2018/05/27

ヒメスズメバチ♀の奇妙な扇風行動【HD動画&ハイスピード動画】



柳の根際に営巣したヒメスズメバチの記録#4

前回の記事#3

2017年9月中旬・午後15:27〜15:35・気温28℃

前庭で巣穴の方を向いて休んでいたヒメスズメバチ♀(Vespa ducalis)が突然、その場で羽ばたき始めましたので驚きました。
実際は飛翔時のように猛烈な勢いで羽ばたいているのですが、映像ではストロボ効果の錯覚により羽ばたきが遅く見えています。
休息を挟みながら扇風行動を断続的に繰り返していました。

後半は、定位飛行および扇風行動の羽ばたきを240-fpsのハイスピード動画でも撮影してみました。(@3:01〜)
♀αが扇風行動を止め前庭で休んでいると、別個体♀βが飛来しました。(@4:04)
それに反応して飛び立つと、すれ違う際に接触し、♀αはバランスを崩して一瞬着地。
♀βはさっさと巣に入りました。
♀αは低空で定位飛行を続けます。
スローモーションで見ると、空中でホバリング(停空飛翔)している間も頭がキョロキョロと油断なく動いていました。
アシナガバチとは異なり、飛翔中は空気抵抗を減らすために脚を縮めて体に引きつけています。

スズメバチ類は真夏に気温が約30℃を越えると、育房内の幼虫や蛹を守るために巣を冷やそうとワーカーが巣の外被上で羽ばたいて扇風行動を行います。
巣口に風を送り込んで巣内の温度を冷やすのです。
しかし、今回の個体は巣の外被から離れている上に頭を巣に対して斜めを向けています。
したがって、いくら羽ばたいても風が巣には送り込まれず、体力の無駄でしかありません。
扇風による巣の冷却や換気の効果は全く期待できないことになります。
撮影しながら気温を測ると28℃でした。
日向の地面はもう少し暑くて30℃を越えていた可能性があります。
前庭の地表温度を測りたかったのですが、この個体が居座っているために近づけませんでした。
日光浴して暑くなったのなら日陰に移動すれば済む話なのに、わざわざ体力を消耗する扇風行動を行う意味が分かりません。
むしろ日向で定位飛行や扇風行動などの激しい運動をすれば体温は更に上昇するはずです。
もし捕獲したスズメバチを飼育中に室温を上げたら、たとえ巣がなくても簡単に扇風行動を誘発できるのか、確かめてみたいものです。

昆虫は変温動物なので、飛び立つ前に飛翔筋の入念な準備運動をして体温を上げる必要がある種もいます。(体重の重い昆虫や、気温が低い夜に活動する種など)
しかし、日向で日光浴をしているヒメスズメバチの体温は充分に高いはずです。

巣の前庭で扇風しながら腹端をやや持ち上げているため、もしかすると交尾前の新女王が雄蜂を誘引する性フェロモンを積極的に拡散しているのだろうか?と素人が勝手な妄想を逞しくしてみました。(私の知る限り、スズメバチでそのような行動は報告されていません)
この仮説は、ミツバチによる「匂い扇風」から連想したものです。
しかし、観察をしばらく続けても、営巣地の周囲にヒメスズメバチの雄蜂♂が殺到することはありませんでした。

柳の根際の土中に作られた巣が掘り返された(崩落した?)形跡があるため、そもそも異常な行動を見ているだけ、という可能性もあります。
巣が壊され女王蜂を失うとコロニーの統制が喪失し、ワーカー♀が呆然と様々な異常行動を示すようになるのかもしれません。
以前、山中で観察したチャイロスズメバチの巣が壊された後の行動も、巣を再建せずに呆然と無為に過ごしているようでした。

▼関連記事
破壊された巣とチャイロスズメバチ♀残党

謎の行動を繰り返している個体が1匹だけというのが、とにかく奇妙です。
一見無駄に見える定位飛行や扇風行動を繰り返しているのは、とにかく元気が有り余っている個体なのでしょうか?
それとも異常行動なのでしょうか?
ネジレバネなどに寄生された個体が異常行動を取るようになったのか?とか、巣を駆除する際に使われた殺虫剤(神経毒)が残留していて、その影響で異常行動をするようになったのか?などと想像してしまいます。


ヒメスズメバチのコロニーが解散したら初冬にでも巣の発掘調査をしようと計画していたのに、どうも何者かに巣を壊されてしまったようなのです。
巣の破壊状況を早く自分の目で確認したいのはやまやまなのですが、高価な防護服を持っていない私はなかなか巣に近づけません。
それでも安全に巣を調べる工夫を思いつきました。

つづく→#5:壊されたヒメスズメバチの巣穴を深夜に覗いてみると…【暗視映像】


ノスリを追いかけモビングするハシボソガラス(野鳥)



