2015/02/22

泥巣に出入りするケブカスジドロバチ♀の羽ばたき【ハイスピード動画】




2014年10月下旬


▼前回の記事
ケブカスジドロバチ♀の泥巣作り#2:接写

巣材集めのために出入りする蜂の離着陸を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
撮影時刻は午後12:27〜13:42。
よく晴れていて、マクロレンズでも光量は充分です。
飛んで来る蜂のシルエットが白壁に映って美しいですね。
カメラを固定したくても巣穴の場所が低過ぎて三脚が使えません。(地上8cm)
そこで途中からは畳んだ衣類をカメラの下に敷いて高さを調節しました。
蜂が帰って来たときに録画開始ボタンを慌てて指で押すとぶれるので、リモートレリーズを使いました。

巣材の泥玉を抱えて帰巣した蜂は巣穴の前で軽くホバリング(停空飛翔)してから白壁に着陸します。
スローモーションで見ると、泥玉は大顎に咥えているだけで、前脚は使っていないようです。
それから、出巣の際にようやく顔が拝めました。
触角の付け根の間に黄紋があります。
午後の観察中、巣への出入りを毎回HD動画またはハイスピード動画で記録しました。

定点観察のため翌日とそれ以降もときどき見に来たのですが、残念ながら泥巣が完成する前に蜂が帰って来なくなってしまいました。(蜂を見たのは1日目だけ。)
まさかしつこいパパラッチに嫌気が差して作りかけの巣を見捨てて営巣地を変えたとは考え難いのですけど、母蜂が天敵に襲われたり寿命を迎えたのでしょうか?
産卵や貯食行動も観察できませんでした。
おそらく鱗翅目の幼虫を狩り集めるはずですが、この時期は寒くてもはや獲物となる芋虫も山中にはほとんど居なさそうでした。
「泥巣が完成したら、発掘・採集した蜂の子を室内飼育で越冬させたい」と取らぬ狸の皮算用をしていたのに、来期以降の課題になりました。

ムモントックリバチの泥巣

実は同じ白壁の数メートル横で同様のコンクリート穴に徳利状の小さな泥巣も見つけました。
私が造巣行動の初めだけ観察したケブカスジドロバチ♀は徳利状の泥巣を作るのでしょうか?
それともこれは別種のドロバチが作ったのかな?
徳利を発掘しようと思いつつ先延ばしにしていたら冬になり根雪に埋もれてしまいました…。
いつもお世話になっているヒゲおやじさんの掲示板にお邪魔して問い合わせたところ、「トックリはムモントックリバチEumenes rubronotatus)ではないか」とご教示頂きました。

シリーズ完


【追記】
実は私が思っているよりも窪みの奥が深いとすれば、母蜂は育房の入り口を泥で閉じ終えて(営巣完了)去ったのかもしれません。

ケブカスジドロバチAncistrocerus melanocerus
)の生態について記録を調べてみました。
まず古典的バイブルである岩田久二雄『本能の進化:蜂の比較習性学的研究』を紐解いてみます。


ドロバチ科の営巣記録の一覧表(p241)にシノニム(Ancistrocerus densepilosellus Cameron,1911)として載っていました。
本種の獲物は鱗翅目幼虫、造巣法は築坑型、貯蔵数10-20、独房数6。

p265にスジドロバチ属の総説がありました。
築坑型のAncistrocerusはすべて円筒型または洋樽型の泥瓶をつくる。それらの付着される場所は、樹枝や人家の壁や岩壁の表面であることが多いが、時には既存坑の中にかくして泥瓶を造るものもある。上記の付着場所は一般には雨が直接かからぬような、凹みや庇の下をえらんでいるが、これは泥瓶には耐水性がないからである。



岩田久二雄『日本蜂類生態図鑑』p37によると、ケブカスジドロバチの旧名はミヤマスジドロバチと呼ばれていたようです。
スジドロバチ(Ancistrocerus)属の諸種が、練り土を使って広口の独房を築造することが知られている。(中略)ミヤマスジドロバチ(A. densepilosellus Cameron)は山嶽地帯に生息していて、ビール樽型の広口の独房を造るが、稀な種である。数独房を塊状にかためて造る。獲物は小形のアオムシの成熟近いものであり、不完全麻痺させた上、各房に6〜20頭も貯蔵する。今までに同定された獲物は1つもない。



インターネット検索すると、次の文献(講演要旨PDF)を見つけました。
郷右近勝夫. "F214 ケブカスジドロバチの生態的研究 (IV) 北日本での世代数と営巣場所の選択性について (生態学)." 日本応用動物昆虫学会大会講演要旨 38 (1994): 131. 
それによると、今回観察したのは越冬世代の巣であるとはっきりしました。
成虫の出現は4月上旬〜12月中旬までの長期間にわたって認められた。この間、2〜3世代を経ると推定。営巣場所(造巣基)は圧倒的に石面が選択されるが、そのほか土中、鉄支柱、コンクリート壁、キゴシジガバチの古巣なども、利用される。

