2018/02/08

キタキチョウの交尾拒否?(誤認求愛?)



2016年9月下旬

休耕田の草むらでシロチョウ科の2頭が低空で飛び回り追いかけっこをしていました(追尾飛翔、求愛飛翔)。
求愛を繰り返している黄色い翅の個体は、キタキチョウ♂(Eurema mandarina)のようです。

一方、白い翅の個体がどうしてもしっかり同定できませんでした。
(どなたか映像で見分けられる達人がいらっしゃいましたら、ぜひとも教えてください。)
スロー再生で何度も見直してみたのですが、終始ピントがしっかり合わず、もどかしい限りです。
白い蝶は飛んで逃げ回るのを止めて草むらに降り立ち、アメリカセンダングサの花蜜を吸い始めました。
キタキチョウ♀の翅は♂よりも黄色が薄いらしいのですが、こんなに真っ白に見えるものなのでしょうか?
(翅を斜めから見ているので光の加減で白っぽく写っているだけ?)
その背後でキタキチョウ♂がホバリングのように羽ばたいて求愛しても、白い蝶は閉じた翅を素早く少しだけ開閉して交尾拒否しました。(※追記参照)
やがてキタキチョウ♂は諦めて飛び去りました。
(したがって縄張りから追い出す行動ではありません。)

白い蝶がキタキチョウ♀だとすれば、♂の求愛と♀の交尾拒否というストレートな解釈になります。
しかし白い蝶はモンキチョウ♀またはモンシロチョウのようにも見えるので、キタキチョウ♂が異種に対して誤認求愛したことになり、興味深く思いました。
シロチョウ科でも属レベルで違う種類の蝶に対して果たして誤認求愛するのかな?

黄色と白という2色の蝶の追いかけっこを見つけたとき、初めはモンキチョウの求愛飛翔かと思ったのでした。
モンキチョウの求愛飛翔では、逃げる♀の前に♂が回り込んで上昇するという動きをグルグルと繰り返すことが知られています。

▼関連記事 
モンキチョウ♀♂の求愛飛翔【ハイスピード動画】
ところが、今回の映像でキタキチョウ♂は白い蝶が逃げて行く後をただ追いかけるだけでした。

この後、ふられたキタキチョウ♂を追いかけた私は、近くのミゾソバの群落で訪花吸蜜したのを観察しています。
キタキチョウに特有の翅裏にある斑点模様を確認しました。(映像公開予定?)
むしろ白い蝶の正体を突き止めるべきでしたね。(アングルを少し変えて訪花シーンをしっかり撮るだけで良かったのに…。)


「キタキチョウの求愛」でネット検索してみると、公開された情報は少ないようですが、見事な生態写真を掲載したブログを見つけました。
はばたき「第二部 キタキチョウの求愛飛翔」(by Favoniusさん)
撮影アングルによってキタキチョウ♀の翅はクリーム色というよりもかなり白っぽく見えることがあるようです。
モンキチョウの求愛飛翔とは飛び方が違うのだそうです。

一方、YouTubeで検索してみると、唯一yomaturi1さんの動画「キタキチョウ探雌行動2」がヒットしました。

はっきりしたことは、覚えていませんが、この藪の中に蛹があり、その蛹を探して飛翔しています。雌雄の区別は出来ないようで、オスの蛹にも集まります。
とのコメントを頂きました。
キタキチョウは羽化直後の飛べない♀に♂が集まって交尾することもあるようです。
そのような観察例がFavoniusさんのブログ記事「第三部 キタキチョウの強制求愛」に報告されていました。



▼関連記事(4年語の撮影)
羽化直後のキタキチョウ♂にしつこく誤認求愛する♂の群れ



※【追記】
交尾拒否するキタキチョウ♀の写真を拝見すると、翅を大きく広げながら腹端を高々と持ち上げていました。
私の動画では斜めから見たアングルでわかりにくいのですが、そのような明確な交尾拒否ではありませんでした。
やはり異種間の出会いだったのでしょうか?



