2023/01/23

晩夏の昼間にスギ林道を行き交うニホンカモシカ【トレイルカメラ】

 



2022年8月下旬 

トレイルカメラで監視している里山のスギ林道を行き交うニホンカモシカ(Capricornis crispus)の記録です。 
明るい日中に登場した3回分をまとめました。 

シーン1:8/27・午後14:14・気温24℃ 
カメラの起動が遅れ、登場シーンが撮れていません。 
どうやら、画面奥にある斜面を登って来たようです。 
無風なのに、カモシカが通った直後には下草が揺れています。 
逆に、揺れている下草をつなぐとカモシカの通過経路を推理することが出来ます。 

タヌキとアナグマの溜め糞場sを跨ぐようにカモシカは林道を横断し、画面手前の死角に消えました。 
林道脇の法面斜面にある獣道を登ったようです。 
逆側からのアングルで狙う別のトレイルカメラを最近まで設置していたのですが、新たに気になる地点が見つかったので、撤去しました。 
少数の監視カメラでやり繰りするのは大変です。 


シーン2:8/29・午後12:55・気温22℃ (@0:08〜) 
林道を右から左へ通過しました。 
角が細く、体格が華奢なので、未だ若い個体のようです。 


シーン3:8/31・午後17:07・気温25℃ (@0:19〜) 
珍しくカモシカが画面の下端から登場しました。 
もし林道脇の法面斜面を降りてきたのなら、トレイルカメラのセンサーの反応がもっと遅れたはずです。
おそらく左から林道の右端を歩いて来たので、カメラに映らなかった(死角)のでしょう。 
ニホンカモシカは林道を横断すると、対面に立つスギ大木の横で立ち止まりました。 
そこに生えたコシアブラ幼木の細い枝に顔を擦り付けて眼下腺マーキングしたようです。 
肝心の顔上部が画角から切れてしまっています。 
その後、カモシカは林道を右へ立ち去りました。 

映像では下り斜面の少し奥に育つスギの細い幹にマーキングしたように見えるかもしれませんが、それは遠近感に乏しい監視動画による錯覚です。 
この撮影アングルでは対面のスギ大木の幹(胸高直径60.5cm)の陰に隠れてコシアブラ幼木が見えないだけです。 
後日、トレイルカメラの設置アングルを調節して、問題のコシアブラ幼木が見えるように変更しました。 
説得力のある眼下腺マーキング動画が撮れるでしょうか? 

今のトレイルカメラは安価で、設定した通り愚直に撮影してくれるものの、画角の点で一切融通が効かないのが困りものです。 
近未来のトレイルカメラはAIを搭載し、被写体を自動で追尾するためにカメラの向きがぐりぐり動けるように進化して欲しいものです。



羊歯の葉を伝って逃げるニホンカナヘビ

 

2022年8月下旬・午前10:25頃・晴れ 

前回の記事(11日前の撮影)▶ 羊歯の葉の上で日光浴するニホンカナヘビ幼体 

里山の林道沿いに生い茂るシダ(種名不詳)の葉にニホンカナヘビ(Takydromus tachydromoides)の成体が乗っていました。
私がマクロモードで接写しながらレンズをそっと近づけると、シダの葉を渡り歩いて素早く逃走しました。

苦手なシダの種類を見分けられるように、これから少しずつ勉強していきます。

2023/01/22

林道を掘り返した採食跡は誰のしわざ?【ニホンイノシシまたはニホンアナグマのフィールドサイン】

 

2022年8月下旬・午前9:35頃・晴れ 

里山の山腹を通るほぼ平坦な林道で不自然に土を掘り返した形跡がありました。 
現場はスギの植林地と雑木林に左右を挟まれた林道です。
下草が生い茂る林道の地面が浅く広範囲に掘り返されています。
土は乾いていて、鮮明な足跡・蹄跡は残されていませんでした。
ここは私が夏によく通った林道なので、最近新たに出来た掘り返しで間違いありません。 

