2015/11/02

キボシアシナガバチの巣に寄生したトビスジアツバ♂(蛾)



2015年8月下旬

キボシアシナガバチ巣の定点観察@柳#16


コロニーが早期解散した後のキボシアシナガバチPolistes nipponensis)の巣を採集して密閉容器に隔離しました。
室内に放置して10日後の早朝、今まで見たことのない地味な寄生蛾が羽化してきてビックリ仰天。
前翅長11.5mm。

※ 映像で照明なしの薄暗い前半部は動画編集時に自動色調補正を施してあります。



いつもお世話になっている蛾像掲示板に投稿して問い合わせてみると、おそらくトビスジアツバ♂(Herminia tarsicrinalis)だろうとhitoriさんから教えてもらいました。

まさかヤガ科のアツバ類がアシナガバチの巣に寄生していたとは、意外な新発見でした。
これまでの知見では、Herminia属の幼虫は枯葉を食すらしい。
ちなみにトビスジアツバに近縁な(同じHerminia属)クロスジアツバの幼虫が枯葉以外にオトシブミ(おそらく葉を巻いた揺籃を指すのでしょう)を食べることがあるというのは、とても興味深く思いました。

今回の件でひねくれた解釈をすれば、柳の枯葉を食べて育ったトビスジアツバの終齢幼虫が蜂の空き巣にたまたま潜り込んで蛹化したのかもしれません。
しかし状況証拠からアシナガバチの巣を食害したと考えるのが自然だと思います。
蜂の巣を採集した際は細い巣柄をカットして古巣だけを採取しました。
柳の枝葉は飼育容器に全く入れておらず、枯葉の混入もあり得ません。
同種の蛾がもう一頭羽化してくれば寄生説が有利になるはずですが、古巣の飼育を続けても柳の下に二匹目のドジョウは居ませんでした。

今季定点観察してきたこのコロニーはなぜか早く解散してしまいました。
古巣をよく見ると、一部の育房の内部は寄生蛾の幼虫が張り巡らしたような不規則網で汚れていました。
また、巣盤の側面に幾つか虫喰い穴が開いていました。
今回の蛾が羽化したことで蜂の巣に新しい穴は開いていないようです。
別の可能性としては、寄生蜂が羽化して食い破ったり、野鳥がつついたり、天敵ヒメスズメバチに襲撃されたりして出来た穴なのかもしれませんが、私には分かりません。

実は古巣を採取した夜に、明らかに蜂の子とは異なる謎のイモムシが中で蠢いている気がしました。
飼育中に蛾の幼虫が蜂の巣を食害するシーンを動画に撮っていれば決定的な証拠になるのですけど、忙しくて手が回らないうちに蛾の成虫が羽化してしまいました。
これまで私のフィールドで採集したキアシナガバチおよびコアシナガバチの古巣から、寄生蛾としてカザリバガ科マダラトガリホソガの一種Anatrachyntis sp.を得ています。
今回もどうせマダラトガリホソガが羽化してくるのだろうと予想していたのです。
キボシアシナガバチのコロニーが早期に解散したのは、蛾の幼虫が巣に寄生したせいで逃去した(営巣地を変更した)のだろうと想像しました。

フィールドで採集したトビスジアツバ♀から採卵し、アシナガバチの巣を与えてトビスジアツバ幼虫が成虫まで育つかどうか確認できれば完璧でしょう。

YAMKENさんの助言に従い、食害された巣材について考察してみます。
キボシアシナガバチが巣材を集めるシーンは未だ直接観察できていません。
一般論で言うと、アシナガバチ類は木の樹皮を齧り取って唾液分泌物と混ぜたパルプで紙製の巣を造ります。
Polistes属のアシナガバチは死んだ木の繊維を巣材とすることが多いようです。
木の杭(木柱)とかベニヤ板、材木の表面などをよく齧っています。
アシナガバチの巣がセルロースを含むという点は、トビスジアツバ幼虫が好む枯葉と共通していそうです。
ただし、元々が木質なのでリグニンを枯葉よりもかなり多く含んでいるはずです。
これを食べて分解するには専門の消化酵素(または腸内細菌)が必要になる気がします。
樹皮や材を好んで食べるのでなければ、本来枯葉好きとされる幼虫がアシナガバチの巣を食べるのは考えにくい、と反論されるかもしれません。


