2023/11/17

小川の丸木橋を渡るホンドテン【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年4月下旬 

小川に架かる天然の丸木橋を自動センサーカメラで見張っていると、真夜中にホンドテンMartes melampus melampus)が登場しました。 
画面の手前から奥に向かって小川が緩やかに流れています。 


シーン1:4/28・午前0:00 
テンが丸木橋を伝って右岸から左岸へ渡りました。 
前回のイタチよりも体長が大きいので、私にもテンだと分かりました。 



シーン2:4/28・午前0:05 
約4分後に再びテンが右岸から左岸に丸木橋を渡りました。 
別個体だとすれば、♀♂つがいが互いに少し離れて活動しているのでしょうか。 
もしも同一個体なら、小川の少し下流にある別の丸木橋(倒木)を伝って右岸に戻って来た可能性もあり得ます。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施して明るく加工しています。


今泉忠明『イタチとテン』を読んでいたら、丸木橋を渡るテンの習性について書いてありました。
テンを専門にとる猟師は、テンが渓流沿いを徘徊し、倒木などが倒れ掛かってできた自然の丸木橋などを渡る性質があることを知っており、猟師はそうした倒木などをあらかじめ一掃し、新たに一本橋をかけ、テンがそれに慣れて渡るようになった時を見計らってトラバサミやくくり罠を仕掛ける。 (p105より引用)



山中の泉に沈んだアカマツの落枝に産み付けられたトウホクサンショウウオの卵嚢

 

2023年4月中旬・午後13:30頃・晴れ 

里山の根雪がすっかり溶けたのを見計らって、山中から地下水が湧き出る水場へ久しぶりの定点観察に行きました。 
岸辺のあちこちにゼラチン質の巨大な卵嚢が幾つも産み付けられていました。 
この泉にはトウホクサンショウウオHynobius lichenatus)生息していることが分かっているので、おそらくトウホクサンショウウオ♀が最近産み付けたばかりの卵嚢でしょう。 



岸辺の浅い水中に産み付けられた大きな卵嚢を右手で掬い上げてみると、ブヨブヨの触感で捉えどころがありません。 
くるんとカールした勾玉のような形状でした。 
岸辺の卵嚢は何にも固定されておらず、水底にゴロンと転がっているだけです。 
胚発生が少し進んでいたものの、まだ自発的な動きはありませんでした。 

サンショウウオには溜まり水など流れのない水(止水)に産卵するものと、産地の谷川など流れのある水(流水)に産卵するものがいる。(秋田喜憲『石川県能登宝達山のサンショウウオ物語:サンショウウオに魅せられて40年』p12より引用)

撮影現場は水の流入および流出があるものの、どちらに分類されるかと言えば止水域です。 

wikipediaによれば、トウホクサンショウウオは
雪解けを迎える3月から6月が繁殖期で、止水域に20-100個でひとかたまりの卵を産む[4]。

実は、池畔の崖に立っていたアカマツが冬の間に積雪の重みに耐え切れず真っ二つに折れてしまい、池の中にアカマツ倒木の枝が突き刺さっていました。 
(あるいはひょっとすると、落雷を受けたのかもしれません。)
水温が低いために、松葉が枯れずに緑色のままです。 
水中のアカマツ落枝にもトウホクサンショウウオの卵嚢が多数産み付けられていました。 
落枝ごと水中から外に引き上げてみると、卵嚢は自重で細長く垂れ下がり、印象がまるで変わりました。
卵嚢がちぎれることはありませんでした。 
アカマツの枝先や針葉に卵嚢が固定されているようです。 

トウホクサンショウウオの産卵シーンを観察できず、残念でした。 
来年以降の宿題として持ち越します。
もっと残雪のある早春に来る必要がありそうです。
この日はトウホクサンショウウオの成体を1匹も見かけませんでした。 
既に繁殖を終えて陸地に帰ったのか、それとも私を警戒して水中に逃げ込んだのか、分かりません。

水場でヤマアカガエルの卵塊が見つかるかと期待して山を登って来たのに、意外にも全くありませんでした。 
この泉でヤマアカガエルは繁殖しないのでしょうか? 
それとも、今春は大量のアカマツ落枝で池の水面がほとんど埋め尽くされたせいで産卵できなかったのかもしれません。

それから、アズマヒキガエルの卵塊も見つかりませんでした。 
ヒキガエルの繁殖期(カエル合戦)にはまだ時期が早そうです。 

水場に無人カメラを設置してサンショウウオやカエルの産卵シーンをなんとか撮影したいところです。
しかし両生類は変温動物のため、いくら激しく動き回ってもトレイルカメラのセンサーが反応してくれないのが問題です。 

ひょっとしたら水中の落枝をそのままにした方が、トウホクサンショウウオは捕食を免れてよく育つのかもしれません。 
しかし放置すると野鳥や野生動物が水場として利用しにくそうなので、撮影後はアカマツの倒木や落枝を撤去しました。 

ところで、動画撮影中に周囲の雑木林からツツピーツツピー♪というシジュウカラ♂(Parus minor minor)の囀りさえずりが繰り返し聞こえます。 

本当はトウホクサンショウウオの卵嚢を採取して持ち帰り、飼育してみたいところです。
あれこれ手を広げ過ぎてしまい、忙しくてとても余力がありません。 
できる限り定点観察に通うことにします。
調べてみると山形県のトウホクサンショウウオは 準絶滅危惧種(NT)に指定されているので、採集は控えるべきかもしれません。


