2021/05/29

杉の木の下の隠れ家から雪山に逃げる疥癬症のホンドギツネ

 

2021年3月中旬・午前11:55頃・晴れ
前回の記事:▶ 雪山を逃げる疥癬症のホンドギツネ
8日ぶりに雪山に登りました。 
前回ホンドギツネVulpes vulpes japonica)と二度も出会った同じスギの木にそっと近づきカメラでズームインしてみると、杉の木の下にまたもや野生のキツネが潜んでいました。 
雪山では木の根元の周囲だけ雪解けが早いので、雪面ではなく露出した地面に座って休んでいたのでしょう。(日光浴?) 
あるいは、ここは縄張りを見張るのに好都合なのかな? 

周囲は雪山の銀世界なので、こちらを見据えているキツネはずっと眩しそうに目を細め、瞬きしています。(まさにキツネ目!) 
スギの根元におそらくツゲと思われる常緑広葉樹の低木が生えていて、キツネはその枝葉の陰に隠れているつもりのようです。 
しばらくすると、キツネはツゲの陰から少しずつ顔を出してくれました。 

私が身動きせずにひたすら動画を撮り続けると、痺れを切らしたキツネが隠れ家から急に逃げ出しました。(@2:05) 
前回と同じく、杉の木を回り込んで背後の雪山を逃げて行きました。 
雪を蹴立てて走り去るその後ろ姿は下半身の毛並みが悪く、長い尻尾の毛は抜け落ちていて異様な姿でした。 
前回と同じく疥癬症に罹患した同一個体と判明しました。 
跳ねるような逃走シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@2:26)、前足を同時に雪面に着いた後で、後足は左右バラバラに着地していました。 



直後に現場検証に向かうと、スギの木の根元付近だけ雪が解けて地面が露出していました。 
そもそもスギは常緑樹ですから、雪が降ってもほとんどが枝葉に積もり、根元の地面には雪があまり積もりません。 
キツネが隠れていた場所に食べ残しなどは見つかりませんでした。 
この地面には疥癬の原因となるヒゼンダニが付着している可能性が高いので、辺りを素手で触れないように注意しました。 
繁殖用の巣穴ではなく、単なる一時的な隠れ家または休憩場所のようです。 
近くにはなぜかコカコーラの古い空き瓶がスギの根際に半ば埋もれていました。 
キツネがおもちゃとして持ち込んだのなら面白いのですが、かなり古い遺物です。 
この隠れ家に無人カメラ(センサーカメラ、トレイルカメラ)を仕掛けて、キツネの動向を動画で記録したら面白そうです。(カメラトラップ法)
 

シャーベット状になった残雪の表面に疥癬症キツネが残した新鮮な足跡を少しだけ辿ってみました。 
飯島正広『野生動物撮影ガイドブック: 機材選びから撮影テクニック、動物の探し方まで』によると、
キツネの足跡は直径5cmほどの大きさで、足跡はほとんど一直線に残る。1列なら足跡の数は半分で、用心深く、なるべく足跡の痕跡を残さない「ハンター歩き」だ。(中略)一本足あるきが何よりの特徴だ。(p161より引用)

その後も何度か山中の杉の木を訪れてみたものの、残念ながらこの日を最後にキツネの姿を見かけなくなりました。 
疥癬症が進行すると衰弱死に至ることがあるそうなので、心配です。 
キツネが繁殖している巣穴がどこにあるのか突き止めたいものです。 
しかし、性病のようにつがいの相手もヒゼンダニに感染させてしまう気がします。

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