2010/12/17

キオビホオナガスズメバチの吸水と身繕い




2010年8月上旬

里山にて、沢の水で濡れたコンクリート地面と石垣の境を見慣れない蜂が忙しなく飛び回っていました。
ときどき路面に止まるものの、カメラに警戒しているのか少し身繕いするだけですぐに飛び立ってしまいます。
おそらく吸水していたのでしょう。
映像には撮れてませんが、低空飛行で辺りのハエ(アブ?)を追い回して狩ろうとしていたようにも見えました※1。
帰ってからスロー映像(1/6倍速)を元に蜂の正体を調べてみました。






動画から切り出した写真を蜂類情報交換BBSにて問い合わせてみると、山地性のキオビホオナガスズメバチ本州産亜種(ホンシュウキオビホオナガスズメバチ;Dolichovespula media sugare)と教えていただきました※2。
ワーカーは初見です♪ 


※1:本種は幼虫の餌として生きたハエやアブなどをよく狩るらしいです。
一瞬ハエともつれ合っただけで、実際に仕留めるシーンは見てません。
もう少し粘って観察すればよかった...。
図鑑に載っている垂直分布情報よりも低山で見つけたのですが、北国だからでしょう。


 ※2:初めはなんとなくキオビクロスズメバチかと思ったのですが、ホオナガに訂正します。キオビクロは、もっと帯が太くなるのだそうです。


キオビホオナガの「働き蜂の斑紋は初期に羽化した個体ほど帯の幅が狭く斑紋も単調」とのこと。『日本の真社会性ハチ:全種・全亜種生態図鑑』 信濃毎日新聞社 p152 より

ドロバチヤドリニクバエ羽化後




前編からの続き)
オオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum)が営巣した竹筒に残された囲蛹から同じ日に相次いで3匹(a-c)のドロバチヤドリニクバエAmobia distorta)が羽化してきました。
囲蛹を突き破るのに使った頭頂部の膨らみ(前頭嚢)が風船のように脈動しつつ萎んでいく様子が見られます。
翅が伸び体が黒くなってもしばらくはまるで眉間に皺を寄せているように内圧でペコペコしています。
容器内を徘徊し身繕いしました。
残された羽化殻は頭部が十文字に割れていました。
室温26℃。





翌日に最後の一匹dが羽化してきました(計4匹)。

ドロバチヤドリニクバエの羽化と翅伸展(寄主オオフタオビドロバチ)

2010年8月中旬


オオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum)が営巣したと思われる竹筒を一本回収し、女竹をナイフで割ってみました。




入口は泥で閉鎖されており、筒の中は薄い泥の隔壁で仕切られています。
竹筒を割るのは初めてだったので力の加減が分からず、独房が幾つ作られていたのか分からなくなってしまいました。
独房内に貯食物や蜂の子は残されておらず、赤褐色の蛹が幾つか塊となって転がっているだけでした。
明らかに寄生虫の蛹と分かりましたが、密室ミステリの謎を解き明かすために飼育してみました。
密閉容器に採集して放置していたら、6日後にハエの成虫が羽化していることに気づきました。
慌てて容器の蓋をサランラップに張り替えて撮影開始。






ドロバチヤドリニクバエAmobia distorta)成虫が囲蛹を割って脱出する様子※は見逃しました。
翅原基が萎んだ状態で容器の壁に頭を下に止まっています。
腹部および翅原基がときどき小刻みに動き、身繕いします。
頭頂部の膨らみが風船のように脈動します。
これは前頭嚢と言って、体液の内圧で膨らむことで囲蛹を中から押し開くのに使うそうです。
ドロバチの巣から脱出する際は、泥壁を粘液で濡らしながら前頭嚢の風船運動で穿孔するらしい(『ハチの博物誌』 青土社 p54より)。



鋭い大顎や角も持たず弱々しく見えますが、ツリアブの仲間とはまた違った脱出戦略ですね。
やがて、しわくちゃの翅原基に変化が現れました。
体液の内圧で見る見るうちに膨らみ、約3分で伸び切りました。
白かった腹部には黒い縞模様が現れました。室温27℃。




一寸のハエにも五分の大和魂BBS」にて問い合わせたところ、ドロバチヤドリニクバエだろうとご教示頂きました。
竹筒ハチ図鑑サイトによると、ドロバチヤドリニクバエの♀はドロバチ類の巣に卵ではなく幼虫を産下するらしい。
この蛆虫は寄主の貯食物(蜂に狩られ麻痺状態の蛾の幼虫)を食べて育つそうです(労働寄生)。


つづく


【追記】
ドロバチの巣に寄生したハエが泥壁を破って脱出する様子を飼育下で記録した見事な映像をYouTubeで見つけましたのでご覧下さい。

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