桑の木に営巣したコガタスズメバチ#1
2019年10月中旬・午後14:00頃・晴れ
台風一過で秋晴れの午後、河原に自生するヤマグワの灌木でコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)の巣を見つけました。
私がこれまで見てきたコガタスズメバチの巣にしては珍しく、外被が白っぽいのが印象に残りました。
巣材に何の樹皮を使っているのでしょう?
数日前に縦断した台風19号による増水は引いたものの、辺りの河畔林がほとんどなぎ倒されていました。
荒廃した河原で、運良くこの桑の木だけが無傷でぽつんと残っていました。
台風の前、この辺りはちょっとした藪になっていたはずです。
夏の間に私はここを何度も通りかかっているのに、スズメバチの巣の存在に全く気づかなかったのが我ながら悔しいです。
(蜂屋としての修行が足りません…。)
複数のワーカー♀(または新女王?)が巣に出入りしていました。
しかし外被を増築して巣を拡張する工事(造巣)はもうやっていませんでした。
外皮の真横に開いた巣口を狙って動画を撮っていると、ワーカー♀が続けざまに帰巣しました。
肉団子や巣材を搬入したかどうか、この撮影アングルでは不明です。
外役のために巣から飛び立つ個体もいました。
(片方の触角が途中で欠けている個体がいます。@0:55)
出巣の際に巣の位置を記憶するための定位飛行を一度もやりませんでした。
コガタスズメバチの巣では通常、門衛が自らの顔で巣口を塞いで外敵が侵入しないよう常に見張っているはずです。
ところが、この巣は営巣末期で人員不足なのか門衛が不在の時間が長く、巣口ががら空きになっていました。
ただし巣口を正面から撮れず門衛が見えなかっただけかもしれません。
巣に出入りする蜂の羽ばたきを240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみましょう。(@1:38〜)
入巣の瞬間をスローモーションで見直しても、巣材や獲物の肉団子を巣内に搬入しているようには見えません。
(毎回、空荷で入巣しているようです。)
もし巣材の樹皮パルプを集めてきたのなら、一旦巣内に入った後で巣材を咥えたまま外被の外に出てきて新たに外被を増築し始めるはずです。
しかし外被上をウロウロと徘徊する個体をよく見ても、巣材を持っていませんでした。
新たに外被を増築することも無く、しばらくすると巣内に戻ってしまいました。(等倍速@4:35〜5:01)
一体何のために外被の外に出てきたのか不明です。(警戒?)
出巣するコガタスズメバチと入れ替わるように謎の昆虫が飛来して、巣の手前の桑の葉に止まりました。(@2:13)
残念ながらアングルがいまいちで動画の解像度も低く、虫の正体は不明です。
スズメバチの巣に寄生する好雀蜂性昆虫(註:しぐま造語)だとしたら面白いのですが、桑の葉に着陸した後は全く動かなかったので、たまたま飛来した昆虫なのでしょう。
少し離れたところから撮影する私をコガタスズメバチ♀が攻撃してくることは全くありませんでした。
撮影マナーを守っていれば刺したり威嚇してくることはないと分かっているので、危険を感じることもなくリラックスして撮影しました。
樹皮のパルプと蜂の唾液を混ぜただけの巣材で作り上げた軽い蜂の巣が台風19号(およびそれ以前の台風)による未曾有の大雨と強風に耐えたことになり、改めて驚異の建造物であることを実感しました。
巣が剥き出し状態で風雨に晒されていたのではなく、周囲の枝葉によって多少は守られていたこともあるでしょう。
桑の枝葉が折れずに暴風雨をしなやかに受け流したことも重要です。
それを見越したかのように営巣地を適切に選択したコガタスズメバチ創設女王の慧眼が光ります。
造巣行動も自然淘汰の試練に耐えた進化の産物なのです。
これからコガタスズメバチのコロニーが解散するまで定点観察に通ってみることにします。
桑の木が落葉するとますます蜂の巣が丸見えになるので、今にも駆除されてしまいそうで心配です。
攻撃性は乏しいので刺激せず放っておいてくれたら良いのですが、スズメバチの習性を知らずに無闇に怖がる一般人が駆除業者に通報したらお終いです。
つづく→#2:桑樹上の巣から飛び出すコガタスズメバチ♀
コガタスズメバチ♀@帰巣:ヤマグワ樹上 |
コガタスズメバチ♀@出巣:ヤマグワ樹上 |
コガタスズメバチ巣@ヤマグワ樹上 |
コガタスズメバチ巣:裏面@ヤマグワ樹上 |
コガタスズメバチ巣@ヤマグワ樹上・全景 |
コガタスズメバチ営巣木:ヤマグワ・全景 |
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