2021/12/13

ミズナラの樹液酒場を巡って争うヒメスズメバチ♀・チャイロスズメバチ♀・オオスズメバチ♀・アカタテハ

 

2021年9月上旬・午前11:50頃・くもり 

里山の尾根道で見つけたミズナラの樹液酒場で3種類のスズメバチが興味深い占有行動を繰り広げていました。 
登場するのはチャイロスズメバチVespa dybowskii)、ヒメスズメバチVespa ducalis pulchra)、およびオオスズメバチVespa mandarinia japonica)のいずれもワーカー♀です。 
結局、樹液酒場を独り占めするのは、最強のオオスズメバチ♀です。 
オオスズメバチ♀が樹液を吸汁したり樹皮を齧って樹液酒場を拡張したりしている間、他の種類のスズメバチは怖くて近づけません。 
遠慮がちに少し離れて順番待ちしています。 

ヒメスズメバチの体長はオオスズメバチと遜色ありませんが、体の太さで負けます。 
ヒメスズメバチがオオスズメバチに戦いを挑むことはありませんでした。
もう1匹のヒメスズメバチ♀が飛来して2:1になっても、オオスズメバチ♀は樹液酒場を譲りませんでした。(@0:38) 
それどころか、2匹のヒメスズメバチ♀間で小競り合いがあったのが興味深く思いました。(@0:52) 
もしかすると、別のコロニー出身のヒメスズメバチ♀なのかもしれません。 

そこへ2匹目のオオスズメバチ♀が飛来しました。 
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。(@1:00) 
直後に等倍速でリプレイ。 
オオスズメバチ♀は樹液酒場の横で待機していたヒメスズメバチ♀にいきなり飛びかかり、追い払いました。 
一瞬の攻撃の間に毒針で刺す素振りまでしたので驚きました。 
不意をつかれたヒメスズメバチ♀は幹から転げ落ちるように逃げて行きました。 
ライバルを1匹減らしたオオスズメバチ♀は次に、先客のオオスズメバチ♀に狙いを定めると果敢に飛びかかりました。 
やられた個体は翅を震わせて威嚇しながら、腹部をねじって相手に腹端の毒針を誇示しました。 
その間、チャイロスズメバチ♀は慌てて幹を登って物騒な戦場から離脱します。 

飛来したオオスズメバチ♀は幹に着陸すると先客と触角で挨拶し、同じコロニー出身と互いに認識したようです。 
先客の個体と口づけを交わしました。(栄養交換) 
2匹のオオスズメバチ♀に樹液酒場を専有されると、ヒメスズメバチ♀やチャイロスズメバチ♀はますます近づけなくなります。 

オオスズメバチ♀は頑丈な大顎で樹皮を齧り取ると、その欠片を口から捨てました。 
チャイロスズメバチ♀が飛来したものの、オオスズメバチ♀に睨まれただけで勝負あり。 
幹に着陸することなく慌てて飛び去りました。(@2:27) 
オオスズメバチ♀は身繕いしながら振り返ってヒメスズメバチに睨みを効かせています(牽制)。 

スズメバチ異種間で生まれつきの順位が既に決まっているようで、無駄に争うことはほとんどありませんでした。 
岩田久二雄『本能の進化:蜂の比較習性学的研究』p318 によると、
樹液の出る場所での、席次争いで強いものから弱いものへの順列は、オオ>チャイロ>コガタ>モン>ヒメ(スズメバチ)

今回、チャイロスズメバチとヒメスズメバチの間での力関係を観察できなかったのは残念です。 


実はこの樹液酒場を見つけたときには初め、アカタテハVanessa indica)が吸汁していました。(@3:07〜) 
その翅の羽ばたきで樹液酒場の存在に気づいたのです。 
完全に逆光のアングルだったので、動画編集時に逆光補正しました。 
それでも他人に披露するにはいまいちの映像なので、前後を入れ替えて最後に持ってきました。 (YouTubeでは視聴者が途中で離脱しないような工夫が必要です。) 
スズメバチ類は未だチャイロスズメバチ♀とヒメスズメバチ♀しか来ておらず(1匹ずつ)、比較的平和でした。 
チャイロスズメバチ♀とヒメスズメバチ♀は同じ樹液スポットの反対側から吸汁しています。 
アカタテハは翅を開閉しながら吸汁していたものの、チャイロスズメバチ♀との占有行動に負けてミズナラ樹液酒場から飛び去りました。 
最後に私がカメラをズームアウトしかけたら、オオスズメバチ♀とヒメスズメバチ♀が飛来しました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@4:06〜) 

他にはハエも樹液に来ていたものの、私には種類が見分けられません。 
ハエはいつでも素早く飛んで逃げられる自信があるのか、強い昆虫に混じって大胆に吸汁しています。

2021/12/12

マルハナバチに擬態したカオグロオオモモブトハナアブ♀の化粧行動

 

2021年9月中旬・午後15:55頃・くもり 

雑木林に囲まれた細い山道の横でマルハナバチにそっくりなハナアブを見つけました。 
残念ながら顔を正面から拝めなかったのですが、どうやらカオグロオオモモブトハナアブMatsumyia nigrofacies)のようです。 
おそらくトラマルハナバチ♀(Bombus diversus diversus)にベイツ型擬態していると予想されます。 
葉の上に乗って念入りに身繕いしています。 
後脚で腹背や翅を擦る合間に、左右の後脚を擦り合わせています。 
前脚で顔を拭ったり、左右の前脚を互いに擦り合わせたりしています。 
このとき口吻で前脚を舐め湿らせていました。 

化粧が一段落して飛び立ったと思いきや、すぐにまた近くの草の葉(林床の下草)に止まり直しました。 
複眼の形状から♀と判明。

薄暗い林床で撮ったので、ピントが甘いです。

ツリフネソウの花に集まり小競り合いを繰り返すブチヒゲクロカスミカメ(求愛行動?)

