2016/05/09

雪国で疥癬タヌキの散歩を追跡すると…【後編】



2016年2月上旬


▼前回の記事
雪国で疥癬タヌキの散歩を追跡すると…【前編】

疥癬の軽症例と疑われる野生ホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)を追いかけて私も慌てて車道に戻りました。
先回りして待ち構えていると、タヌキが雪原からのこのこと出てきて、暖冬で雪の無い車道に飛び降りました。
タヌキのロードキルを路上でよく見かけるので、通りかかる車に轢かれるのではないかと案じましたが、このタヌキはパニックにはならず車道の右端を歩いてくれて一安心。
私はビデオカメラで撮りながら歩いてタヌキを尾行します。
タヌキのすぐ横を車が通りすぎた際はさすがに少し怖がって、道端の雪の壁に引き返し登ろうとしました。
車もタヌキに気づいて少し徐行してくれたようです。

やがてタヌキは右折し、民家の敷地(駐車場)へ入りました。
車庫の入り口隅に開けられたキャットドアに迷いなく向かうと、頭から潜り込んだので、意外な結末に衝撃を受けました。
「それではドロンします♪」と昼間からタヌキに化かされたような気がしました。
勝手に侵入して居候しているのかな?
それとも、ここで餌付けされたり飼われたりしている個体なのでしょうか?
首輪こそ付けてなかったですけど、このタヌキの行動を振り返ると、まるで躾の良いお利口な飼い犬が独りで日課の散歩をしているような風情でした。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


【追記】
中嶋捷恵『我が家にはいろんな動物がやって来る』という本によると、疥癬タヌキが回復する事例もあるそうです。
 最近ではダニがタヌキに寄生して疥癬による皮膚病を引き起こし、それが次々と他のタヌキに伝染して多くのタヌキが死んでいった。症状が現れ始めるのは10月〜11月で、末期(1月〜3月)になるとほとんど毛が抜け落ちて丸裸の状態になる。直接の死因は寒さかもしれない。
 ところが、この時期を何とか乗り切り、6月の雨季を迎える頃まで生き長らえば、余命いくばくもないように見えていても何故か毛が蘇り、真夏にはすっかり回復して元気なタヌキに戻るのである。この皮膚病は温度や湿度、あるいは食べ物と何らかの関係があるのだろうか。同じ例がここ2年続いている。(p8より引用)

 

筆者は自宅の裏庭に現れる野生動物を餌付けして、タヌキを毎日のように長年観察しています。
個体識別もできているので、信頼できそうな情報です。


ナガコガネグモ(蜘蛛)の卵嚢



2015年11月上旬

最上川に注ぐ小さな水門の隅にナガコガネグモ(Argiope bruennichi)の卵嚢を見つけました。
卵嚢の上端が開いているのは正常なのかな?(出嚢後の古い卵嚢である可能性は?)
採寸代わりに右手の人差し指を並べて映し込みます。
卵嚢を周囲に固定する糸には粘着性がありませんでした。

越冬後に採集して飼育下で幼体の出嚢を観察するつもりでしたが、春になったら卵嚢は無くなっていました。
卵は卵嚢内で秋のうちに孵化し、そのまま越冬して、翌春に一回目の脱皮をした後に分散する[4]。(wikipediaより)
一度雪に埋もれて溶けた際に卵嚢も一緒に落ちてしまったのか、あるいは鳥が捕食したのでしょうか?


2016/05/08

雪国で疥癬タヌキの散歩を追跡すると…【前編】



2016年2月上旬

農村部で一頭のホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)が歩いていたので、追跡することにしました。
ビデオカメラを手に忍び寄ってみると、タヌキは針葉樹の根本をうろついています。
地面(雪面)の匂いを嗅ぎまわって食物を探し当てたようで、何かを口にしました。
雪面を歩き始めたタヌキを見ると、全身がずぶ濡れで毛並みがとても悪い個体です。
頻繁に身震いして、ボサボサで油気のない毛皮から水気を飛ばそうとしています。
明らかに病気のタヌキです。
この症状は疥癬にかかって毛が抜け始めたのですかね?(間違っていたらご指摘願います。)

撮影は2月ですから、タヌキの毛が冬毛から夏毛に自然と生え変わる換毛期(5〜7月)ではありません。
たんに老齢で脱毛している可能性もありますかね?

参考資料:「タヌキの脱毛症状(疥癬症)について(2010年7月暫定版)PDFファイル」

雪面に残るタヌキの足跡はフィールドサインの本に書いてある通りで、確かに狐と異なり左右の幅があります。
雪囲いされ冬は使われていないログハウスにタヌキは向かうと、その周囲をぐるっとひと回りしました。
一度は中に侵入しかけたものの、すぐ外に出てきました。

ログハウスを一周したタヌキが反対側の軒下で身震いしました。
私の方を見ても、さほど驚いた素振りはありませんでした。
衰弱しているのか、それとも本来タヌキは視力が弱いのかな?
タヌキは再び雪面を歩き始めました。
大木の根元で露出した地面の匂いを嗅いでから、また身震いしました。

私が急いで先回りして待ち伏せしていると、タヌキが右手から雪原を歩いて来ました。
除雪されて雪の無い舗装路に飛び降りると、道の真ん中の匂いを嗅いで立ち止まりました。
こちらを振り返ってもそれほど驚かず、トコトコと歩き去りました。

仮に目が悪いにしても、イヌ科の嗅覚で私の存在には気づいているはずです。
大胆なのかと思いきや、路上の枯葉が風で動いたのに反応して振り返りました。
やはり衰弱しているのか、あるいはよほど人馴れした個体なのではないかという気がしてきました。
建物の角を曲がるとスギ疎林の方へ向かい姿を消しました。

慌てて追いかけると、沢に近い杉の木の下でタヌキと再会。
地面が露出した林床の匂いを嗅ぎ、身震いしていました。
後で思うと、杉林にタヌキの溜め糞の有無を確認すべきでしたね…。
もしかするとタヌキは縄張りをパトロールしてから杉林に溜め糞(共同便所)をチェックしに来たのかもしれません。
実はタヌキは私の存在に気づいていて目を合わさないように木陰に隠れたり私をまこうとしているのかと思いきや、また戻って来ました。

左脇腹の毛が抜けているように見えますが、毛皮が水で濡れているだけなのか、素人目には分かりにくいです。
やっぱり疥癬症の軽症例なのかなー?

疥癬とは、ヒゼンダニ類のダニが皮ふに寄生しておこる、かゆみを伴った伝染性皮膚疾患である。タヌキから発見されたヒゼンダニは、センコウヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)であった。(中略)重篤な状態になったタヌキの大部分が、細菌の二次感染や冬季の体温維持不全などにより死亡する。
(現代日本生物誌3『フクロウとタヌキ:里の自然に生きる』p104より)
タヌキは雪原をどんどん歩いて車道の方へ向かっています。
果たしてどこへ行くのでしょうか?

つづく→後編(衝撃の結末を見逃すな!)

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


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