2024/04/04

獲物を求めて飛び回り、スギ大木の剥がれかけた樹皮の裏を調べるヒメスズメバチ♀

 

2023年7月中旬・午前11:30頃・くもり 

里山の山腹をトラバースする林道の脇でヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)のワーカー♀が探餌飛翔していました。 
本種はアシナガバチの巣を襲ってその幼虫や蛹を専門に狩るスペシャリストです。 
つまり、狩りモードのヒメスズメバチ♀はアシナガバチの巣を探しているのです。 
スギ老木の根元をホバリングで飛び回り、林床に下草として生えたチヂミザサの葉に着陸すると、枯れたスギ落ち葉の下に潜り込んだりしています。 

私が動画を撮りながら少し近づくと、ヒメスズメバチ♀はスギ幹の根元付近に取り付きました。 
樹皮を齧り取って巣材集めをするのかと思いきや、剥がれかけた樹皮の裏側へ潜り込みました。 
しばらくするとまた外に出てきました。 
このとき獲物の肉団子を咥えてなかったので、樹皮の裏側にアシナガバチの巣はなかったようです。 
そもそも私の経験上、樹皮の裏側の隙間になんかアシナガバチは営巣しそうにありません。

スギ老木への興味関心を失った蜂は、探餌飛翔に戻りました。 
ヒメスズメバチ♀の探餌飛翔を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@1:05〜) 
スギ林内を低空でジグザグに飛び去りました。

実は、まさにこのスギ大木のめくれかけた樹皮の裏側にカマドウマの大群が潜んでいたことがあります。 
もしもヒメスズメバチ♀がカマドウマを狩りにせっせと通っていたら大発見です。 

関連記事(2年前の撮影)▶ スギの樹皮の裏側に群生するマダラカマドウマ 


今思えば、剥がれかけた樹皮の裏側にヒメスズメバチが営巣していた可能性もありそうです。 
高見澤今朝雄『日本の真社会性ハチ』という図鑑を紐解いてみると、
ヒメスズメバチの営巣場所は、土中の空洞、樹洞、家屋の屋根裏、壁間など(p109より引用)
動画撮影後にスギ樹皮をめくって、しっかり確かめるべきでした。 

関連記事(6、10年前の撮影)▶  



【追記】
探餌行動とは限らず、創設女王が営巣地候補を探索していたのかもしれません。
剥がれかけた樹皮の裏側に樹洞があるのかと期待して潜り込んだとすれば、辻褄が合いそうです。
ヒメスズメバチは獲物となるアシナガバチの生活史と合わせるために、自らの営巣は他のスズメバチ類よりもかなり遅れて始めます。
しかし撮影した7月中旬にヒメスズメバチの創設女王が営巣地を探索しているのは、いくらなんでも遅すぎる気がします。


2024/04/03

怪我した右後脚をかばって3本足で痛々しく跛行するホンドタヌキ♂が排尿マーキング【トレイルカメラ】

 



2023年7月中旬・午前5:25頃・気温21℃ 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が転出した後の旧営巣地(セット)に、ある朝早くホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の♀♂ペアがやって来ました。 

シーン0:7/7・午後16:21(@0:00〜) 
数日前の明るい昼間にたまたま撮れた現場の状況です。 


シーン1:7/13・午前5:23(@0:04〜) 日の出時刻は午前4:24。 
巣口Rを覗き込んで匂いを嗅いでいる個体は、後ろ姿の股間に睾丸が見えるので♂と分かりました。 
驚いたことに、この♂個体は右後足を地面に付けないように、3本足で痛々しく跛行していました。
酷い怪我をしているのでしょうか? 

その間、♀と思われるパートナーが画面の右端で待っています。 
奥の二次林内で合流した2頭が仲良く相互毛繕いを始めました。 


シーン2:7/13・午前5:25(@0:48〜) 
タヌキの♀♂ペアは再びアナグマの旧営巣地に出てくると、巣穴Rを避けるように、左へ立ち去りました。 
健常な♀が先行し、後続の♂が3本足でひょこひょこと跛行しています。 


シーン3:7/13・午前5:26・気温21℃(@1:04〜) 
別アングルで設置した新機種のトレイルカメラで続きが記録されていました。 
後続個体♂が、通りすがりに立木(樹種不明)の匂いを嗅いでから幹に排尿マーキングしました。 
怪我している片足(右後脚)を上げた姿勢のままで小便しました。 
排尿姿勢からも、この個体は♂であることが分かります。 

二次林内の獣道を辿って2頭のタヌキ♀♂が前後して立ち去ります。 
ハンディキャップがあっても、健常個体♀に遅れを取らず(遜色なく)ついていけてるようです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】
タヌキ♂右後脚の怪我について。
負傷の原因は不明ですが、夜の車道で交通事故に遭ったとしたら、こんな軽傷では済まないでしょう。 
この二次林にはノイバラの群落があちこちに自生していて、私も薮漕ぎする度に衣服に引っかかってかぎ裂きになったり手足に刺さって出血したりと、難儀しています。 
今回のホンドタヌキ♂も獣道でノイバラの棘をうっかり踏んで足の裏に刺さり、化膿してしまったのではないか?と推察してみました。 
先天的な奇形の可能性も考えられます。 
このまま定点観察して、跛行の症状が回復すれば、奇形の可能性は除外できるはずです。 

