2017年5月下旬
川の堤防で河畔林のニセアカシア(=ハリエンジュ)が白い花を満開に咲かせていました。
その周囲でキムネクマバチ♂(Xylocopa appendiculata circumvolans)がホバリング(停空飛翔)しています。
訪花する♀を待ち構えて交尾しようと空中で縄張りを張っているのです。
♂同士の競争が熾烈なためか、飛んでくる♀を見つけたらスピード勝負です。
♀でなくとも取り敢えず何か飛んでくる物(未確認飛行物体)を見つけたら全速力で飛んで行き、他種の昆虫やライバルのクマバチ♂なら縄張りから追い出します。
そのため雄蜂の複眼は♀に比べて非常に大きく発達しています。
体力を消耗するこの縄張り占有行動を雄蜂は忙しなくひたすら繰り返しています。
この行動の解明に一石を投じるため足元の砂利を拾い、240-fpsのハイスピード動画に撮りながらホバリング中のクマバチ♂に小石を投げつけてみました。(@0:41~)
すると、放物線を描いて落ちる石を交尾相手の♀またはライバル♂と誤認して雄蜂がスクランブル(緊急発進)で追尾します。
クマバチ♂の優秀な動体視力および迎撃の反応速度もスローモーションの映像から分かりますね。
投げた小石の大きさや色、形状によって雄蜂の反応性に違いはあるか、ちゃんと調べたら面白いかもしれません。
おそらく同一個体と思われる♂に対して繰り返し投石実験を行いました。
投石を追いかけても、すぐに誤認と気づいて追尾を止めています。
しかし慣れは生じず、ほぼ毎回引っかかる(騙される)のが興味深く思いました。
反射的な行動なのでしょう。
先日、鏡に映った自分の姿に対してもクマバチが飛びかかっていく面白い行動を観察したのですが、そうなるのも納得です。
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車体や窓に映った鏡像に戦いを挑むクマバチ♂
実を言うと、このネタは数年前にYouTubeのコメント欄で海外の虫好きの方から教えてもらった遊びです。
動画で記録したくて毎年密かに挑戦してきたものの、実際に撮ろうとすると意外に大変でした。
石を投げてくれる助手がいれば簡単なミッションですけど、一人でやろうとすると意外に難しいのです。
三脚を立ててホバリング中のクマバチ♂をカメラで狙っている間に、忙しい♂はもうどこかへすっ飛んで行ってしまいます。
仕方なしに手持ちカメラで撮りながら小石を投げつけてみたら、案ずるより産むが易しで、なんとか上手くいきました。
ちなみに雄蜂は針をもたないので、この実験で刺される危険は全くありません。
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。
次に機会があれば背景がすっきりした所で撮り直すつもりです。
それからクマバチ♀♂の交尾を観察してみたいものです。
【追記】
高家博成、江川多喜雄『虫のうごくひみつ (花はな虫むし)』という児童書に、この実験のことが書いてありました。
むらさき色のふじの花がさくと、その近くの空中に、頭とおなかが黒くて、むねが黄色のクマバチの♂が、とまっているように、とんでいるのを見ます。♀がやってくるのをまっているのです。そばになにかとんでくると、さっととんでいって、♀かどうかたしかめます。スズメやハトのような、自分よりずっと大きいものでも、おいかけます。
ためしに小石をほうりなげてみました。すぐおいかけて、地めんにぶつかりそうになると、さっとはなれ、またもとのところにもどって、とびつづけました。(p5より引用)
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