2017年6月中旬
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ジギタリスの花で盗蜜するセイヨウミツバチ♀
道端の畑の隅に咲いたジギタリス(=キツネノテブクロ)の群落で、セイヨウミツバチの他には、クロマルハナバチ(Bombus ignitus)のワーカー♀も訪花していました。
マルハナバチの仲間では舌の短いクロマルハナバチは、穿孔盗蜜の常習犯として有名です。
ところが今回は、ジギタリスの花でいつも律儀に正当訪花していて意外でした。
花筒に潜り込めないほど大型の♀(創設女王またはワーカー)なら穿孔盗蜜したはずです。
複数個体を撮影してみると、後脚の花粉籠に橙色の花粉団子をつけた個体がいました。
胸背が白い花粉で汚れている個体は、花筒に潜り込むときに雄しべの葯に触れて花粉が付着したのでしょう。
(ジギタリスの花粉は白なのか橙色なのか? ネットで画像検索すると白〜橙色のようです。)
私がこれまで本で学んできた知識からすると、「同じ蜜源植物に対してミツバチが盗蜜して、体がより大きなクロマルハナバチが正当訪花する」という現象は理解に苦しみます。(あべこべの世界!)
盗蜜していたセイヨウミツバチは自分で花筒の根本を噛んで穿孔したのでしょうか?
苦し紛れのシナリオですが、大型のクロマルハナバチ創設女王が穿孔し、後になってその穴をミツバチが二次盗蜜者として利用していただけかもしれません。
最近羽化したクロマルハナバチのワーカー♀は創設女王よりも小型なので、花筒に潜り込んで正当訪花できている、と考えれば一応は説明がつきます。
クロマルハナバチも花筒の穿孔の存在に気づけば、学習して盗蜜するようになるかもしれません。
穿孔盗蜜の常習犯であるクマバチの姿を今回は1匹も見ていませんが、二次盗蜜者として他にも大型のクマバチ♀が怪しいですね。
別の可能性として、クロマルハナバチのワーカーはコロニーの食糧事情から今はたまたま花粉を必要としていて、(盗蜜しようと思えばできるけれども)今回は正当訪花で花粉集めに専念しているのかもしれません。
マルハナバチは巣の育房を作るのにも花粉が必要なのです。
しかし、この日は午後に2時間40分の間隔を開けて2回観察しても、2種の採餌行動はそれぞれ変わりませんでした。
これらの仮説をどうやったら実証できるか?、となると私には良いアイデアが浮かびません。
とりあえずジギタリスが開花したばかりの頃にしっかり観察して、一次盗蜜者の正体を突き止めるのが肝心でしょう。
自然観察は一筋縄ではいかないのが面白いですね。
本に書いてある単純な知識では説明できない(例外的な?)現象に遭遇して、あれこれと思索を巡らせるのが、フィールドに出かける醍醐味です。
▼関連記事(4年前の撮影)このときは正当訪花していました。
ジギタリスに訪花するトラマルハナバチ♀
舌の長いトラマルハナバチなら当然です。
余談ですが、これまでゴマノハグサ科とされてきたジギタリスが新しい植物分類体系ではオオバコ科に移動されていたことに驚きました。
植物ではゲノム解析や分子系統学の結果があまりにも我々の形態分類学的な直感に反することが多くて、戸惑ってしまいます。
それだけ植物の形態は収斂進化が多くて、マクロな形質は分類の当てにならないのかもしれません。
素人考えですけど、例えば分子時計の進み方が植物では一定ではない、とか何か重大な落とし穴を見落としているのではないでしょうか?
葉緑体のゲノムの一部がウイルスによって種を超えて水平感染してしまうとか?
(勉強不足なので、迂闊なことは言えません。)
正当訪花するクロマルハナバチ♀と穿孔盗蜜するセイヨウミツバチ♀ |
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