2014年6月下旬
▼前回の記事平地の水辺に生えた柳(種名不詳)の幹の根元付近に穴があいていて、中から夥しい量の木屑が排出されていました。
柳の幹を傷つけるコクワガタ♂の謎
カミキリムシなどの穿孔性昆虫の幼虫が樹幹に潜んでいると睨んで、10倍速の微速度撮影で穴を長時間監視してみました。
すると予想通り、木屑が中からグイグイ押し出されて動く瞬間が記録されていました。
夕暮れの木漏れ日が射してチラチラと見難いのですけど、@0:23〜0:26にご注目下さい。
誰かが人為的にドリルで開けた穴ではないこともこれで判明しました。
後半はリアルタイムの映像です。
再び木屑が排出される瞬間が撮れました。(@1:36〜1:41)
カミキリムシの成虫が穴から羽化してくるのかな?と内心期待したのですけど、そうではなさそうです。
穿孔性昆虫の正体は何なのか、穴の中で何が行われているのか、直に観察してみたいものです。
うーむ、「X線の眼を持つ男」になりたい…。
木屑には小さなハエやアリが群がり舐めていました。
発酵した樹液に特有の香りは未だ嗅ぎ取れませんでしたが、木屑に甘い樹液が少し滲んでいるのかもしれません。
【追記1】
木屑と糞の混合物をフラスと呼ぶのだそうです。
frass: 昆虫の幼虫の糞,昆虫が木材に穴をあけたときの木の粉
【追記2】
『樹液に集まる昆虫ハンドブック』p3に掲載された「木の内部にいるシロスジカミキリの幼虫が出す木くず」の写真が似ている気がしましたけど、樹種が明記されていません。
カミキリムシの幼虫は木の材部を食べて育つ過程で師管を傷つけ、また樹皮にもしばしば穴を開けて、糞や木くずを外に押し出す。
【追記3】
『樹液をめぐる昆虫たち (わたしの昆虫記)』p30に掲載された断面図が今回の状況にそっくりでした。
木の中に潜むシロスジカミキリの幼虫が排出した木屑の穴から樹液が出るのだそうです。
【追記4】
このような穴を排糞孔と呼ぶのだそうです。
参考:『カミキリムシの生態』p99より
【追記5】
有田豊、池田真澄『擬態する蛾スカシバガ (月刊むし・ブックス 3)』という名著の誉れ高い本を読んでいたら、全く別の可能性もあることに気づきました。
(キタスカシバの)幼虫は(食餌植物であるヤナギ科の)樹皮にあけた小孔から木屑や糞を排出し、排出された木屑や糞は樹皮に絡みつくように付着しているので分かりやすい。(p124より引用)
しかし、私が見た今回のフラスには糞が混じっていませんでした。
木本の場合でも草本の場合でも、(スカシバガ科の)幼虫が入って食害している部分から糞が出ているので、幼虫の存在がすぐに判る。スカシバガ科とよく似た食性のコウモリガ類の糞は糸で綴られており、カミキリ類のそれは細長いことから、スカシバガ類のものとは区別しやすい。(p85より引用)
ちなみに、コウモリガ幼虫の食餌植物リストにヤナギが含まれていました。
他にはフクズミコスカシバの幼虫もヤナギ類をホストとしていることを知りました。
樹皮上にも赤味のかかった黄色の粒状の糞が出ており、カミキリの繊維状のものとは一見して区別できる。(p162より引用)
とのことなので、今回の事例には当てはまらなさそうです。
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