2021/08/11

コガタスズメバチの古巣を切断して内部構造を調べよう

 

2021年8月上旬
前回の記事:▶ 飛べ!ギンモンシマメイガ:室内に発生した寄生蛾の謎【HD動画&ハイスピード動画】

昨年の晩秋に採集したコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)の巣にギンモンシマメイガ(Pyralis regalis)が寄生していた可能性が出てきたので、古巣の標本を半分に切って内部を調べてみましょう。 
営巣木は平地のテマリカンボク。 
採集した古巣の表面に透明ラッカーを塗布したまま室内で保管(放置)していたのです。 


巣全体は縦にやや細長い卵型で、短径は約15cm、長径(高さ)は約20cmでした。 
ノコギリを使ってコガタスズメバチの古巣を慎重に半分に切断しました。
切断作業中に巣全体がグズグズに崩れるのではないかと心配だったのですが、意外ときれいに一刀両断することができました。 
予め外皮にクリアラッカーをスプレーで何度も繰り返し噴霧していたので、脆い外皮が糊で固められたように強化されていたのです。 
巣の表面に見える照かりはクリアラッカーのせいです。 

巣内を調べると、逃げ遅れたコガタスズメバチ成虫(新女王)の死骸は1匹もありませんでした。 
巣の縦断面を見ると巣盤は3層あり、頑丈な巣柄で縦に連結されています。 
それぞれの巣盤は正六角形の育房のハニカム構造で形成されています。 
育房は全て空っぽでした。 
白い繭キャップはワーカー♀によって取り除かれています。 
巣盤全体を覆う外皮は多層構造になっていて、高い断熱性能が伺えます。 
巣の側面に開いた唯一の巣口に至る通路は滑らかに加工されていました。 
これだけ精緻な建造物をコガタスズメバチ♀は樹皮のパルプから作り上げていて、何よりも巣全体が驚くほど軽いです。(重量も測定すべき)  

予想に反して、巣内に寄生蛾(ギンモンシマメイガ)幼虫による食痕は特に見当たりませんでした。 
手で巣を崩しながらこの点を徹底的に調べるべきなのですが、半分に切った巣をそのまま標本として残したいので、今回はざっと見るだけに留めました。 
多数のギンモンシマメイガ幼虫に食い荒らされた巣はこうなります。↓
関連記事(12年前の撮影)▶ コガタスズメバチの巣に寄生する蛾の幼虫

巣の内部にも改めてクリアラッカーを数回塗布し、防虫剤(ナフタレン)と一緒に容器に入れて保管します。 
シリーズ完。

池の岸で鳴き続けるモリアオガエル♂♪

 

2021年6月上旬・午後18:10頃・晴れ 

里山の山腹にある小さな池Lは初夏になるとガマなどの抽水植物が繁茂するようになりました。 
水深は浅く、緑の藻でひどく濁っています。 
モリアオガエル♂(Rhacophorus arboreus)がひたすら鳴き続ける声が響くので辺りを探すと、ようやく鳴き声の主を見つけました。 
夕方の薄暗い時間帯なので、手持ち夜景モードで動画撮影しました。 
皮膚の質感がザラザラで、虹彩の色が赤茶色ですから、シュレーゲルアオガエルではなくモリアオガエルと分かります。 
体は水に浸かっておらず、完全に上陸している状態です。 
池の水面の方を向いて座っていました。 
額になぜか白い泥のような汚れが付着しています。 

白い喉の鳴嚢を大きく膨らませてカララ…カラララ…♪と乾いた声で鳴き、たまにクーワッカッカッカッカ…♪という鳴き方を交えます。 
鳴く瞬間は口も鼻腔も閉じています。 
鳴き終わると鼻腔が開いて鼻呼吸しています。 
鳴く合間にも喉をヒクヒクと伸縮させ細かく震わせています。 
近くにもう1匹同種の♂がいるようで(未発見)、互いに鳴き交わしていました。 
それぞれの♂が岸辺で縄張りを宣言し、抱接相手の♀を呼び寄せているのです。 
薄暗くても白い鳴嚢が膨らむとよく目立ちます。 
鳴き声を頼りに集まって来る♀は、最後は♂の白い鳴嚢を目印にして近寄ってくるのではないかと想像したくなります。 