私は初め、ニホンアナグマ(Meles anakuma)がミミズを捕食した跡なのかと想像しました。 
金子弥生『里山に暮らすアナグマたち: フィールドワーカーと野生動物』という本を読んだばかりだったからです。
アナグマにとっては、ミミズの潜んでいる坑道を掘ってミミズを一匹ずつさぐりあてるよりも、ミミズの地表活動が行われるところに行って、ミミズが地表に出ているときに採食を行うほうが効率が良い。ミミズの地表活動が行われる場所はその日の湿気に左右される。(中略)このミミズパッチは季節ごと、数日ごとに位置が変化する。(中略)ミミズパッチを見つけ出したアナグマは、一分あたり2〜3匹のミミズを採食することができるため、口を地表につけたまま掃除機のようにミミズを食べながら直線に進み、パッチの端までくると方向転換してパッチ内の別の直線を進み、一時間程度で要求量が満たされて採食が終了する。(p119-120より引用)
ただし、これは著者が留学先のイギリスでなされたフィールドワークに関する文脈ですが、ニホンアナグマも同様と想像されます。
ミミズ捕食の際に地面に穴を全く掘らずに吸い込むだけなのだとしたら、以下の考察は私の誤読によるものです。 

しかし、熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』でアナグマの食痕について調べると、全く違うことが書いてありました。
アナグマの最も目立つフィールドサインといえば、林道脇やササやぶの中などで見つかる、地面に空いたお椀状の食痕だ。これは落葉や土に鼻先を突っ込み、ミミズ類など土壌動物を掘り出した跡で、鼻先を中心に円を描くように探ったことによるもの。(p67より引用)
むしろ、ニホンイノシシ(Sus scrofa leucomystax) の食痕と酷似しています。
イノシシのフィールドサインといえば、派手に掘り返された食痕だ。休耕田やタケ林、畑や田んぼなどでよく見られる。(中略)林道のわだちで食べ物を探した跡。(同書p80〜81より引用)

ちなみに、今泉忠明『アニマルトラック&バードトラックハンドブック』p106では「イノシシのラッセル痕」と題したイラストで採食行動を描いています。
イノシシが鼻面で落葉をかき分け地面を浅く掘りながら前に進み、溝を掘っているイラストです。
動画の現場は掘り返した後に雨水が溜まっていないので、イノシシがヌタ場を作ったのではありません。

著者の業績を私はもちろんリスペクトしていますが、「〇〇の食痕」と題した写真の根拠について聞きたくなります。
果たしてどれだけがトレイルカメラによる証拠写真(または動画)によって裏付けられているのか、気になります。
「採食行動を描いたイラストは、ただの想像図(筆者の仮説、妄想、ファンタジー)ではないのか?」と疑い深い読者が意地悪な質問をしたときに、どのように反論するのでしょう? 
フィールドあるいは飼育下で採食シーンを直接観察した直後に食痕の写真を記録したのであれば、文句はありません。 
好意的に解釈すれば、おそらく2冊の本は共に部分的には正しくて(不完全)、アナグマは状況に応じて両方の採食行動をするのかもしれません。 

この掘り返しは一体誰のしわざなのでしょう?
本に頼って袋小路に陥り、あれこれ悩むよりも、監視カメラを設置して自分で真相を突き止めるべきですね。
現場に足跡があれば、簡単に解決する問題なのですけど…。
アナグマお気に入りのミミズパッチなのであれば、繰り返しやって来るはずです。
残念ながらトレイルカメラを買い足す予算が足りず、今季は実現しませんでした。
(トレイルカメラを設置しにくい場所という事情もあります。)
その後も定点観察に通うと、林道の下草が再生してからしばらくすると、また同じ地点が掘り返されていました。 
つまり、謎の野生動物による採食頻度は低い印象です。
カメラトラップ調査の結果、当地でイノシシの生息密度は未だ低いと推察しています。
つまりイノシシの採食痕でも一応辻褄は合います。
誰かヒトが山菜を掘り出した跡だとしたら、何度も掘り返す必要はないはずです。



【追記】
ポケット版学研の図鑑9『フィールド動物観察:足あと、食べあと、ふん』でも調べてみました。
 イノシシは、草の葉やくき、球根や根、いもや、地面にいる昆虫や落ちている果実やドングリを食べます。(中略)土をほりかえしたあとは、とてもよく目立ちます。
 きばと鼻の先を使ってほりおこしますが、まるでトラクターでほりおこしたようになります。(中略)はば1m以上になるようなあなもあります。 (p48より引用)

「アナグマがほったあな:土をほって、アリやミミズをさがしたあとです。」と題したカラー写真もp47に掲載されていました。

私が見つけた掘り返しは、どうやらイノシシの採食痕だったようです。

 




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