2022/04/23

雪深い河畔林をラッセルして溜め糞場に通うホンドタヌキのペア【暗視映像:トレイルカメラ】


2022年1月上旬 

雪深い河畔林でタヌキの溜め糞場rvを監視しているトレイルカメラの記録です。 

シーン1:1/2・午後21:26・吹雪 
吹雪の夜にホンドタヌキNyctereutes  viverrinus)が単独で左から現れました。 
落葉したニセアカシア立木の奥を左から右へゆっくり歩いて行きました。 
タヌキが1歩踏み出す度に湿った深雪に埋まっています。 
溜め糞場の匂いを嗅いだり排便したりすることもなく、素通りしました。 


シーン2:1/2・午後22:00・吹雪 
約30分後、軽い吹雪が降り続く中を今度はペアのタヌキが連れ立って登場しました。 
いつもの溜め糞場で1頭がカメラの方を向いて脱糞中でした。 
肛門を締めて大便を切る際に尾を上下するので、排便と分かります。 
排便中にパートナーが寄り添って体の匂いを嗅いでいます。(対他毛繕い? 追記参照) 

用を足した個体が居なくなると、雪面に新鮮な細長い固形糞が2個残されていました。 
いつも通り、タヌキは糞を雪で埋めたりしませんでした。 
残ったパートナーが、その糞の匂いを嗅いでから左奥へ立ち去りました。 

タヌキの毛皮が雪で濡れています。 
雪が降りしきる中を長時間行動すれば毛皮が濡れるのは当然だと初めは単純に思いました。 ところが後日、昼間に現場近くの足跡を追跡したところ(アニマル・トラッキング)、川岸の雪面に渡河した形跡を見つけました。 
身を切るように冷たい雪解け水の川をまさか夜に(?)泳いで渡る野生動物がいるとは予想外で、とても驚きました。 
いつか渡河シーンの証拠映像を撮ってみたいものです。 
此岸と対岸の河畔林を広い範囲で縄張りとしているのかもしれません。 


シーン3:1/3・午後21:26・小雪 
翌日の晩にも雪がちらつく中、2頭のタヌキが一緒にやって来ました。 
前夜にした糞は雪の下に完全に埋もれています。 
新雪に鼻面を突っ込んで溜め糞場の匂いを嗅いでいます。 
今回は脱糞せずに通り過ぎました。 
タヌキが新雪をラッセルした足跡は2本の縦線状に残ります。(キツネは1本線状) 

関谷圭史『信州のタヌキ』(1998)という本を読むと、仲良く連れ立って歩くタヌキのペアは♂が先導することが多いのだそうです。 
筆者は多数のタヌキを一時捕獲して色付きの首輪と電波発振器で個体識別した上でしっかりと調べています。
 ペアが一緒に行動するとき、♂と♀のどちらが先にたって歩くかも調べました。CFペアでは、♂と♀が一緒に歩くのを40回直接観察しましたが、そのうちの26回は♂が先にたっていました。えさ場へあらわれるのも16回観察しましたが、すべての場合、♂が先にあらわれています。このようにタヌキのペアでは♂のほうが主導権をにぎっているようです。(p47より引用)
私も調査地のタヌキを個体識別できるようになりたいものです。 
せめて性別を見分けたいのですが、なかなか性徴が見えません。 
溜め糞場を訪れる際も♂が先導するのかな? 
中には♀が常に先導するかかあ天下のペアがいるかもしれませんし、生息地域によって違うかもしれませんから、自分で調べるしかありません。 

また、前夜(1/2)には排便中のパートナーの横腹を鼻先で触れるような行動が見られました。
 ペアがよりそっているときには、♂が鼻先で♀の顔や腹をつつき、じゃれあう場面が観察できました。(同書p48より引用)



つづく→夜の河畔林で雪の上に溜め糞をするホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】 

2022/04/20

雪山の杉林を歩くホンドギツネ【トレイルカメラ】

 

2022年1月中旬・午後13:00頃・晴れ 

里山のスギ植林地で雪深い林道脇に仕掛けたトレイルカメラにホンドギツネVulpes vulpes japonica)が写っていました。 
珍しく日が射して明るい昼間に、1頭のキツネが右から左へ、カメラの前を歩いて横切りました。 
雪道を歩くキツネを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 
3時間前に登場したリス(動画公開予定)の匂いを嗅ぎつけてキツネがやって来たのかな? 