最後モリアオガエル♂は岸辺から池の中に飛び込んだのですが、その瞬間を撮り損ねてしまいました。 

せっかく♀を呼ぶために鳴いていたのに、結局この池にモリアオガエルの♀はやって来なかったようです。 
後日に池Lを再訪してもモリアオガエルの泡巣は見当たりませんでした。 
そもそも池Lの岸には産卵に適した(枝が水面に張り出した)灌木が全く生えていないのです。 
(辛うじて生えているのはアカマツ幼木のみ) 
抽水植物ガマの茎や葉に産卵するかと期待したのですが、そこにも泡巣は作られていませんでした。 
繁殖池として適さない場所で♂がいくら鳴き続けても、♀は産卵に来てくれません。 
ここを選んだ♂の判断ミスです。 

モリアオガエル♂の鳴き声を声紋解析してみる?

 

2021/08/10

飛べ!ギンモンシマメイガ:室内に発生した寄生蛾の謎【HD動画&ハイスピード動画】

 

2021年5月中旬〜下旬・午後・ 

美しく珍しい蛾を室内で見つけました。 
2頭のギンモンシマメイガ(Pyralis regalis)が天井近くの白壁に止まっていたのです。 
翌朝になると居なくなっていました。 
夜行性らしく、消灯すると活発になり、どこかに飛び立ったようです。 
その後も数日おきにぽつぽつと計4頭のギンモンシマメイガが現れました。 (一部は重複してるかも)
本種の成虫出現月は夏(7〜8月)とされているので、どうやら暖かい室内で季節外れに羽化した個体と考えられます。 

メイガ科らしく、いつも腹端を反らせた海老反り姿勢で静止していました。 
これはコーリング中の♀なのかな?
関連記事(6年前の撮影)▶ ノシメマダラメイガ♀(蛾)の性フェロモン放出:コーリング
白色LEDの照明を近づけても逃げません。 
蛾にしては美麗種だと思うのですが、室内でただじっとしているだけの蛾を撮っても動画ブログのネタとしてあまり面白くありません。 
飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@1:38〜) 
壁や天井に止まっているギンモンシマメイガにそっと触れると、準備運動なしにすぐ羽ばたいて飛び去りました。 

ギンモンシマメイガ♀はスズメバチの巣に産卵し、孵化した幼虫はスズメバチの巣を食い荒らして育つことが知られています。
▼関連記事(12年前の撮影) 
・コガタスズメバチの巣に寄生する蛾の幼虫 
・コガタスズメバチの巣から羽化したギンモンシマメイガ(蛾)
半年前に採集したコガタスズメバチの古巣を標本としてこの部屋に保管しておいたので、今回の発生源として心当たりがあるのはそれです。 
営巣木テマリカンボクの枝ごと採集した巣の中に危険なコガタスズメバチ成虫が残っている可能性があったので、巣を丸ごと冷凍庫に数時間入れて凍結処理しました。
▼関連記事(半年前の撮影) コガタスズメバチの巣を晩秋に採集したら中から蜂が出てきた!【暗視映像】
これで巣内の虫はすべて凍死させたはずなのに、寄生蛾ギンモンシマメイガの幼虫/蛹は生き延びたことになります。 
雪国に生息するギンモンシマメイガの越冬態は低温耐性が強いのでしょうか。 
スズメバチの巣内は断熱効果の高い多層の外皮で守られているので、内部まで十分に冷えなかったのかもしれません。 
その後、古巣を長期保存するために外皮の表面にクリアラッカーを繰り返し塗布しました。
有機溶剤は昆虫に毒性があるはずですが、巣内には浸透しなかったのでしょう。
関連記事(手法の説明)▶ コガタスズメバチの古巣に防腐剤処理して保存
その後は本来ならナフタレンなどの防虫剤と一緒に密閉容器に入れてコガタスズメバチの古巣を保管すべきだったのですが、納戸に放置したままでした。(密閉せず開放状態) 
春になって暖かくなり、寄主の古巣からギンモンシマメイガの成虫が続々と羽化してきたのだろう、と推理しました。

つづく→発生源と疑われるコガタスズメバチ古巣標本の内部を調べてみると…。 


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