2018年9月中旬・午前9:06〜9:11
雨上がりの朝、道端に咲いたツユクサの群落でホソヒラタアブ♀(Episyrphus balteatus)と思われる虻が訪花していました。
花の手前で見事なホバリング(停空飛翔)をしばし披露してくれました。
ようやく花に着陸すると、長く伸びたO字形雄しべの葯を口吻で舐めています。
青い花弁に一番近くに位置する3本のX字形雄しべは「仮雄蕊」または「仮雄しべ」と呼ばれ、葯が発達せず本来の生殖機能をもたない雄しべなのだそうです。
黄色いX字形雄しべは青い花弁との対比でよく目立つので、訪花昆虫を呼ぶ蜜標のような目印として働いているのだそうです。
この映像でもホソヒラタアブ♀は、ツユクサの仮雄しべを少し舐めただけで花粉が無いことに気づいたようです。
その手前の黄色いY字形雄しべを時間をかけて舐めています。
Y字形雄しべの花粉を摂食しようとすると、花弁から下に長く伸びたO字形雄しべと雌しべがホソヒラタアブの胴体(腹部の下面)に擦り付けられ、このときに他家受粉が成立するのでしょう。
植物学の本の字面を読んでいるだけでは用語が難しくてさっぱり頭に入りませんが、自分で撮った映像と見比べると、とてもよく分かりました。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
【参考ブログサイト】物臭狸の 花日記
ツユクサ ~花のしくみ~
【参考書】
『花の自然史―美しさの進化学』第16章 森田竜義、濁川朋也 「花の性型の可塑性:雄花を咲かせるツユクサの不思議な性表現」
・1株に雄花と両性花が存在する性表現型を雄性両全性同株(andromonoecy)というが、ツユクサはその代表的な例なのである。 (p227より引用)
・ツユクサの花には蜜腺がない。訪花昆虫に報酬として提供するのは花粉のみということになる。花粉報酬花と呼ばれるこの性質 (p229より)
・ツユクサの花は一日花である。早朝5時半ごろに咲きはじめ、6時半ごろ満開となるが、午前10時には花弁がしおれはじめ、午後1時にはほとんどの花が終わってしまう。6時間ほどのきわめて短いあいだしか咲かないのである。
・ツユクサは他家受粉花の特徴をもつ同花受粉花というふしぎな花なのである。(p240より)
・ツユクサは主として自家受精によって種子生産を行なうからこそ、わずかな他家受精のチャンスをつくりだすために、両性花の大きな花弁は仮雄ずい、さらには雄花に大きな投資をしていると考えられる。(p242より)
機会があれば、ツユクサの開花と、訪花昆虫に頼らず自家受粉する様子(O字形雄しべと雌しべを巻き込みながらの閉花)を、微速度撮影してみたいものです。
ホソヒラタアブsp♀@ツユクサ訪花+ホバリング |
ホソヒラタアブsp♀@ツユクサ訪花+ホバリング |
ホソヒラタアブsp♀@ツユクサ訪花+ホバリング |
ホソヒラタアブsp♀@ツユクサ訪花+ホバリング |
ホソヒラタアブsp♀@ツユクサ訪花+花粉舐め |
ホソヒラタアブsp♀@ツユクサ訪花+花粉舐め |
ホソヒラタアブsp♀@ツユクサ訪花+花粉舐め |
ホソヒラタアブsp♀@ツユクサ訪花+花粉舐め |
ホソヒラタアブsp♀@ツユクサ訪花+花粉舐め |
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