2024/09/23

イチョウの種子(銀杏)散布者としてのホンドタヌキ

 

2023年11月上旬・午後12:40頃・晴れ 

平地のスギ防風林でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場wbcをトレイルカメラなどで定点観察しています。 
秋も深まり気温が下がったせいか、食糞性の昆虫が集まって来なくなりました。 

タヌキの溜め糞場には様々な種子が未消化のまま含まれていて、雑食性のタヌキが何を食べたのか旬のメニューを推理することができます。 
たとえば、柿の種は形が分かりやすく、素人にも一目瞭然です。 
(ちなみに、糞塊に混じっていたカキノキの種子も1個だけ動画に写っています。)
今回は銀杏(イチョウの種子)が糞塊に多数含まれていました。 
現場はスギ林ですから、溜め糞場の横にイチョウの木はありません。
スギ林の外から銀杏が大量に持ち込まれたことになります。

タヌキの糞塊を棒の先でほぐして、銀杏をほじくり出してみました。 
 硬い殻で守られたイチョウの種子(銀杏)は噛み砕かれておらず、臭い果肉(正確には外表皮)と一緒に丸呑みされたようです。 
イチョウの種子は未消化のまま、糞と一緒に丸ごと排出されていました。 
養分が豊富な溜め糞の中からイチョウの種子が発芽したら、種子散布に成功した(分布を広げた)ことになります。 
ただし、この地点は鬱蒼としたスギ林の暗い林床なので日照が乏しく、イチョウの芽生えは育たないでしょう。 
もしも強風の嵐が吹き荒れてスギの木が風倒すれば、林冠ギャップができて日光が射すようになり、イチョウが育つチャンスも生まれるかもしれません。 







撮影後、周囲にイチョウの木が生えているかどうか、探索してみました。 
次の課題として、イチョウの木の下にトレイルカメラを設置して、銀杏を食べに来るタヌキの証拠映像を撮ってみたくなります。
神社の境内に植栽されたイチョウの大木を見に行ったのですが、地面に落ちているのはイチョウの黄色い落ち葉だけで、銀杏は全く見つかりませんでした。 
近年は悪臭を放つ銀杏が嫌われ、街路樹のイチョウ雌株は次々に伐採されて雄株ばかりになっています。
他には某施設の敷地内で黄葉したイチョウの木を見つけたのですが、部外者は立ち入ることができません。 
おそらくタヌキは夜な夜なそこに忍び込んで、イチョウの落果を食べているのでしょう。 
次に掲載するのは資料用の写真で、11月上旬に全く別の地点で撮影したイチョウの落果(銀杏)です。




関連記事(2ヶ月後)▶ イチョウの種子(銀杏)を拾い集める


イチョウは「生きた化石」と呼ばれ、太古の昔には草食性の恐竜によって被食型種子散布されていたと考えられています。 
恐竜の糞の化石から、銀杏が発見されたからです。 

それにしても不思議なのは、イチョウの外種皮には悪臭(不快な糞便臭)があり、種子にはさまざまな有毒物質が含まれていることです。 
大切な種子が成熟するまで草食動物に果実を食べられないようにイチョウは防御しているのでしょう。
どうしてタヌキなどの野生動物が銀杏を好き好んで食べるようになったのか、不思議でなりません。 
鋭い嗅覚をもつタヌキにとって、銀杏は食欲をそそる匂いなのでしょうか?
wikipediaでイチョウの記事から銀杏の毒に関する記述を引用します。
イチョウの種子が熟すと肉質化した種皮の外表皮が異臭を放ち[128]、素手で直接触れるとかぶれやすい[119]。異臭の主成分は下記の皮膚炎の原因となるギンコール酸である[128]。異臭によりニホンザル、ネズミなどの動物は食べようとしないが、アライグマは食べると言われている[129]。

 

種皮の外表皮には乳白色の乳液があり、それにはアレルギー性皮膚炎を誘発するギンコールやビロボールといったギンコール酸(ギンゴール酸)と呼ばれるアルキルフェノール類の脱炭酸化合物を含んでいる[44][111]。これはウルシのウルシオールと類似し、かぶれなどの皮膚炎を引き起こす[128]。

 

食用とする種子にはビタミンB6の類縁体4'-O-メチルピリドキシン (4'-O-methylpyridoxine, MPN) が含まれている[128][131][132] が、これはビタミンB6に拮抗して(抗ビタミンB6作用)ビタミンB6欠乏となりGABAの生合成を阻害し、まれに痙攣などを引き起こす[128]。銀杏の大量摂取により中毒を発症するのは小児に多く、成人では少ない[115]。大人の場合かなりの数を摂取しなければ問題はない

私はてっきり、タヌキが銀杏の外側の臭い果肉(正確にはイチョウの外表皮)を食べるために種子ごと丸呑みしているのかと思っていました。 (周食型種子散布)
種子散布者のタヌキは種子を噛み砕かずに丸呑みするので、種子に含まれる中毒物質には影響されないのでしょう。
もしもタヌキがイチョウの外表皮を忌避して(取り除いて)種子だけ食べるのだとしたら、硬い殻を噛み砕かないと栄養豊富な仁を消化できませんし、一体なんのために銀杏を丸呑みしているのか、意味が分かりません。
タヌキに銀杏を給餌して食べ方を実際に観察してみないといけません。 

