2012/11/15

ジガバチの営巣:獲物を狙う寄生ハエとの死闘#1



2012年8月上旬

狩りに成功したジガバチ♀(※サトジガバチまたはヤマジガバチ?)が営巣地に意気揚々と帰還。


※ 後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。
 獲物としては大型で、体長はジガバチよりも大きな褐色の芋虫でした。
(ヤガ科のキリガ亜科またはヨトウガ亜科の幼虫、いわゆるヨトウムシの一種らしい)
毒針で麻痺した獲物の頭部を前に向け腹合わせにして跨り、大顎で挟んで抱えます。
運搬法は飛べずに前進歩行です。
仰向け状態の芋虫を大顎で前2/3辺りを挟んでいます。
運搬に疲れたのか蜂は途中で立ち止まって休憩。
(疲労というよりも、天敵である寄生バエが近くに居ないことを確かめていたのかもしれません。)
一息つくと、ジガバチ♀は一気に直線的に巣へ向かいました。
戸締りしていた巣口のすぐ横に獲物を置くと、足で地面を掻き始めました。
横に転がっている松ぼっくりが目印だったのでしょうか?

偶然ですがティンバーゲンの実験を思い出します。
もし松ぼっくりの位置をずらしていたら、蜂は迷子になったでしょうか?

先程ジガバチ♀が掘り上げた後に一時閉鎖した巣穴とは近いものの別物であることに気づきました。
それだけここはジガバチに人気のある営巣地なのでしょう。
この段階では蜂を個体識別していませんが、2匹のジガバチ♀は別個体と思われます。
蜂は巣穴に詰め込んでいた閉鎖石を咥えて取り出すと、巣口のすぐ横に置きました。
貯食後の永久閉鎖の際に再利用するのでしょうか?
ところが次第に閉塞石を咥えて飛び立ち、空中から捨てるようになりました。
大きくて重い閉塞石は巣口の横に置き、小石は空中散布する方針なのかな?
アリが近寄るとジージー♪すごい剣幕で撃退。

レンズを近づけると、せっせと働く蜂の羽音♪がよく聞こえます。
ここでファーブルの真似をして少し悪戯してみることに。
蜂が閉塞石を捨てに出かけた間にこっそり芋虫を摘み上げ、巣口横から少し離した場所に移しました。
果たして蜂は異変に気づくでしょうか?
(操作実験は、自然な営巣例を一度きちんと見届けてからにすべきだったかも。)
そこへ小さな寄生ハエが数匹飛来しました。(@4:48)

松ぼっくりの上に止まってジガバチの様子を見張っています。

ジガバチは作業の合間に芋虫に集っていたアリを追い払いました。
私が獲物の位置をずらしたことに前から気づいていたようです。
特に狼狽したり探し歩く様子もなく、勝手に動いた獲物を再び毒針で麻酔することもありませんでした。
隙を見て、獲物の横に定規を置いて採寸してみます。
蜂も獲物の元に戻ってきてくれたので、一緒に身体測定できました。
しかしこれはやり過ぎの介入だったかもしれません。
色付きの定規を置いたせいで巣口周辺の環境が(蜂にとって)激変したためか、不安そうに動かなくなりました。
獲物を咥えてガードするように離しません。

定規はすぐに取り除きました。

落ち着いたら次はいよいよ巣坑に獲物を貯食するかと思いきや、予想外の展開が起こりました。
小さな寄生ハエの接近に驚いたように、ジガバチ♀は獲物を曳いて逃げ出しました。(@9:20)

せっかく開いた巣穴を素通りして逃げて行くジガバチの後を寄生ハエがピョンピョン跳ぶようにしつこく追跡しています。

動画編集で手ブレ補正を施した際に若干デジタルズーム処理されています。そのため、肝心の寄生ハエは画面の縁に見切れそうなぐらい辛うじて映っているだけになってしまいました。
獲物を抱えて休み休み逃避行を続ける蜂は、裸地に少し草が生えた場所で立ち止まりました。
しつこい天敵を上手くまいたでしょうか?
もしジガバチが獲物の搬入や産卵を強行していたら、寄生ハエに幼虫をすばやく産み付けられ、せっかく苦労して狩った獲物や蜂の子も蛆虫に捕食寄生されていたことでしょう。

しかし巣坑の位置を寄生ハエに知られてしまった以上、ジガバチ♀に勝算はあるのでしょうか?

