前回の記事:▶ 池で溺れるヒカゲチョウ♀に襲いかかるアメンボの群れ
2022年9月中旬・午後14:55頃・くもり
山中の池に落水したヒカゲチョウ♀(Lethe sicelis)が水面でパタパタと暴れています。
蝶が立てる波紋に気づいたトノサマガエル♀(Pelophylax nigromaculatus)が浅い池をピョンピョン跳んで近づいて来ました。
この時点では獲物に対して定位しており、一直線に向かってきました。
トノサマガエル♀は喉をヒクヒク動かしています。
ヒカゲチョウ♀も迫りくる殺気を感じたようです。
絶体絶命のヒカゲチョウ♀は逃げられないので、動きを止めました(フリーズ、すくみ行動、擬死、死んだふり)
蛙に翅裏を見せていますが、地味な模様なので保護色になっているのかもしれません。
案の定、トノサマガエル♀は獲物を見失ったようで、ヒカゲチョウ♀の横を通り過ぎてしまいました。
蝶が少しでも動いたらカエルに気づかれてしまいます。
至近距離で共にフリーズした息詰まる神経戦を5倍速の早回し映像でご覧ください。
トノサマガエル♀はときどき腹部がヒクヒク動くだけで、じっとしています。
カエルが動かないのも、獲物を油断させるための作戦なのでしょう。
ヒカゲチョウ♀が先に警戒を解いてしまい、ピクピクと身動きし始めました。
閉じた翅を細かく震わせているのは、飛び立つ前の準備運動なのでしょう。
体温を上げるために、胸部の飛翔筋を激しく動かすのです。
それを横目で見ていたカエルが遂に襲いかかりました。
狩りの決定的瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:17〜)
トノサマガエル♀は口を大きく開けて跳びつき、見事に獲物をパクリと咥えました。
カメレオンのように舌を素早く伸ばして獲物を狩るのではありません。
自分の身を守る武器を持たないヒカゲチョウは、成す術もなく捕食されてしまいました。
狩りに成功したカエルはまず左右の前脚を使って、獲物に付着したゴミや泥を払い落としました。
トノサマガエル♀の口の両側から蝶の翅が飛び出しています。
かさばって食べにくい翅を取り除くこともなく、その場で全て丸呑みしました。
カエルは歯が無いので、大きな獲物を食い千切ることができないのです。
数回に分けて獲物を飲み込もうとする度に、大きな眼球が引っ込みます。
トノサマガエルの捕食シーンを動画に撮れたのは久しぶりです。
こうなるだろうと展開を予想(期待)して、辛抱強く長撮りした甲斐がありました。
関連記事(10年前の撮影)▶ 毒虫アオバアリガタハネカクシを捕食したトノサマガエルが嘔吐
池を舞台にして繰り広げられる「食うか食われるかの連続ドラマ」を目の当たりにして、静かな感動を覚えました。
特に印象的なのは、弱者の対捕食者戦略としてのすくみ行動(フリーズ)です。
今回はトノサマガエルに軍配が上がりましたが、「ヘビに睨まれたカエル」という慣用句もあるように、立場が変わればカエルもフリーズするしかありません。
実際、この池にはヤマカガシなどの蛇がときどき出没します。
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