ヒメジョオンの茎にぶら下がるオニヤンマ♀



2014年6月下旬

田園地帯の道端(ガードレール横)に生えたヒメジョオンの茎にオニヤンマ♀(Anotogaster sieboldii)がしがみ付いていました。
羽化直後かと思ったのですけど、近くに羽化殻は見当たりません。
風が強い日でした。





2015/02/21

ケブカスジドロバチ♀の泥巣作り#2:接写



2014年10月下旬


▼前回の記事
ケブカスジドロバチ♀の泥巣作り#1:全景
蜂が通って来るコンクリート基礎の窪みの横に座って待ち構え、マクロレンズで接写してみました。
カメラの準備が出来るまでの時間稼ぎとして、巣穴に近づく蜂を手で払ったり、巣の前にペットボトルを置いたりして邪魔しました。
それでも戻ってくる蜂が健気です。
壁際で私がじっとしていれば蜂は気にせず窪みに巣材を搬入し、巣造りを続けてくれます。
一度は撮影中にリモートレリーズの誤作動でアラーム音が鳴り出したこともありました。
それでも蜂は意に介さず造巣作業を続けました。
小さな泥玉を咥えて帰巣した蜂は大顎で穴の奥に巣材を詰めています。
窪み自体が三次元的に複雑な形状をしているので、泥を詰めておそらく育房の滑らかな内壁を作ろうとしているのでしょう。
巣内は暗くてあまり良く見えないのですが、何か構造物(徳利状の泥巣など)を作っているようには見えませんでした。
手鏡で照らせば穴の奥がよく見えたはずですけど生憎この日は忘れてしまいました。

採土場および水場の位置は不明です。
帰巣間隔が短いので遠くないと思うのですが、突き止められませんでした。

映像の撮影時刻は午後12:35〜15:14。
途中で何度かハイスピード動画に切り替えたりしました。(映像公開予定)
この日の観察中に2〜3回だけ、蜂が白壁の手前の地面に降り立つことがありました。(@4:39)
背側からのアングルしか撮れず、採土行動なのか不明です。
着地したとき既に泥玉を咥えているように見えたので、ただの休憩かもしれません。

せっせと巣材を搬入していたのに、パタリと蜂が来なくなる時間帯がありました。(13:32〜15:11)
直射日光の照りつける日向の気温は40℃近くありました。
さすがに蜂にとっても暑過ぎたのかもしれません。
涼しくなるまで昼寝でもしているのでしょうか。
営巣サイクルは造巣→産卵→貯食→閉鎖と予想されます。
したがって育房が完成するまでは狩り・貯食を始めないはずです。
あるいは、栄養補給のため訪花しているのかもしれません。
この時期に山中で咲いている花はほとんど無いのですが、蜜源植物は何でしょう?
辛抱強く(執念深く)待つと蜂が戻って造巣を再開してくれ、胸を撫で下ろしました。

つづく→シリーズ#3:ハイスピード動画

さて、このドロバチの名前は何でしょう?
未採集ですが、巣穴を採寸したので比較で蜂の体長を推定することが可能です。
胸背や腹部の黄紋を頼りに絵合わせしても、完全に一致する種類の蜂が見つかりません。
アジアキタドロバチ♀(Allodynerus mandschuricus)にしては中胸背(?)の1対の黄紋が有ったり無かったりで違います。
エゾスジドロバチ(学名不明)の写真(12)とも似ていますが、腹部の黄紋の本数が1本足りません。



いつもお世話になっている「蜂が好きBBS」にて問い合わせたところ、青蜂@管理人さんより以下のご教示を頂きましたので訂正。
写真のドロバチは、ケブカスジドロバチ♀(Ancistrocerus melanocerus)のようです。
検索キーには記載されていませんでしたが、手元の標本と触角間の黄紋も同じでした。
ケブカスジドロバチはどこに注目して毛深いと称しているのか?という素朴な疑問が湧きました。
再び青蜂@管理人さんより回答。
ケブカとはいいつつも、資料には体毛に関する記述はなく、じっくり比べてみたことがないのでわかりません。実体顕微鏡などで拡大すると確かに毛深い印象はあります。
参考資料PDF 
Yamane, Seiki. "A revision of the Japanese Eu-menidae." Insecta Matsumurana (New Series) 43 (1990): l-189.
ケブカスズメバチみたいな感じですかね?


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