2012/07/18

蜂蜜を舐めるキアシオナガトガリヒメバチ♀



2012年6月上旬

前日に寄主エントツドロバチの泥巣から飼育下で羽化したキアシオナガトガリヒメバチ♀Acroricnus ambulator ambulatorです。
狭い容器から外に出してやり、先ず飲み水を与えてみたのですが逃げようと必死で見向きもしません。
次にハチミツを与えてみると、空腹には勝てなかったらしく直ちに吸蜜開始。

本当は水で希釈して与えるべきなのかもしれませんが、ハチミツの原液を一滴紙に滴らして与えました。口器をクローズアップすると、口髭で小刻みに蜜滴に触れながら一心不乱に蜜を吸っています。
大顎は華奢で、よくぞこれで寄主の固い泥巣から脱獄できたものだと感心します。
羽化直後は縦に裂けて見えた腹部側面(脇腹)が既に閉じかけています。

(完)










2012/07/17

ホオノキの花と蕾を採食する野生ニホンザルの群れ



2012年6月上旬

野生ニホンザルMacaca fuscata)の群れがホオノキの樹上に居座り、採食中でした。
ホオノキの立派な花を次から次へと毟り取り、バリバリと豪快に食べています。
ホオノキの花は日本の野生植物の中では最大です。
枝のあちこちに多数咲いていて、ニホンザルは選り取り見取りの食べ放題。
脚で枝からぶら下がるアクロバチックな体勢で花をもぎ取ったり枝から枝へ跳び移ったりと、猿の行動は見ていて飽きません。

枝を手繰り寄せて花全体を口に咥えてもぎ取り、ご馳走を両腕で抱え込むようにムシャムシャ食します。
枝に腰かけて花弁を千切っては食べ、千切っては食べ…。
見ているだけでいかにも美味しそうです。
せっかく花を採取しても、何故かろくに食べずに惜しげもなく捨ててしまうこともあります。

花弁だけでなく、ホオノキの白い蕾を採食する個体もいました。
枝に座り、食べ応えのある蕾を美味しそうに頬張ります。
食べかけの蕾を惜しげもなく捨てると、体を掻いて枝を移動。
下の枝から次の花を採取すると、白い花弁を食べ始めました。

猿はいつも花と一緒に葉も採取するのですが、口にするのは花弁のみでホオノキの葉は食べないようです。
花の中央にある、これから実になる赤い部分も食べずに残しています。

こんな食べ方をされるホオノキにとってみれば、ニホンザルは花粉媒介(送粉)にも種子散布にも役立たないので食われ損ですね。
何か対策を進化させるのでしょうか。


【追記】
ホオノキの生活史を詳細に解説したNewton special issue『植物の世界 第2号:ナチュラルヒストリーへの招待』p37によると、
新緑の林を満たすかぐわしい香りのもとは、内側の3枚の花弁から放出される。それらの花弁上にはじっとりと汗ばんだように透明な液滴が密布しており、鼻を近づけるとむかつくようなにおいである。このにおいが広い空間に放出されるとやわらかな香りとしてただようのである。蜜は分泌されず、ポリネーター(送粉者)には花粉のみがえさとして提供される。



【追記2】
中川尚史『サルの食卓―採食生態学入門 (平凡社 自然叢書)』によると、
花は、蛋白質を摂取するのには良いが、カロリーを摂取するためにはあまりふさわしい食物ではないといえる。 (p90より引用)

これはニホンザルが食べた様々な植物種の栄養価をまとめた研究結果(一般論)で、ホオノキの花を特に取り上げた記述ではありません。 








2012/07/16

(エントツ)ドロバチの巣から羽化した寄生蜂:キアシオナガトガリヒメバチ♀

2012年5月上旬


木造家屋の南面で軒下の奥の隅に作られたドロバチの泥巣を採集しました。
見つけたのは晩秋ですが、すぐには発掘せずに、泥巣内で蜂の子(前蛹)を越冬させて春になるのを待ちました。
営巣の様子は見逃したものの、泥巣の形状からおそらくエントツドロバチ(オオカバフスジドロバチ;Orancistrocerus drewseni♀の作品ではないかと予想しました。
例年、この軒下で営巣するエントツドロバチを定点観察しています。