私は飲んだことがありませんが、コピ・ルアクと呼ばれる高級なコーヒーがあります。
ジャコウネコがコーヒーの果実を食べると、種子は消化されないまま糞と一緒に排泄されます。(ジャコウネコによるコーヒーの種子散布)
それをヒトがわざわざ拾い集めて洗浄してから、コーヒー豆として焙煎すると、すばらしい香りがするのだそうです。
(コピ・ルアクを最初に試飲した勇者を尊敬します。)
タヌキの溜め糞から回収した銀杏も、もしかしたら意外な風味が加わり、希少価値のある食材として高級料亭に売りつければ商売になるかもしれませんね。(ビッグ・ビジネスの予感!)
ぜひ誰か勇者が味見してみてください。
タヌキの糞が臭くて駄目だとしても、別の野生動物ならどうでしょう?

つづく→ 


※【追記】
2023年12月上旬
少し離れた別の溜め糞場ph:スギ倒木横で撮った写真に、未消化のまま排泄されたイチョウの種子(銀杏)および黄色い外表皮が写っていました。


ソバの実も溜め糞に含まれていました。




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シロツメクサの花蜜を吸うキアゲハ夏型♂

 

2023年9月下旬・午前11:55頃・くもり 

田園地帯の農道に咲いたシロツメクサの群落でキアゲハ♂(Papilio machaon hippocrates)が訪花していました。 
この組み合わせは初見のため、興奮して動画を撮り始めました。 
キアゲハ♂は羽ばたきながら口吻を伸ばして吸蜜しています。 
花蜜の量が少ないのか、キアゲハはシロツメクサの花から花へ忙しなく飛び回るのでズームインが間に合わず、すぐに飛び去ってしまいました。 

短い吸蜜シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。


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2024/09/22

越冬用の巣穴近くに設置したトレイルカメラを警戒して倒すニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年11月下旬・午後22:35頃・ 

休耕地(枯野)でニホンアナグマMeles anakuma)の越冬用営巣地をローアングルの至近距離からトレイルカメラで見張ってみました。 
すると早速、夜霧の立ち込める晩にアナグマが登場しました。 

おそらく出巣直後と思われるアナグマが、地面の匂いを嗅ぎながらカメラに近寄って来ました。 
野生のニホンアナグマをこれほど超至近距離から撮影できたのは初めてです。 
左右の目の大きさは同じ個体でした。 
つまり、顔馴染みの母親♀(右目<左目)ではありません。 
遂にトレイルカメラの存在に気づくと、鼻を近づけて匂いを嗅ぎまくります。 
アナグマの顔がレンズに近づき過ぎて、何が写っているのか分からくなりました。
やがてアナグマがカメラをひっくり返したようで、地面の枯草しか写らなくなりました。 
コンクリートブロックの重りにカメラをベルトでしっかり固定してなかったら、アナグマに持ち去られたかもしれません。 
その後もアナグマは、邪魔なコンクリートブロックをぐいぐい押しているようです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ アナグマが立てる物音や鼻息が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


【考察】
せっかくトレイルカメラの設置場所を新しく試してみたのですが、1回の試行で駄目だと分かりました。 
まず第一に、毎晩気温が下がると霧が発生し、朝になっても夜露で下草(枯草)がびっしょり濡れる環境でした。 
地面にローアングルで設置したトレイルカメラのレンズが結露して、なかなか乾かないために、鮮明な映像がほとんど撮れずにフラストレーションがたまります。 
レンズの結露を自動的に拭いてくれるワイパーが欲しくなります。 

もう一つの問題は、設置場所がアナグマの巣穴に近すぎて露骨に警戒されたことです。 
興味津々でカメラの匂いを嗅ぐアナグマの迫力ある映像が至近距離で撮れたところまでは良かったのですが、トレイルカメラを乱暴にひっくり返されてしまいました。 
重りとしてコンクリートブロックにくくりつけておいたので、幸いカメラをどこかに持ち去られずに済みました。 
カメラを壊されることもありませんでした。

アナグマにストレスを与えてしまっては元も子もないので、早々に監視カメラおよびコンクリートブロックを撤収し、元の設置場所(営巣地を遠くから見下ろす樹上)に戻しました。 
巣穴の横に見つけた溜め糞場に通ってくるのがアナグマなのかタヌキなのか、トレイルカメラで確かめたかったのですが、それは不可能になりました。 
やや遠くから営巣地全体を旧機種のトレイルカメラで監視するとなると、赤外線が弱くて溜め糞場まで届かないのです。 
センサーで点灯する赤外線投光器を別に買い足せば解決するかもしれません。

トレイルカメラは設置してしまえばあとは「果報は寝て待て」(あとは野となれ山となれ)というお気楽な撮影法ですけど、それでも野生動物との知恵比べや試行錯誤が必要になります。 



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