同一個体が数百m離れた溜め糞場でもトレイルカメラに写っていました。


農作物が野生動物(害獣)の食害を受ける問題が近年、深刻になっています。 
農地を電気柵で囲うなどの対策が取られています。 
今回の件で思いついたのですが、農地の周囲に棘のある低灌木をびっしり植えて生垣としたり、大量の棘だらけの落枝を地雷原のように地面に並べておけば、野生動物の侵入を防げるかもしれません。 
逃げる忍者がまきびしをばら撒いて追手を食い止めるのも同じ発想です。
草食動物の食害から身を守るために鋭いトゲを進化させた灌木には、ノイバラやウコギ、タラノキなどがあります。
(ただし、シカやイノシシなど有蹄類は茨の道を平気で歩けそうです。) 
農作業をするヒトは厚底の靴を履いて農地に出入りすれば良いのです。 
ノイバラの生垣がなぜ「失われた知恵」になってしまったのでしょうか?
今となっては「いばらの道を歩く」という慣用句にしか使われていません。
考えてみると、隙間なく生垣を植栽するのが面倒なので、便利な有刺鉄線が発明されたのでしょう。 
私が子供の頃、有刺鉄線は「バラ線」と呼ばれて現役で使われていました。 
それでも害獣への防除効果が薄いために、現代の電気柵に取って代わられたという歴史がありそうです。 
電気柵は周囲の草木に接触して漏電したり電池切れしたりすると、防除効果がゼロになります。 
電気柵の欠点を補うために、もし余裕があれば、農地の周囲にトゲのある生垣を少しずつ復活させるのもエコかもしれません。 (温故知新)
農地を囲う生垣を隙間なく完全に作るのは大変ですが、一部だけでも野生動物の侵入経路を限定することができそうです。
ウコギタラノキを植えれば、山菜として食用にもなります。
キイチゴ類は甘い果実を提供してくれるでしょう。


私が観察しているアナグマの営巣地には大量の落枝が散乱しています。 
落枝をきれいに始末しないアナグマはずぼらな性格なのだと思っていました。
落枝の中に実は、ハリギリ(別名センノキ)という、幹にたくさんの棘が並ぶ木の若い倒木が含まれていました。 
アナグマも巣穴に出入りする度にハリギリ倒木の棘を踏みそうになっていたので、良かれと思って私は勝手に取り除いてしまいました。 
巣穴を監視するために設置したトレイルカメラの画角をハリギリ倒木が遮って撮影の邪魔になる、という理由もありました。
今になって考えると、天敵や不法侵入者への防犯装置として有効だったかもしれません。 
アナグマが棘だらけのハリギリ倒木をわざわざ巣穴の近くまで引きずってきたとしたら、面白いですね。 
アナグマの防犯装置を勝手に取り除いた私は、余計なお世話というか、悪いことをしてしまったかもしれません。 
しかし、私が横にどけたハリギリ倒木をアナグマが再び元に戻すことはありませんでした。 
生まれてきたアナグマの幼獣は、ハリギリの倒木を踏まないように避けて歩くよう学習しないといけません。 
アナグマの母親♀が引率して森を案内する際に、幼獣に教えるのでしょうか。
残念ながら、その過程を観察できませんでした。 



トリアシショウマの花を舐めるスズキナガハナアブ♀【ベイツ型擬態】

 

2023年7月中旬・午後12:20頃・くもり 

里山の細い山道(ほぼ廃道状態)に沿って咲いたトリアシショウマの群落でスズメバチにそっくりなアブが訪花していました。 
後で調べてみると、スズキナガハナアブ♀(Spilomyia suzukii)でした。 
 【参考】:「ハナアブの世界」サイトにスズキナガハナアブの標本写真が掲載されています。 

半開きの翅をリズミカルに開閉しながら口吻を伸縮させて花粉と花蜜を舐めています。 
食事の合間に左右の前脚で頭部を擦ったり口吻を挟み込んだりして、付着した花粉を拭い取りました。 
本種の訪花シーンは初見です。
同一個体を追いかけて撮影しました。 
森の中でヒグラシ♂(Tanna japonensis)が寂しげに鳴いています♪ 

冒頭のシーンではヒメトラハナムグリLasiotrichius succinctus)も同じトリアシショウマの花穂に来ていましたが、互いに無関心でした。 


スズキナガハナアブはベイツ型擬態の好例ですけど、モデルとなった蜂が何なのか、よく分かりません。 
キアシナガバチPolistes rothneyi)ですかね? 
特定の種類のスズメバチやアシナガバチではないかもしれません。 
蜂好きが見ると不完全な擬態で、粗が目立ってしまいます。 
まず腰が太いので「毒針に刺されそうで怖い!」とは思いません。 
本当に刺す蜂(有剣類)は、腰が細いのが特徴です。
私の知る限り、スズメバチ類はトリアシショウマの花で吸蜜しませんから、その点でも違和感を覚えました。 
しかし捕食者に恐怖で狩りを躊躇させるには充分似ているのでしょう。 

スズキナガハナアブは「人の手があまり入らない、原生的な自然環境を必要とする種」とのことで、確かに今回の現場は原生林というほどではありませんが、整備されずに放置された里山でした。 
多数の倒木で塞がれた廃道には雑草や灌木が生い茂っていました。 
山の管理者が林道や登山道をきれいに整備した途端に周辺の生物多様性が貧困になる(希少種は居なくなり、ありふれた普通種しか見られなくなる)という現象は私も実感しています。 
林業の観点からは山林を整備した方が良いに決まっているので、自然破壊と一概には決めつけられません。 
間伐して定期的に下草を刈るなどの整備を施して林縁的な里山環境が保全されている方が生物多様性は高まる、というのが定説ですけど、希少種の昆虫に関しては優しくないのでしょう。 

スズキナガハナアブの幼虫は何を食べて育つのか、生態が解明されているのでしょうか? 
生息環境が原生林に限られるということは、おそらくスズメバチの巣などに寄生するのではないか?(何かしらの寄生種だろう)と私はずばり予想します。
寄主の巣に産卵する際に擬態が役立っているのではないか?と先走った妄想をしています。 


関連記事(9、12年前の撮影)▶  


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