 

2021年9月上旬・午後16:20頃・くもり 

山道の横に咲いたツリフネソウの群落で見慣れない謎の昆虫がひとつの花に集まって何やら争っていました。 
薄暗い条件で撮影していると、触角が長いのでてっきりカミキリムシの仲間かゴキブリなのかと思いました。 
帰ってから調べてみると、どうやらブチヒゲクロカスミカメAdelphocoris triannulatus)のようです。 
本種の性別を外見で見分ける方法を私は知らないので、行動の解釈に困ってしまいます。 
どなたかご存知の方は是非教えて下さい。
首元が赤い個体が♀? 
横から見た腹部の厚みは、首元の赤い個体(♀?)の方が太い気がします。 

ネット検索しても、ブチヒゲクロカスミカメの配偶行動に関する情報は得られませんでした。
よく分かっていない(誰も調べていない)のでしょう。
カメムシの中には♂が食草上で多数の♀を囲い、このハーレムをライバル♂から防衛する種類が知られています。 
しかし、今回ツリフネソウで吸蜜・吸汁している個体はいませんでした。 
ブチヒゲクロカスミカメが吸汁する食草として、キク科、イネ科、マメ科などが知られています。(図鑑『札幌の昆虫』p74より) 
ダイズやアズキなど農作物の害虫としても知られているそうです。(野澤雅美『おもしろ生態と上手なつきあい方:カメムシ』p65より) 
なお、南九州大学の昆虫生態学研究室によって、ブチヒゲクロカスミカメは動物も植物も摂食するタイプの食性(zoophytophagy)と判明したそうです。 
つまり、ツリフネソウ科ツリフネソウはブチヒゲクロカスミカメにとって餌資源でも産卵基質でもありません。 
食草以外の花に♂が集まって求愛ディスプレイを繰り広げ、♀に選んでもらうレックなのかな?
繁殖期の雄が集合して集団で求愛誘示を行なったり,特定の位置を占めるために儀式的な闘争で争いあったりする場所,あるいは繁殖システム.レックにやってきた雌は,例えばウォーターバックのように特定の位置(中央部)にいる雄と交尾する場合と,エリマキシギのように好ましい形質をもつ雄を選んで交尾する場合とがある.レックには繁殖に役立つ資源は何もなく,雌は別の場所で出産・産卵する.魚類でも雄が集合的に営巣して求愛誇示を行なっている場合にレック様システム(lek-like system)とよぶことがある. (『岩波生物学辞典・第4版』より引用)
しかし求愛誇示らしき行動は見られませんでした。 
カメムシの場合は性フェロモンの放出が求愛誇示に相当するのでしょうか?
個体間の小競り合いもよく見ると、相手をツリフネソウの花から完全に追い払うほどの激しい闘争行動ではありませんでした。 
同じ花上で互いに少し離れたり陰に隠れたりするだけで休戦状態になります。 
小競り合いの後に2匹が横に並んで静止することもありました。 

撮影中は気づかなかったのですが、ツリフネソウの花の右上の包葉?にもう1匹居ました。 
♀が♂同士の喧嘩を見守ってるのかな?と想像したものの、性別不明です。 

ブーンという低い羽音♪を立てて新たに別個体が飛来しました。 
同種のカメムシが続々と集まるということは、集合フェロモンを発しているのでしょう。 
しかし私の鼻では何も匂いを感じませんでした。 
この程度の風では集合フェロモンに影響ないようです。 
ところが新入りの個体は、すぐにまた飛び去ってしまいました。 

繰り返される小競り合いを1/5倍速のスローモーションでじっくり見直すと(@3:10〜)、どうやら♂が♀をしつこく追い回して背後からマウントしようとしていると分かりました。 
その度に背後から近づく相手を後脚で足蹴にして牽制・撃退しています。 
♀による交尾拒否なのか、それとも♂同士の誤認求愛なのか、私には分かりません。 
別れても何度も追い回して、嫌がる相手に繰り返しマウントを試みています。 

足蹴りと言えば、カメムシの中には♂同士の闘争用に棘付きの太い後脚をもつ種類がいます。 
しかしブチヒゲクロカスミカメの後脚は長いものの、太くもなく棘も生えていません。 

私が草むらに一歩踏み込んで接写しようとしたら、ブチヒゲクロカスミカメは警戒して動きを止めてしまいました(擬死モード?)。 
何かありあわせのビニール袋でもあれば採集したかったのですが、この日は何も採集容器を持ってませんでした。
 カスミカメムシの仲間は極めて動きが俊敏で、見つけてもすぐに葉裏に隠れるほか、ネットで捕まえてもすぐに飛び立つものも多く、体が小さく軟弱な割に素早い。(野澤雅美『おもしろ生態と上手なつきあい方:カメムシ』p63より引用)

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