2017/09/13

ジギタリスに正当訪花して採餌するクロマルハナバチ♀



2017年6月中旬
▼前回の記事
ジギタリスの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀

道端の畑の隅に咲いたジギタリス(=キツネノテブクロ)の群落で、セイヨウミツバチの他には、クロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀も訪花していました。

マルハナバチの仲間では舌の短いクロマルハナバチは、穿孔盗蜜の常習犯として有名です。
ところが今回は、ジギタリスの花でいつも律儀に正当訪花していて意外でした。
花筒に潜り込めないほど大型の♀(創設女王またはワーカー)なら穿孔盗蜜したはずです。

複数個体を撮影してみると、後脚の花粉籠に橙色の花粉団子をつけた個体がいました。
胸背が白い花粉で汚れている個体は、花筒に潜り込むときに雄しべの葯に触れて花粉が付着したのでしょう。
(ジギタリスの花粉は白なのか橙色なのか? ネットで画像検索すると白〜橙色のようです。)

私がこれまで本で学んできた知識からすると、「同じ蜜源植物に対してミツバチが盗蜜して、体がより大きなクロマルハナバチが正当訪花する」という現象は理解に苦しみます。(あべこべの世界!)
盗蜜していたセイヨウミツバチは自分で花筒の根本を噛んで穿孔したのでしょうか?
苦し紛れのシナリオですが、大型のクロマルハナバチ創設女王が穿孔し、後になってその穴をミツバチが二次盗蜜者として利用していただけかもしれません。
最近羽化したクロマルハナバチのワーカー♀は創設女王よりも小型なので、花筒に潜り込んで正当訪花できている、と考えれば一応は説明がつきます。
クロマルハナバチも花筒の穿孔の存在に気づけば、学習して盗蜜するようになるかもしれません。
穿孔盗蜜の常習犯であるクマバチの姿を今回は1匹も見ていませんが、二次盗蜜者として他にも大型のクマバチ♀が怪しいですね。
別の可能性として、クロマルハナバチのワーカーはコロニーの食糧事情から今はたまたま花粉を必要としていて、(盗蜜しようと思えばできるけれども)今回は正当訪花で花粉集めに専念しているのかもしれません。
マルハナバチは巣の育房を作るのにも花粉が必要なのです。
しかし、この日は午後に2時間40分の間隔を開けて2回観察しても、2種の採餌行動はそれぞれ変わりませんでした。
これらの仮説をどうやったら実証できるか?、となると私には良いアイデアが浮かびません。
とりあえずジギタリスが開花したばかりの頃にしっかり観察して、一次盗蜜者の正体を突き止めるのが肝心でしょう。

自然観察は一筋縄ではいかないのが面白いですね。
本に書いてある単純な知識では説明できない(例外的な?)現象に遭遇して、あれこれと思索を巡らせるのが、フィールドに出かける醍醐味です。

▼関連記事(4年前の撮影)
ジギタリスに訪花するトラマルハナバチ♀
このときは正当訪花していました。
舌の長いトラマルハナバチなら当然です。

余談ですが、これまでゴマノハグサ科とされてきたジギタリスが新しい植物分類体系ではオオバコ科に移動されていたことに驚きました。
植物ではゲノム解析や分子系統学の結果があまりにも我々の形態分類学的な直感に反することが多くて、戸惑ってしまいます。
それだけ植物の形態は収斂進化が多くて、マクロな形質は分類の当てにならないのかもしれません。
素人考えですけど、例えば分子時計の進み方が植物では一定ではない、とか何か重大な落とし穴を見落としているのではないでしょうか?
葉緑体のゲノムの一部がウイルスによって種を超えて水平感染してしまうとか?
(勉強不足なので、迂闊なことは言えません。)


正当訪花するクロマルハナバチ♀と穿孔盗蜜するセイヨウミツバチ♀

2017/09/12

巣で羽ばたく練習を始めたハシボソガラスの雛(野鳥)



