2024/03/09

ニホンアナグマの溜め糞場に飛来した夜蛾を捕食する野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬・午後22:00頃 

平地のスギ防風林に残されたニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpをカメラトラップで監視すると、野ネズミ(ノネズミ)がよく写ります。 
明るい昼間に撮った現場の様子はこちらです。 

一方、夜になると暗闇のスギ林の中を夜行性の蛾が複数飛び回っています。 
ある晩アナグマの溜め糞場stmpに来ていた野ネズミが、溜め糞から飛び立った(あるいはたまたま低空で飛来した?)夜蛾に襲いかかりました。 
蛾は素早く飛んで逃げ、狩りに失敗した野ネズミは手前の切株へ立ち去りました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 

わずか1分半後、次にトレイルカメラが再び起動すると、溜め糞の横で野ネズミが夜蛾を捕食していました。 
狩りに成功した瞬間を撮り損ねたのが残念無念。 
獲物の翅はちぎってその場に捨て、胴体だけを食べています。 
野ネズミの肉食行動は初見で、感動しました。 
野生動物のトイレでは食物連鎖の様々なドラマが静かに繰り広げられているのです。

映像からは餌食となった蛾の種類を見分けられません。
この時期(昼間)はトンボエダシャクがよく飛び回っているのを見かけますが、なんとなくシャクガ科ではなくヤガ科のように見えます。 
夜行性の蛾の中に獣糞で吸汁する種類がいるらしいということは、過去にも観察しています。 
昼行性の蝶と同じく、性成熟に必要なミネラル成分(ナトリウムイオンやアンモニウムイオンなど)を獣糞から摂取しているのでしょう。

ニホンアナグマの溜め糞をほじくり返してみると…

 

2023年6月下旬・午前10:00頃 



スギ防風林の中にニホンアナグマMeles anakuma)が通う溜め糞場stmpがあり、定点観察しています。 
放置されたまま朽ちた古い手押し車(猫車)の金属フレームが目印になっています。
約5m離れた地点に残されたタヌキの溜め糞wbc-1と異なり、アナグマの溜め糞は黒い軟便で糞の原形が残っていません。 

鈴木欣司『アナグマ・ファミリーの1年』(2000年)によると、
 (アナグマの溜め糞は:しぐま註)軟便でしたが、(中略)土の中の酸化鉄を原料にしている絵の具のイエローオーカーのにおいがしました。これは、ミミズばかりむさぼり食べていた証拠です。(p35より引用)
アナグマの糞特有の匂いが気になっているのですけど、私はまだイエローオーカーの匂いを理解できていません。
タヌキの溜め糞に比べて臭くない(糞便臭が弱い)としか思えません。


すぐ横には朽ち果てた切株があり、その下にオニグルミ堅果の殻が大量に散乱していました。 
殻の両側に丸い穴がくり抜かれていることから、アカネズミApodemus speciosus)の食痕と判明。 
周囲を見回してもオニグルミの木は生えていなかったので、秋にオニグルミの落果を1個ずつせっせと運んで貯食していたのでしょう。 
大雪の積もる冬に貯蔵庫のクルミを食べて暮らし、残りの殻を一箇所に捨てていたのです。 
つまり、この辺りはアナグマのトイレでもあり、アカネズミのゴミ捨て場でもあります。 
どこか近くにアカネズミの巣穴があるはずですけど、朽ち果てた切株の根元は穴だらけで逆によく分かりませんでした。 
後日、すぐ近くのスギ林床(スギ落ち葉の下)に野ネズミ(ノネズミ)の巣穴を発見しました。(映像公開予定)
右上にアカバトガリオオズハネカクシ
 
2023年6月下旬・午後13:50頃

3日後に現場を再訪しました。
鬱蒼としたスギ林の林床は、日中でもかなり薄暗いです。 
小枝でアナグマの溜め糞stmpをほじくってみると、湿った粘土状というか、独特の質感です。 
溜め糞の中から得体の知れない小型の黒い虫が大量に現れ、慌てて逃げ惑います。
糞虫やハネカクシ類、シデムシ類だと思うのですが、糞分析の要領でじっくり調べないと分かりません。
(目の細かいザルに獣糞を入れてほぐしながら流水で洗い流し、未消化の内容物や糞虫を濾し取る手法)
アナグマの調査で忙しくてこれ以上手を広げられず、糞虫の採集調査は後回しになっています。
隣りにあるタヌキの溜め糞wbcと糞虫相を比較するのも面白そうです。

溜め糞stmpの周囲を黄色い昆虫が高速でブンブン飛び回っていました。
ようやく近くの下草に止まったので接写してみると、キイロコウカアブPtecticus aurifer) でした。
右翅だけ広げた謎の体勢です。 
レンズをそっと近づけてもなかなか逃げません。
最後にようやく羽音を立てて飛び去りました。


