツマグロヒョウモン♂はピクッと反応しただけで、飛び立ちませんでした。
小物は眼中に無いのかと思いきや、二度目の領空侵犯でスクランブル発進しました。
実はそのシジミチョウの行動にはシジミチョウなりの目的があり、同種の2頭が追いかけっこをしていたのです。
カメラの仕様でハイスピード動画モードでは固定焦点になってしまうため、シジミチョウ♀♂の求愛飛翔を記録できずに残念でした。
その間にツマグロヒョウモン♂はシジミチョウの追跡を止め、奥のクズの葉先に止まり直しました。(映像なし)
それにしても、今季はツマグロヒョウモンとの遭遇回数が過去最高を更新中です。
本来は南方系であるツマグロヒョウモンをここ北国(東北地方の雪国)で何度も見かけるようになったということで、地球温暖化に伴う分布の北進をひしひしと実感します。
もはやレア感はありません。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
【追記】
『フィールドガイド日本のチョウ』でツマグロヒョウモンを調べると、
♂は見晴らしのよい場所で占有行動をとる。 (p201より引用)「見晴らしの良い場所」と言っても、それほど高くない(場合もある)ということを今回の観察で知りました。
【追記2】
環境Eco選書『チョウの行動生態学』によると、蝶♂の配偶戦略には探索戦術と待伏せ戦術の2通りがあり、ツマグロヒョウモン♂は後者なのだそうです。