食性の問題が解決しても、トビスジアツバ幼虫の体表がアシナガバチに化学擬態しているのか?という問題もあります。
スズメバチ科の巣に寄生する蛾は数種類知られていますが、その幼虫で不思議なのは、巣を食い荒らしても蜂に排除されないことです。
もし寄主に発見されれば直ちに殺され肉団子にされてしまいそうです。
キボシアシナガバチ成虫が別の原因で逃去(コロニー解散)した後でトビスジアツバ♀が空き巣に産卵したのでしょうか?
定点観察をさぼって謎の空白期間ができてしまったことが悔やまれます。




ところで、腹面の顔の下に伸びた一対の太い物体が何なのか気になりました。
前脚ではないと思うのですが、口器(顎?)の一部ですかね?
この疑問に対してもhitoriさんより以下のご教示を頂きました。

太い物体は前脚の一部だと思います。
クルマアツバ亜科には♂の前脚が太くなるという特徴をもつ種が結構います。トビスジアツバもその一種です。
写真では前脚が別にあるように見えたのですが、こんな太い前脚が♂だけにある(性的二型)なんて面白いですね。
♀をめぐる争いで♂同士が腕相撲でもするのかと思ったら、その実態は毛束なのですね。
きっとヘアペンシルみたいに性フェロモンを出すのでしょう。
求愛交尾行動を観察してみたいものです。



シリーズ完。


トリノフンダマシ(蜘蛛)卵嚢と隠れ家の♀



2015年8月下旬

トリノフンダマシ♀の定点観察#1


農地の用水路脇に生えたヤマグワの灌木でトリノフンダマシCyrtarachne bufo)の卵嚢を早朝の散歩中に見つけました。
球形の卵嚢が2個吊り下げられた近くを探してみると、予想通り桑の葉裏を隠れ家として♀が潜んでいました。
卵を食べる天敵が来たら♀はガードするのでしょうか?
同心円状の水平円網を夜に張るらしいのですが、既に取り壊さています。

この日は朝から台風が接近中で、強風のため撮影できなくなりました。
定点観察に通うことにしました。
台風が去るまでトリノフンダマシが居なくなりませんように!

▼関連記事(7年前!の同時期に撮影)
トリノフンダマシ♀(蜘蛛)と卵嚢


つづく→#2:トリノフンダマシ♀(蜘蛛)の造網準備(枠糸張り?)【暗視映像】


2015/11/01

キボシアシナガバチ古巣の虫喰い穴



キボシアシナガバチ巣の定点観察@柳#15

2015年8月中旬・午後20:02

前回からだいぶ間が空いて26日ぶりの観察になってしまいました。
キボシアシナガバチPolistes nipponensis)の巣は小さいままコロニーが解散していました。
在巣の蜂は一匹もおらず、もぬけの殻です。
動画を撮りながら柳の茂みをかき分けたら照明に驚いて逃げて飛び去った虫は、蜂ではなくガガンボです。
黄色の繭キャップは全て羽化済みでした。
少数ながらも新女王を産出したのかな?

巣盤をよく見ると育房の側面および天井部が何者かに食い荒らされているようです。
寄生蛾の幼虫に食害されたのか、寄生蜂が羽化した跡なのか、それともヒメスズメバチに襲撃されたのでしょうか?
古巣を採集して持ち帰りました。

つづく→#16:キボシアシナガバチの巣に寄生したトビスジアツバ♂(蛾)



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