2012年6月上旬
野生ニホンザル(Macaca fuscata)の群れがホオノキの樹上に居座り、採食中でした。
ホオノキの立派な花を次から次へと毟り取り、バリバリと豪快に食べています。
ホオノキの花は日本の野生植物の中では最大です。
枝のあちこちに多数咲いていて、ニホンザルは選り取り見取りの食べ放題。
脚で枝からぶら下がるアクロバチックな体勢で花をもぎ取ったり枝から枝へ跳び移ったりと、猿の行動は見ていて飽きません。
枝を手繰り寄せて花全体を口に咥えてもぎ取り、ご馳走を両腕で抱え込むようにムシャムシャ食します。
枝に腰かけて花弁を千切っては食べ、千切っては食べ…。
見ているだけでいかにも美味しそうです。
せっかく花を採取しても、何故かろくに食べずに惜しげもなく捨ててしまうこともあります。
花弁だけでなく、ホオノキの白い蕾を採食する個体もいました。
枝に座り、食べ応えのある蕾を美味しそうに頬張ります。
食べかけの蕾を惜しげもなく捨てると、体を掻いて枝を移動。
下の枝から次の花を採取すると、白い花弁を食べ始めました。
猿はいつも花と一緒に葉も採取するのですが、口にするのは花弁のみでホオノキの葉は食べないようです。
花の中央にある、これから実になる赤い部分も食べずに残しています。
こんな食べ方をされるホオノキにとってみれば、ニホンザルは花粉媒介(送粉)にも種子散布にも役立たないので食われ損ですね。
何か対策を進化させるのでしょうか。
【追記】
ホオノキの生活史を詳細に解説したNewton special issue『植物の世界 第2号:ナチュラルヒストリーへの招待』p37によると、
【追記】
ホオノキの生活史を詳細に解説したNewton special issue『植物の世界 第2号:ナチュラルヒストリーへの招待』p37によると、
新緑の林を満たすかぐわしい香りのもとは、内側の3枚の花弁から放出される。それらの花弁上にはじっとりと汗ばんだように透明な液滴が密布しており、鼻を近づけるとむかつくようなにおいである。このにおいが広い空間に放出されるとやわらかな香りとしてただようのである。蜜は分泌されず、ポリネーター(送粉者)には花粉のみがえさとして提供される。
【追記2】
中川尚史『サルの食卓―採食生態学入門 (平凡社 自然叢書)』によると、
花は、蛋白質を摂取するのには良いが、カロリーを摂取するためにはあまりふさわしい食物ではないといえる。 (p90より引用)
これはニホンザルが食べた様々な植物種の栄養価をまとめた研究結果(一般論)で、ホオノキの花を特に取り上げた記述ではありません。
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