つづく。

【参考】
アリに盗まれないように獲物を草の上などに運ぶこともありますが、サトジガバチではこの行動はあまり見られません。(『狩蜂生態図鑑』p29より)




巣口の大きさを1円玉で比較

ガードレール上を走るニホンザルの群れ



2012年6月中旬

里山の雑木林から車道に下りた野生ニホンザル(Macaca fuscata
)がガードレールの上の縁を平均台や綱渡りのように小走りで遊動し始めました。
続々と猿が現れ、器用に同じルートを通ります。

恐るべき身体能力ですね。


2012/11/14

ジガバチ♀の巣坑掘りから一時閉鎖まで



2012年8月上旬

今回の営巣地は日当たりの良い尾根道の裸地で水平な地面です。
ジガバチ♀(※ヤマジガバチまたはサトジガバチ?)が斜めに巣坑を掘っています。


※ 後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。

小石を咥えて出てくると飛び立ち、空中から捨てに行きます。
どうやら独房を掘り上げたようです。
今度は巣穴を一時閉鎖するために手頃なサイズの閉塞石を探し始めました。

どうせまたすぐ埋め戻すのなら、先程掘り出した小石を一箇所に集めて置いておけば良いのにと思うのですが、蜂にそこまでの知恵はないようです。(何か理由がある?)
小石を咥えて帰巣するのに手間取っています。
迷子になったのか、ジグザクに歩いて探索しているようにも見えます。
それとも、天敵のアリや寄生バエに巣の位置を悟られないよう、警戒している(敵を巻いている)のでしょうか?
初めに持ち込んだ石は大き過ぎたのか、何度か試した後に捨てました。
巣坑からなぜか枯れた松葉を引きずり出して捨てました。
テトリスでもするように、咥えた閉塞石の向きを変えながら巣坑に詰め込みます。
貯食完了後の永久閉鎖作業とは違い、押し固め行動を伴わず、ジージー♪鳴くこともありません。
小石や砂利で大方埋め終わると、後ろ向きになって脚で地面をかき、砂をかき入れます。
砂利詰めと砂かけを交互に行います。
もう一つ永久閉鎖作業と違うのは、営巣地の偽装工作もやりませんでした。
もしかするとこの営巣地では偽装不要と判断して省略したのかもしれません。
裸地に枯葉を集めて被せた方が不自然でしょう。

巣穴の一時閉塞(戸締り)が完了すると、触角で激しく地面を叩きながら歩き回ります。
通りがかったアリを撃退しました。
巣穴の位置を記憶する(定位)ための徘徊行動のように思いました。

他の蜂でよく見られる定位飛行ではなく、定位歩行?
目印となるような大きめの小石や木片で立ち止まり、念入りに触角で調べています。
アリのように道標フェロモンを付けているかもしれません。

動物行動学のパイオニアで1973年にノーベル賞生理学・医学賞を受賞したティンバーゲンはジガバチの一種(日本にはいない種類?)で帰巣能力の実験を行い、化学的情報(道標フェロモン)ではなく視覚情報(目印)で巣の位置を記憶することを証明しています。
教科書に載っているこの古典的で単純(エレガント)な実験をいつか私も真似して日本のジガバチでやってみたいものです。
例えば古い本ですが『無名のものたちの世界I』p44には「図形を覚えているジガバチ」という図版でこの実験を説明しています。こちらのサイトでも簡単な解説があります。英語のサイトですが、解説図版を見つけました。 

ジガバチの営巣行動の前半部をようやく観察することができました。
狩りに出かけた蜂の帰りを待ちます。

つづく→「
ジガバチの営巣:獲物を狙う寄生ハエとの死闘#1」。

【追記】
ヤマジガバチでは体重の10倍以上もある小石を運んだ観察例がある。(『日本動物大百科10昆虫Ⅲ』p44より)




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