2020/06/08

ハナミズキの枝にスズバチの古巣を見つけた!

2019年12月上旬

郊外の街路樹が落葉すると、ドロバチの仲間が作った泥巣を見つけました。
丸い泥の塊には小さな羽化孔が空いていて、古巣でした。
営巣木はハナミズキ(別名アメリカヤマボウシ)で、完全に落葉した後の枝に赤い実だけが残っていました。
ヤマボウシは実の形が全く異なるので、除外できます。
葉が茂っている夏の間にこの泥巣を見つけるのは至難の業でしょう。

こんな平地にドロバチ類が生息しているとは意外でした。
調べてみると実は周囲に様々な作物を栽培する広大な畑や防風林、雑木林が多いので、ドロバチの生息に適した自然豊かな環境と言えそうです。





2日後の夜に、古巣を採集に出かけました。
持参したミニ脚立に乗ると手の届く高さでした。(具体的に高さを測定すべきでしたね…。)
剪定バサミで細い枝先ごと泥巣を採取しました。
雪が積もってハナミズキの枝が折れたり風雨で泥巣が風化崩壊する前に採集できて一安心。

採集した古巣は直径約3cmとクルミぐらいの大きさで、(球形には程遠い)いびつな塊でした。
細い枝先(直径約xmm)が泥巣を貫通しているものの、泥塊の中心を通ってはいません。
初め私はトックリバチの仲間が作者かと思いました。
実を言うと私はトックリバチ類が作った泥巣を今までほとんど見つけたことがありませんでした。
ようやく発見できて嬉しかったのですが、この泥巣の巣口には徳利のような返しの構造がありません。
ということは、トックリバチではなくスズバチ♀(Oreumenes decoratus)が作りかけで放棄した不完全な古巣でしょうか。
スズバチ♀は育房(独房)を幾つか並べて作ると全体を大量の泥で覆うはずです。

古巣には小さな丸い羽化孔が3つ開いていました。
そのうちの2つはほぼ反対側に開口していましたが、貫通はしていない独立の穴です。
つまり3匹の成虫が羽化したことになります。
ただし、スズバチを寄主とする捕食寄生者が羽化・脱出した穴という可能性もあります。

スズバチが樹上に営巣することもあるというのは図鑑を読んで知ってはいました。
これまで私が見つけたスズバチの泥巣は全て、石やコンクリートを土台として作られたものばかりでした。
私のフィールドでスズバチ♀は樹上に造巣しないのだろうか? 営巣基質の選択に地域性があるのだろうか?と不思議だった謎が、これで解決しました。
泥巣を割って内部構造や育房内の貯食物、抜け殻を調べようか迷いました。
スズバチ♀が枝に作った泥巣を見つけたのが初めてなので、記念の標本としてそのまま大切に保存することにしました。
(私の気が変わったら泥巣の内部を調べて見るかもしれません。)
容器に密閉して保管していますが、年が明けても新たにスズバチや寄生者が羽化してくることはありませんでした。

※ 今回は動画の無い写真だけの記事になります。


【追記】
(スズバチの泥巣は)自然木の枝では、ほぼ球状になる。(新開孝『虫のしわざ観察ガイド—野山で見つかる食痕・産卵痕・巣』p138より引用)



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