泥巣の表面は完全に乾いており、触れると薄皮のように剥がれ落ちます。
マイナスドライバーで慎重に泥巣の周囲から削っていくと、最後はブロック状の土塊が一気に外れました。
軒下の材に残った跡を見ると、泥巣の厚い外壁(外皮)は3回に分けて増築されたことが分かります。

『日本蜂類生態図鑑』p38でエントツドロバチの造巣を参照すると
蜂は1つのひさご巣を完了する毎に、その煙突をとりこわして、その根本まで削りとってしまう。その練り土を利用してひさごの全面に二次的な上塗り作業をほどこす。ただ練り土を塗りつけるのではなく、元の壁とは別個に、薄い壁としてあちこちにわずかな空気の層を設けながら築造してゆくのである。




今回は泥巣内の独房を暴いて前蛹を取り出したりせずに、泥巣全体をプラスチック容器に入れて飼育を始めました。
ドロバチの成虫が泥巣から脱出する様子を観察するのが目的です。
果たして本当にエントツドロバチが羽化してくるでしょうか?
室内に放置していただけで、特に温度管理や遮光などは行っていません。



2012年6月上旬・室温20℃


早朝に飼育容器の様子を見ると、泥巣の側面中央に脱出口が開いていてハチの頭部が覗いていました。
独房内で蛹から羽化したハチが夜中に大顎で泥壁を食い破り、明るくなるのを待って外に出るつもりだったのでしょう。
寝ぼけ眼のまま慌てて撮影の準備をしていたら、肝心の脱出シーンを撮り損ねてしまいました。カメラの準備が出来てから照明を点灯すべきでした…。
あーあ、痛恨のミス。
実は、前々日から夜になると断続的にガリガリと泥巣を齧る音が聞こえていたのに、すっかり油断していました。


現れたハチは予想していたエントツドロバチとは異なり、寄生蜂(ヒメバチの一種)でした。実は私には見慣れた寄生蜂です。
以前、石碑から採集したスズバチの泥巣から同様に室内羽化したキアシオナガトガリヒメバチ♀(Acroricnus ambulator ambulator)と酷似しています。
関連記事はこちら→「キアシオナガトガリヒメバチ♀羽化直後の蛹便排泄
キアシオナガトガリヒメバチの寄主としてはキボシトックリバチ、オオフタオビドロバチ、スズバチ、エントツドロバチなどが報告されています。

羽化直後はハチの腹部側面が縦に裂けて黄白色に見えるのも2010年の観察と同じです。
キアシオナガトガリヒメバチ♀は羽脱直後に蛹便を排泄しました。
やがて立ち止まって身繕いを始めました。触角や前脚を念入りに舐めています。
小さな大顎は泥だらけで、脱獄の苦労を物語っています。
腹端に長い産卵管を有する♀です。
泥巣の脱出口






つづく。

【追記】
その後7月中旬(記事の公開)まで泥巣の飼育を続けても、二匹目のハチは羽化してきませんでした。
諦めて泥巣を解体すると、寄生蜂が羽脱した独房の隣に空の独房が一つあるだけでした。
寄主の正体をしっかり確かめられずに残念でした。


エントツドロバチの初期巣には特徴的な煙突状の入り口が作られるのですが、営巣が完了するとその入り口は取り壊され全体が厚い泥の外皮で覆われます。
関連記事はこちら→「エントツドロバチの泥巣閉鎖1/3」(三部作の前編)

ドロバチがあれほど苦労して厳重な戸締りをしても、キアシオナガトガリヒメバチ♀は長い産卵管で泥巣の上から突き刺し独房内に卵を産みつけて捕食寄生してしまうのです。
キアシオナガトガリヒメバチ♀の長い産卵管と、寄主となるドロバチの泥巣外皮の厚さは、共に進化的軍拡競争の結果なのかもしれません。

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