【追記2】
浅間茂『カラー版 虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略 』(中公新書)によると、
シロチョウ科のキタキチョウは♂の黄色い部分が紫外線を反射し、♀は吸収した。(中略)このキタキチョウの♂の翅は撮影する角度によってその紫外線反射量が変化した。これは構造色の発色のしかたと似ている。 (p24より引用)

・♂のキタキチョウはモルフォチョウと同じ構造で紫外線だけを反射している。それも少し角度が変わるだけで大きく変化する。(中略)キタキチョウは紫外線反射により、互いに雌雄を容易に見極めている。 (p25-26より引用)
私も紫外線で動画が撮れるカメラが欲しくなりました。


ウドの花蜜を吸うエントツドロバチ♀



2017年8月下旬

道端に植えられたウド(独活)の株でエントツドロバチ♀(Orancistrocerus drewseni)が訪花していました。
忙しなく吸蜜しています。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。



2018/02/07

屋根裏の巣に出入りするチャイロスズメバチ♀の羽ばたき【ハイスピード動画】



2016年9月下旬
▼前回の記事
チャイロスズメバチの巣に近づく謎の寄生?ハエ【ハイスピード動画】

破風板の裏側に営巣したチャイロスズメバチVespa dybowskii)のワーカー♀が飛び回り帰巣、出巣を繰り返す様子を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
帰巣の際に獲物や巣材を搬入しているシーンは別の記事にまとめておきました。

▼関連記事
肉団子や巣材を巣に搬入するチャイロスズメバチ♀【ハイスピード動画】

今回の映像はそれ以外のシーンです。
実は、空荷で巣に出入りしていることがずっと多いのです。
巣のある建物の真下で私が立って撮影しているので、警戒したワーカー♀が私を偵察・威嚇に来ていました。
つまり、この映像は平時の状態ではないかもしれません。(観測者問題)

また、出巣しても空中で旋回しただけですぐ破風板に戻って来る個体がいました。
外役の経験の浅いワーカー♀が出巣の前に巣口の位置をしっかり記憶するために定位飛行を繰り返してしているのかもしれません。
その場合は、巣の方を向いてホバリングしながら扇状に、少しずつ大きな弧を描くように飛ぶはずです。
引きの絵(広角)で撮っていないため、この映像からは定位飛行かどうか区別がつきません。

初めに説明したように、今回の撮影の目的としては、巣材または肉団子を巣に搬入する瞬間をハイスピード動画で記録したかったので、寄りの絵にしていたのでした。

素人目には、未熟なワーカー♀による飛行訓練、あるいはコロニー全体が警戒中(やや興奮状態)、という印象を受けました。

帰巣する個体と出巣する個体が空中で衝突し、もつれ合うように落下しました。(@0:23)
敵が飛来したと誤認して門衛が迎撃したのか、それとも偶然の事故(空中のすれ違いに失敗)なのか、分かりません。

熱が篭った巣内を冷却するために門衛の一部が羽ばたく扇風行動は見られませんでした。
巣口の周囲で歩き回りながら羽ばたいていた個体もすぐに飛び立ってしまいます。(出巣)
ところが破風板に少しズームインしてみると、画面上端付近で扇風行動をしている個体を一匹見つけました。(@6:16〜6:50)
巣口から外に向いて立ち止まったまま羽ばたき続けています。
これがもし本当に扇風行動なら、外気を巣内に送り込んでいることになります。
現場ではこの個体に気づかなかったので、気温を測るのを忘れてしまいました。
現場は特に暑かった記憶がありませんし、鎮守の森(スギ林)に囲まれているので、少なくとも私には過ごしやすい気温だった(あまり暑くなかった)と思います。
別種ですがコガタスズメバチやキイロスズメバチでは、気温が30℃を越えると扇風行動が発動されることをこれまでに観察しています。
この個体が本当に扇風行動をしたのか、離陸前の準備運動として羽ばたいていただけなのか、気になるところです。(※追記参照)
しかしすぐに撮影を打ち切ってしまったので、残念ながら分からずじまいです。
1/8倍速のスローモーションで34秒間ということはリアルタイム(実時間)ではたった4.25秒しか羽ばたきが記録されておらず、とても扇風行動だと言い切れません。

扇風行動ならもっと長時間(少なくとも数分間)、巣口の近くで羽ばたき続けます。
とりあえず、扇風行動は今回無かった、ということにしておきます。



※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。




【追記】

動画編集前のオリジナル素材を見直してみました。
巣口から出てきて破風板で扇風行動のように少し羽ばたいていた個体Aは、羽ばたきを止めて隣の個体Bと栄養交換の口づけを交わしていました。
そこへ帰巣した別個体Cが飛びついて、♀Aの出巣衝動はうやむやになってしまったようです。


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