2020年9月下旬・午前9:50頃・くもり
里山の林道沿いの草むらで数頭のキタキチョウ(Eurema mandarina)が何やら思わせぶりに飛び回っていました。
メドハギの群落で翅をしっかり閉じて止まった♂aが、葉に止まっています。
マメ科のメドハギはキタキチョウの食草のひとつです。
飛来した他の♂が♀と誤認して求愛する度に、♂aは閉じた翅を軽く羽ばたかせています。
交尾拒否の意思表示というよりも、自分も♂であることを相手の♂にアピールしているのでしょう。
シロチョウ科の♀は交尾拒否の際に腹端を持ち上げますが、♂aはそれをしませんでした。
キタキチョウの♀なら、翅の色がもっと白っぽいはずです。
♂aが訪花吸蜜中なのか、産卵中の♀なのか、初めはよく分かりませんでした。
私が近づいてよく観察してみると、♂aはどうやら羽化直後の個体らしく、黄色い蛹の抜け殻(羽化殻)にしがみついていました。
伸ばし終えたばかりの翅が乾くのを待っているようです。
羽化したばかりの♂aの周囲を別個体の♂が飛び回ったり、真上でホバリングしたりして、求愛しています。
複数の♂が入れ代わり立ち代わり飛来して、結構しつこく♂aにアタック(求婚)しています。
それにしても、どうして♂同士で求愛(同性愛)してしまうのでしょうか?
キタキチョウ♀は羽化直後に♂を呼ぶ性フェロモンを放出(コーリング)しないのかな?
なぜ誤認求愛にすぐ気づけずにしつこくアプローチしてしまうのか、不思議です。
探雌飛翔中の♂は、羽化直後の同種個体に性別問わず誘引されるのかもしれません。
羽化直後の個体からは羽化液(蛹便)など特有の匂いがするのでしょう。
それとも♂は同種の蛹そのものを見ると強く惹かれるのかな?
浅間茂『カラー版 虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略 』という中公新書によれば、
シロチョウ科のキタキチョウは♂の黄色い部分が紫外線を反射し、♀は吸収した。(中略)キタキチョウは紫外線反射により、互いに雌雄を容易に見極めている。 (p24-26より引用)
羽化直後の鱗粉は性差がはっきり現れないのでしょうか?
あるいは曇天時には区別しにくいとか?
私も紫外線カメラで確かめてみたくなります。
撮影しながら私が横にずれたら、ようやく♂aが抜け殻から飛び立ちました(羽化直後の初飛行!)。
羽化後の♂aは花蜜を摂取して栄養補給するのかと思いきや、ハッカの花で吸蜜中の別個体♂cに対して背後から迫り、誤認求愛しました。
訪花中の♂cも閉じた翅を軽く開閉して交尾拒否の意思表示。
誤認求愛の連鎖が起きていることになり、♂の業の深さを感じました。
この日の山行では数多くのキタキチョウと遭遇しました。
キタキチョウも他の多くの昆虫と同じく雄性先熟だとすれば、この時期の成虫は♂ばかりなのかもしれません。(性比の偏り)
分かりやすく言うと、深刻な嫁不足なのでしょう。
♀が羽化してくるまでの間、♂同士で配偶行動の練習をしているのかな?
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