今回は疥癬感染個体ではなく、毛並みのきれいな健康体のキツネでした。
関連記事(同じ山系@10か月前の撮影)▶ 杉の木の下の隠れ家から雪山に逃げる疥癬症のホンドギツネ
疥癬は自然治癒しないとすれば、この里山に少なくとも2頭のキツネが生息していることが判明しました。

ちなみに、トレイルカメラでキツネを撮れたのは2回目です。

2022/04/19

眼下腺マーキングのため雪山の杉林に通うニホンカモシカ【トレイルカメラ】

前回の記事:▶ 杉林の林道を深夜に歩くニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】

2022年1月上旬〜下旬 

雪山の杉林に設置したトレイルカメラで林道を往来する野生動物を監視していると、ニホンカモシカCapricornis crispus)が繰り返し何度も登場しました。 
1月の記録をまとめました。

シーン1:1/9・午前10:01・晴れ 
雪深い林道をカモシカが右から左へ横切りました。 
登場シーンが記録されていないのは残念です。 
晴れていますが、冠雪したスギ林からチラチラと落雪しています。 


シーン2:1/10・午前4:54・晴れ 
翌日の夜明け前に再びカモシカが登場しました。 
ニホンカモシカは昼も夜も活動するのです。 
スギ大木の太い幹に顔を擦り付けていました。 
角を研いでいる可能性やスギの樹皮を剥いで食べている可能性も考えられるのですが、おそらく顔にある眼下腺で縄張り宣言のためのマーキング(匂い付け)しているのでしょう。 
その後は頭を下げて雪面の匂いを嗅ぎながら右へ立ち去りました。 
雪道に深く潜らないように蹄を大きく広げて歩いていることが分かります。 

トレイルカメラで眼下腺マーキングする野生カモシカの行動を記録できたのは、これで2回目です。
関連記事(2か月前の撮影)▶ 夜にコシアブラ幼木の葉に眼下腺マーキングするニホンカモシカ【トレイルカメラ:暗視映像】


シーン3:1/10・午前5:11・晴れ 
約17分後、おそらく同一個体と思われるカモシカが再登場。 
深夜の縄張りパトロールで戻って来たのでしょう。 
先程匂い付けしたスギの幹の匂いを嗅いだだけで、今回は顔を擦り付けませんでした。 
今回も左から右へ立ち去りました。 


シーン4:1/23・午後23.34・晴れ 
約2週間後の深夜、久しぶりにカモシカが撮れていました。 
縄張りの巡回ルートが決まっているのか、今回も左から登場しました。 
立ち止まって、お気に入りのスギ大木の幹の匂いを嗅いでいます。 

トレイルカメラが夜に起動すると、1対の赤外線LEDが暗闇で赤い目のように光ります。 
野生動物に赤外線は見えていないという謳い文句のはずなのに、どうやらカモシカはトレイルカメラの存在に気づいたようです。 
カメラの起動時にカチッとかすかな物音がするのも神経質な野生動物は気になるのかもしれません。
横目でカメラを見ながらカモシカはしばらくその場に立ちすくみました。(アオの寒立ち?) 
久しぶりなのに今回はスギの幹に眼下腺マーキングせずに、そのまま右へ立ち去りました。 




シーン5:1/26・午後14:20・晴れ 
3日後の昼間にまたカモシカが横切りました。 
珍しくいつもとは逆コースで、右から左へ通過しました。 
林道の奥の下り斜面をトラバースしています。 
スギ並木の奥を通り眼下腺マーキングもしなかったので、カメラの起動が遅れたのでしょう。 



1/23以降、カモシカはすっかりトレイルカメラを怖がってしまったようで、この林道をまともに通らなくなってしまいました。 
厳冬期に大雪が積もると林道の雪面に対してトレイルカメラの高さが低くなり、野生動物の目線に対してどうしても目立ってしまうのです。 
後日、カメラの電池交換のため現地入りした際にカモシカの足跡を辿ると、カメラが監視する区画を避けるようにわざわざ迂回していました。 

厳冬期の雪山でもトレイルカメラをなんとか運用することが可能でした。 
根雪が降る前から、林道を挟んで反対側の杉並木の幹にトレイルカメラを固定していました。
悪戯や盗難防止のため、念の為にワイヤーロックをかけました。 
そのとき深く考えずに鍵穴を上向きにしてしまったせいで、鍵穴に雪が詰まって凍結してしまい、春になるまで解錠できなくなってしまいました。 
そういう訳で、積雪量が増えるに伴いカメラの位置を上にずらしたくても出来なくなったのです。 
こういう細かなノウハウは実際に自分でやってみないと分からないものです。 
教訓としては、ワイヤーロックの鍵穴を必ず下向きにして、できればアルミホイルやサランラップで包んで濡らさないようにする必要がありそうです。 

低温になるとトレイルカメラの電池の消耗が激しくなる(電圧が下がる?)のも問題です。
寒冷地撮影のためカメラを温めるヒーター(電熱線)を一緒に使いたいところですが、それにも別の大容量バッテリーが必要なので切りがありません。
ソーラーパネルからトレイルカメラに給電する手もありますけど、例えばここ雪山の杉林では充分な日照を確保できそうにありません。



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