2015/06/29

揺籃から羽化したセアカヒメオトシブミ



2015年6月中旬・室温27℃・湿度50%
▼前回の記事
セアカヒメオトシブミの揺籃作り【後編】

セアカヒメオトシブミApoderus geminus)♀が柳の葉を巻いて作った揺籃に産卵してから33日後、飼育容器内で羽化した成虫が徘徊しているのを見つけました。
採集した揺籃をときどき霧吹きで軽く加湿しながら容器内に放置していたのですが、一ヶ月を過ぎても成虫が羽化してこないので乾燥で飼育に失敗したのかと心配していました。
きれいな円形の脱出口が揺籃の側面に開いていて、少しだけカビが生えかけていました。
巻いた揺籃を留める折り返し部分が解けかかっているのは乾燥のせいかな?
脱出する際は中から齧る音がしたはずですけど、気づけませんでした。
この日は久しぶりに霧吹きしたので、湿り気で雨だと思い羽脱したのでしょうか。

ときどき翅を広げて飛んでくれたのに、肝心の飛び立ちシーンが尻切れトンボになってしまいました。
飛行後の後翅をきれいに畳めないでいます。
飛ぶ力も弱く、すぐに墜落してしまいます。
クチクラが未だ充分に固まっていないのかな?
触れると長時間死んだふり(擬死)します。





その後はホスト植物の柳とイタドリを水差しにして与え、飼育を続けてみました。
ところが飼育容器から逃げ出そうと飛んだり徘徊したりするばかりでした。
揺籃を作るどころか葉を食べる行動も全く見られず(見落としただけ?)、5日後には死んでいました。
その行動から素人目にはなんとなく♂ではないかという気がするのですけど、どうですかね?
オトシブミの♂は飲まず食わずで配偶行動に没頭するのでしょうか?

♀は交尾してからでないと揺籃を作り始めないのかな?
私には形態的にセアカヒメオトシブミの性別を見分けられないので、どなたかお分かりの方はぜひ教えて下さい。(※追記参照)



以下は標本写真。
死後は鞘翅の赤色がやや褪色するようです。




シリーズ完。

次の課題としては、

  • 揺籃を分解して卵の位置を確認する。
  • 柳の葉から切り落とされずに残っている揺籃を採集してきて飼育する。
  • 揺籃をカットして中身の発生状況を観察しつつ飼育する。
  • 飼育下で揺籃を作らせる。
  • 成虫の摂食行動を観察する。


※【追記】
クリの葉を巻いて揺籃を作るナミオトシブミの生態を緻密に調べた古い名著『オトシブミ―昆虫の本能のひみつをさぐる (観察の本 1) 』p75〜76によると、ナミオトシブミの場合は前脚の跗節の基部にある鉤爪の数が♂では1本、♀では2本でした。
♀のかぎ形の二本のつめが、足の先のつめといっしょになって、ようらんを巻くとき、葉を引っぱったり、筒を抱きころがしたりするときの、だいじな道具になるのです。♂は二本もつめがいらないんだ。葉を巻くのは、♀だけだもの。
この性差はどのオトシブミでも共通なのですかね?
だとすれば今回、私が得たセアカヒメオトシブミの個体は爪の数が一本なので♂ということになります。
手元の標本で爪の性差をもう一度確認してみる必要があります。

マイマイガ(蛾)の幼虫を狩るセグロアシナガバチ♀



2015年6月上旬

湿地帯に生えた柳の群落でアシナガバチがふらふらと探索飛翔していました。
目で追うと何か獲物を狩ったようです。
柳の葉に止まって獲物を解体し、肉団子を作り始めました。

キアシナガバチと迷うのですが、大型のセグロアシナガバチPolistes jokahamae)と判明。
時期的にワーカーではなく、単独営巣期の創設女王だと思います。