高圧線の鉄塔#21でのハシボソガラス営巣記録#5



2017年6月上旬・午後17:07〜17:34

定点観察の間隔が開いてしまいました。
13日ぶりに巣の様子を見に来たら、ハシボソガラスCorvus corone)の雛がだいぶ育っていました。
抱雛の必要がなくなった親鳥は、つがいで採餌にでかけています。(共稼ぎ)
親鳥を待っている留守中に、夕方で暗くなってきた空を背景にして、雛が巣で立ち上がって羽ばたき練習をしていました。
この巣では初見の行動です。
巣立つまでに飛翔筋の筋力をつけなければいけません。
映像の後半は、雛が自分で羽繕いしています。

今度こそ、なんとか雛の巣立ちまで見届けたいものです。

※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。(実際はもっと薄暗い)

つづく→#6:巣に通って雛に給餌するハシボソガラスの親鳥(野鳥)



ジギタリスの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀



2017年6月中旬

道端の畑の隅に咲いたジギタリス(=キツネノテブクロ)の群落でセイヨウミツバチApis mellifera)のワーカー♀が訪花していました。
この春はなぜか昆虫の活動が激減していて心配しましたが、ようやくミツバチの個体数がフィールドで増えてきた(回復してきた)印象です。

ジギタリスの筒状の花の入り口は太いのでミツバチは容易に潜り込めるはずなのに、花筒の根元を外から食い破って(?)蜜腺を舐めていました。
このような採餌行動は盗蜜と呼ばれ、花の授粉に関与しません。
ミツバチの体に雄しべの花粉が全く触れないので、後脚の花粉籠が空荷なのは当然です。

盗蜜行動は学習を要するのだとすれば、外役に出たばかりの若い未熟なワーカーは正当訪花する気がします。
ところが私が見る限り、どの個体も決して正当訪花せずに盗蜜ばかりしています。(複数個体を撮影。)
萎れかけの花に対しても盗蜜していました。

ミツバチの盗蜜行動は以前も観察していたので、それほど珍しくはありません。

▼関連記事
ヒレハリソウの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀
サルビア・ガラニチカの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀
ブルーサルビア?の花で盗蜜するニホンミツバチ♀

花筒が狭くて入りにくい花なら盗蜜しても仕方ないのですけど、今回は花筒が太いジギタリスでわざわざ盗蜜していたので意外に思ったのです。

ジギタリスの花壇で初めに穿孔したのはおそらく盗蜜の常習犯として悪名高いクロマルハナバチで、ミツバチはその穴を利用する二次盗蜜者だろうと予想しました。
ところが、この花壇でしばらく観察していると、とても意外な展開になりました。

つづく→あべこべの世界(ジギタリスに正当訪花して採餌するクロマルハナバチ♀




【追記】
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』によれば、
ミツバチは、マルハナバチのどの種よりも短舌であるが、自分の舌の長さに応じて訪花植物を選定するので、盗蜜はほとんどみられない。 (p150より引用)



【追記2】
岩田久二雄『自然観察者の手記3』で「盗蜜」と題した章を読んでみると、1948年に庭のジギタリスを訪花する蜂について記録を残しています。
クマバチ以外の10種の蜂は、正常な様式で筒状花の中に頭からもぐりこんで吸蜜するのであったが、花筒の基部上面にクマバチのあけた小孔のある花にくると、ミツバチとクロマルハナバチと、コハナバチの一種だけは、花筒の中に入らずにその背面にまたがって、クマバチの舌の傷跡から舌をさしこんで、盗蜜をするのであった。クマバチの頻訪で傷跡のある花筒が多くなるにつれて、これら3種の盗蜜度も次第に大きくなった。それはどうやら傷口からの花蜜の匂いが、花の筒口からの匂いよりも、手早く彼らを惹きつけるように見えた。(p158より引用)
それに対して、「(ハキリバチやヒゲナガハナバチ類など)単独性の花蜂は盗蜜は行わないのではなかろうか」という仮説を立てています。
筆者は狩蜂の専門家なのですが、そのためか「花蜂の盗蜜行動には資料が少ない」とぼやいているのが印象的でした。(p157より)



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