2017年5月上旬

住宅地と農耕地が混在する郊外の上空で、猛禽類とハシボソガラスCorvus corone)が1対1で空中戦を繰り広げていました。
繁殖期のカラスが天敵にモビング(擬攻撃)を行い縄張りから追い払おうとしているようです。
近くにハシボソガラスの巣があるのでしょう。

猛禽類の翼の下面をよく見ると、ノスリButeo japonicus)でした。

途中から攻守交代し、追い回されていたノスリがカラスに反撃しました。
カラスが必死に逃げ出した隙に、ノスリは戦闘空域を離脱しました。


※ 今回は動画編集時に手ぶれ補正処理はしていません。
背景がほとんど何もない青空だと、あまり効果が無いのです。



2018/05/26

出巣をためらうヒメスズメバチ♀の謎



柳の根際に営巣したヒメスズメバチの記録#3

前回の記事#2
2017年9月中旬

前回の動画の続きです。
柳の根際の地中に営巣したヒメスズメバチVespa ducalis)の巣穴がどうも壊されている(崩落した?)ようでした。
巣穴の手前にある地面を前庭と呼ぶことにします。
この前庭での休息と低空での定位飛行をひたすら繰り返しているおかしな♀個体がいます。
定位飛行で巣の位置を記憶したらさっさと外役に出かけるはずなのに、なぜか躊躇しています。

巣に出入りしている別個体が飛来すると、それに釣られるように前庭から飛び立ちます。
空中で擦れ違ったり、もつれ合うように飛んだり(ニアミス)するのですが、意図がさっぱり分かりません。
巣を守る門衛にしては、巣穴の方ばかりを気にしています。
門衛なら、別個体が飛来したときにもっと激しく迎撃に向かっても良さそうなものです。
前庭で休んでいる♀の目の前をコモリグモがチョロチョロと徘徊しても、蜂は攻撃したり追いはらったりしませんでした。
風が吹いて周囲の草が揺れると、その影に反応して蜂が身動きするのは警戒心の現れでしょうか。

続けざまに計5匹の蜂の出入りが記録映像に残されていました。
個体識別していないので、重複しているかもしれません。

もしかして、これは雄蜂♂なのかと疑い始めました。
オオスズメバチのように交尾相手の新女王が出巣するのを待ち構えている♂だとしたら、謎の振る舞いも説明できそうです。

V. mandariniaは♂が離巣する新女王を巣口周辺で待ちかまえ、その場で交尾をおこなうが、他のVespa, Vespula, Dolichovespulaのいずれの種も巣を離れた場所で♂が新女王を待ち受けるようである。 (松浦誠、山根正気『スズメバチ類の比較行動学』p23より引用)


ネット検索で見つけたのですが、『都市のスズメバチ』サイト内に「高層ビルの上部を集団飛行するヒメスズメバチの交尾行動」と題した詳細なレポートが掲載されていました。
名古屋市という都市環境では、高層ビル最上階の周囲をヒメスズメバチの雄蜂♂が群飛して、そこを目掛けて飛んでくる新女王と交尾するのだそうです。

時期的にヒメスズメバチの雄蜂や新女王が羽化していても不思議ではありません。
森林総合研究所の森林生物情報によると、

(ヒメスズメバチは)9月には営巣を終える。すなわち他のスズメバチより営巣開始が遅く,巣の解散は早い。これはアシナガバチの営巣期間に合わせるためと言われる。
しかし、♂はもっと触角が長いはずです。(自信が無くなってきた…)


前庭で休憩中の個体の触角。12節なら♀、13節なら♂なのですが、どうでしょう?

性別をしっかり確かめるために採集したかったのですが、この日は捕虫網などを持参していなかったので諦めました。
♀だとしても採集できていれば、体長も測れてカースト(ワーカー♀/新女王)が判明したはずです。


(ヒメスズメバチ)女王の体長24~37mm。働きバチは平均的には女王より小さいが,しばしば中間的な大きさのものが見られ,外形だけの区別は困難なことが多い。 (森林総合研究所の森林生物情報より引用)


一般的なスズメバチは、サイズが女王蜂>オス蜂>働き蜂の順だが、ヒメスズメバチには特に差は見られない。(wikipediaより引用)
スズメバチ類の新女王は一般に定位飛行を行わないらしいので、この個体はやはりワーカー♀なのでしょうか?
十分に成熟した♂と新女王は、相前後してつぎつぎと巣を離れていく。いったん、巣を離れるとふたたび戻ることがないため、ハタラキバチがはじめて巣を離れるときにおこなう定位飛行を巣口の周辺でおこなわずに、まっすぐに巣口を飛び離れ、思い思いの方向に飛び去る。 (松浦誠、山根正気『スズメバチ類の比較行動学』p22-23より引用)


やがて、前庭で休んでいる個体が更に奇妙な行動を始めました。

つづく→#4:ヒメスズメバチ♀の奇妙な扇風行動【HD動画&ハイスピード動画】



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