柳の茂みが邪魔で蜂を驚かせないように近づくのが難しく、蜂にピントを合わせるのに苦労しました。
(ピンぼけ部分を編集で大幅にカットしました。)
獲物は毛虫のようです。
途中から蜂が葉の影に隠れてしまいました。
向きを変えた瞬間に前伸腹節が黒い(セグロアシナガバチの特徴)ことをスロー再生で確認できました。
肉団子を作り終えると獲物の内臓と頭部を残して飛び去りました。
(カメラを警戒して逃げたのかもしれません。)
柳の葉を調べると、餌食となった毛虫の体液でベットリ濡れています。
固い頭楯だけが生首のように残されていました。
この頭楯の特徴的な斑紋から、獲物の正体がマイマイガLymantria dispar japonica)幼虫(=ブランコケムシ)と判明しました。

今回の観察で分かったことがあります。
まず、毛虫の毛にアシナガバチから身を守る防御力はありません。

アシナガバチが狩るのは毛の生えていない芋虫や青虫ばかりだと思っていたので、毛虫も狩るとは意外でした。
そして害虫マイマイガの大発生を抑止するために、アシナガバチを安易に駆除すべきではありません。生物的防除
今年もマイマイガ幼虫が山林で大発生しているので、その天敵に注目して自分なりに調べてみます。



2015/06/28

ヒオドシチョウの羽化(左右の口吻が結合する様子)



ヒオドシチョウの飼育記録#15


▼前回の記事
羽化したヒオドシチョウの初飛行

2015年6月中旬・室温23℃

最後に蛹化したヒオドシチョウNymphalis xanthomelas japonica)個体d白も無事に羽化してくれました。
実はこの個体は、終齢幼虫の時代に脱走して一時行方不明になりました。
数日間も室内を彷徨った末に再捕獲したのです。
長い飢餓状態に置かれても発生が少し遅れただけで問題なく成虫まで育ちました。

柳の枝に垂蛹を作ってから11日後の朝、翅の赤色が蛹の外から透けて見えるようになりました。
羽化が近いと判断し、早朝から録画で監視スタート。
今回の目標は、左右2本の口吻が1本に結合する様子を(マクロ)動画に撮ることです。

これまでの2例では、ヒオドシチョウの羽化開始時刻は9:42および14:39でした。
今回は午前7:33に蛹が割れて羽化が始まりました。
ただし早朝から撮影用の照明を当て続けたので、蛹の日周リズム(体内時計)が前にずれた可能性もあります。
今回も羽化の予兆となるような蠕動運動は認められませんでした。

冒頭16秒のみ、微速度撮影した10倍速映像です。
その後はリアルタイムに録画した映像です。
あっという間に翅が伸び切ったので、今度はマクロレンズで口吻を接写してみました。(5倍速映像)
鱗翅目の口器は幼虫と成虫とで機能も形態もまるで異なります。
噛む口器から吸う口器へと完全変態を遂げるのです。
成虫の口吻は羽化した時からストローのような管状になっている訳ではありません。
ゼンマイ状の口吻をくるくると伸縮させながら根本からジッパーを閉じるように左右2本の口吻を結合します。
もしも口吻の結合に失敗すれば、文字通り死活問題になります。(花蜜を摂取できずに餓死してしまうでしょう。)
口吻の結合が完了すると、口吻の伸縮が止まります。
丁度その頃、不要となった体液を蛹便として排泄したようです。
下に敷いた白紙が赤い蛹便で汚れていました。
後半は透明な液体も排泄したようです。



午前11:35頃になると翅も体も固まったようで、自力で明るい窓の方へ飛び立ちレースカーテンに止まりました。
撮影後は窓を開けて放蝶しました。




以下は羽化殻の写真。


さて、今回4頭の終齢幼虫を採集してきて飼育した結果、羽化率は100%(4/4)、寄生率は0%でした。
1匹ぐらいは寄生されているかな?と思ったので意外でした。
ヒオドシチョウ幼虫の棘状突起に寄生を妨げる防禦効果があるのかな?と想像してみました。
しかしヒオドシチョウを寄主とする寄生蜂を調べてみると例えば、ヒメヒオドシヤドリヒメバチが知られています。

シリーズ完。


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