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2024/03/08

ニホンアナグマ母子が転出した空き巣穴に夜な夜な忍び込んで内見するホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子がどこか別の巣穴に転出すると、それまで使われていた営巣地(セット)にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が夜な夜な侵入するようになりました。 
これまでよりも出現頻度が上がっています。 
アナグマが子育てしている間は特に♀が殺気立っているので、近所のタヌキも遠慮してセットには近寄らないようにしていたのでしょう。
あるいは、アナグマがあちこちに尿による縄張りマーキングを繰り返すことで、まるで結界を張ったように有効だったのでしょう。 
嗅覚の鋭いタヌキは、アナグマの匂いが巣口周辺で日に日に薄れていることを敏感に嗅ぎ取り、日に日に大胆に振る舞うようになっています。 


シーン1:6/26・午前3:22・気温15℃(@0:00〜) 
タヌキが暗い夜にアナグマの営巣地に来たのは、これが初めてです。 
これまでタヌキは明るい日中または薄明薄暮の時間帯にこっそり訪れていて、アナグマの活動が活発になる夜には決して現れませんでした。 
夜は営巣地(セット)に近づこうとするタヌキを巣穴の主であるアナグマが(吠え立てながら?)積極的に追い払っていたのかもしれません。 

深夜未明に現れたタヌキは、左の巣口Lへ真っ直ぐ向かい、そのまま迷いなく巣L内に侵入しました。 

まさに「同じ穴のむじな」という諺通りです。 
アナグマの空き巣をタヌキがこのまま乗っ取るのかな? 


シーン2:6/26・午前3:22・気温16℃(@0:25〜) 
別アングルのトレイルカメラでも、タヌキの巣穴L侵入シーンがしっかり撮れていました。 
しかしカメラの設置アングルがいまいちで、手前の巣口Lがしっかり写っていません。 


シーン3:6/26・午前3:24・(@0:25〜) 
カメラの起動が遅れてしまいましたが、1分20秒後に右へ立ち去るタヌキの後ろ姿が写っていました。 
タヌキは巣穴Lに居座ったり乗っ取ったりしないで、内見しただけで帰ったようです。 


シーン4:6/27・午前0:36・気温19℃(@0:45〜) 
翌日の深夜にもタヌキがアナグマの旧営巣地にやって来ました。 
巣口Rを覗き込んでから、蚊にでも刺されたのか右の脇腹を舐めて毛繕いしています。 
今宵は奥の巣穴Rへ慎重に潜り込みました。

アナグマの母子が転出した後、ヘルパー♂が取り残されたと思ったのですが、ヘルパー♂も不在がちなのかもしれません。 


シーン5:6/27・午前0:36・気温19℃(@1:43〜) 
別アングルの公開映像でもタヌキの入巣Rシーンが撮れていました。 
前夜のタヌキと同一個体かどうか、個体識別ができていません。 

巣穴の主であるアナグマ(ヘルパー♂)が不法侵入者を追い払うために飛び出してこないということは、留守なのでしょう。 
独りになったヘルパー♂はタヌキを怖がって居留守を使っている可能性はどうでしょう? 

タヌキが巣口Rlの横で地面の匂いを嗅いで方向転換しながら排尿マーキングしたように見えたのは、私の気のせいでしょうか?(@2:21〜) 
排尿姿勢から見ると、片足を上げなかったので♀のようです。 
タヌキが潜り込んだのは巣穴Rrでした。 

この後、タヌキが出巣Rするシーンが撮れていません。 
単に撮り損ねたのか、それともタヌキが巣R内に居座ったのか、不明です。 


シーン6:6/28・午前3:41・気温20℃(@2:43〜) 
翌日の深夜未明、土砂降りの豪雨が降りしきる中、タヌキが登場。 
身震いしてから慎重に巣穴Rlの中に潜り込みました。 

この後、タヌキが出巣Rするシーンが撮れていません。 
単に撮り漏らしたのか、それとも巣R内に居座ったのか、不明です。 

一時的な雨宿りではなく、いよいよアナグマの空き巣をタヌキが本格的に乗っ取ったような気がしてきました。


 シーン7:6/29・午前5:12・気温20℃(@3:14〜)日の出時刻は午前4:16。 
翌日の早朝、雨は止んでいました。 
やって来たタヌキが奥の巣口Rを覗き込んで匂いを嗅いだものの、中には入らずに左奥の二次林へ立ち去りました。 

登場するタヌキの個体識別ができるようになれば、より面白くなりそうです。 


【追記】
アナグマ関連の本を読んで「幼獣が生まれた巣穴から母子はやがて引っ越す」という予備知識があったので、そのように解釈しているのですが、トレイルカメラの電池切れで肝心の転出行動を記録できていません。
したがって、タヌキが力づくでアナグマの巣穴を乗っ取り占拠したという可能性も排除できません。


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