同じ山系で雪解け水が溜まった別の池でもトウホクサンショウウオ♀が産んだと思われる卵嚢を先日見つけています。




そちらの池は標高が低くて日当たりも良いので、水温が高そうです
産卵時期も少し早く、胚発生も早く進行するでしょう。

それに対して、雑木林に囲まれた山中の水場は標高が高くて日当たりが良くありません。
しかも地下水の湧き水は夏でも冷たい(水温が低い)ため、トウホクサンショウウオの胚発生はゆっくり進行すると思われます。




【追記】
ネットで調べ物をしていたら、興味を引く文献を見つけました。
藤原愛弓, and フジワラアユミ. "宮城学院女子大学構内における準絶滅危惧種トウホクサンショウウオの産卵地の発見と個体数の推定." 宮城學院女子大學研究論文集 130 (2020): 47-57.
ありがたいことに、全文PDFがダウンロード可能です。
ざっと斜め読みしてみると、私の観察とそっくりの産卵環境が報告されていて驚きました。
MG 産卵地の周囲や水底には、周辺に生育する落葉・常緑広葉樹の落ち葉が厚く堆積しており(写真 4)、主に樹幹部から落下してきたと思われる枯れ枝や数本の倒木が、MG 産卵地の中の数か所に半分没した状態で確認できた。
 卵嚢が多く産み付けられていた場所は、倒木の下(写真 5)や木の枝(写真 6)であった。
広葉樹のみならず、アカマツの枝や葉にも産み付けられていた(写真 7)。同所的に最も多くの卵嚢が産み付けられていたのは倒木の下であり、3 月 19 日には水中に半分没した倒木の側面から下面にかけて、計 24 個の卵嚢が確認された。一方で、落ち葉が堆積した場所に、そのまま産み付けられている卵嚢も確認された。


【追記2】

平凡社『日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類』を紐解いてトウホクサンショウウオの産卵生態について調べると、

透明でバナナ状の卵のうの表面に多数のしわがある点で、トウキョウサンショウウオやクロサンショウウオと区別できる。

 3〜6月の 雪どけのころに、繁殖個体が止水に集まり産卵する。止水といっても、(中略)山間の細流のよどみなどのようなわずかに流れのあるところが好まれる。♀は水中の石の下の枯れ枝などに1対の透明な卵のうを産みつける。1匹の♀が産む卵の大きさや卵数は地域により大きく異なるが、直径2.4〜3.2mmほどの卵を20〜100個産卵する。(p13より引用)

卵嚢表面の皺については、私が撮った写真でも確認できます。 

2023/11/16

春の繁殖期に2頭のニホンアナグマが巣穴の近くで出会っても穏やかに過ごす理由とは?【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年4月中旬・午前0:31 

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)の営巣地(セット)を自動センサーカメラで監視しています。 
真夜中に手前の巣穴Rから出た個体aが右の林縁に居ます。 
もう1頭bが奥を右にゆっくり歩いていきます。 
aが身震いしてから奥に行ってbと合流し、二次林の中に向かったようです。 
死角に入ったシーンは退屈なので、5倍速の早回し映像に加工しました。 

しばらくすると、右から戻ってきました。 
 手前の巣穴Rに近づいたところで、録画が尻切れトンボで打ち切られました。 (入巣Rシーンが撮れず。) 
もう1頭も奥から戻って来ました。 

これまで、巣穴の主である♀が夜這いに通う♂を激しく追い払うシーンを何度か見てきました。 
それに対して、今回の映像はのんびり平和なニアミスでした。 
撮影当時はその理由がさっぱり分からず首をひねっていたのですが、今になって見直すと解釈できるようになりました。 
今回登場した2頭は成獣の♀♂ペアではありません。 
普段から同じ巣穴に住んでいる母親とヘルパーの組み合わせだから、巣外で出会っても敵対しないのです。 

岩波生物学辞典 第4版』によると、
(子守行動とは)同一社会集団内で,母親以外の個体が幼児や子の保護・世話をすること.この行動をする個体をヘルパー(helper)という


ヘルパーが助ける相手は自分の両親か兄姉などの血縁個体であるのがふつうで,その場合には養育の成功が自分の()包括適応度の向上に結びついていることになる.また血縁関係がない場合でも条件の良い生活環境に住むことで生存率が高くなったり,なわばりを継承しやすくなるなどの利益を得ていると考えられる. 


アナグマ関連の本を読むと、ニホンアナグマのヘルパーは若い息子♂だとされているのですが、この動画でヘルパーの外見は♀タイプです。 
成体♂に性成熟するまで、若い♂の外見は♀と似ているのかな? 
それとも通説に反して、若い娘♀も母親のヘルパーになり得るのかもしれません。 
股間の外性器や乳首を見るまで、私には性別をしっかり見分けられません。 

※ 動画編集時に自動色調補正を施して明るく加工しています。 

今はトレイルカメラの設置アングルを試行錯誤しているところです。 
後に母親♀とヘルパーの仲睦まじい様子を好アングルからしっかり撮れるようになったので、お楽しみに。(映像公開予定)


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