2012/11/14

ジガバチ♀の巣坑掘りから一時閉鎖まで



2012年8月上旬

今回の営巣地は日当たりの良い尾根道の裸地で水平な地面です。
ジガバチ♀(※ヤマジガバチまたはサトジガバチ?)が斜めに巣坑を掘っています。


※ 後日、同じフィールドで捕獲した♀♂はヤマジガバチと写真鑑定して頂きました。

小石を咥えて出てくると飛び立ち、空中から捨てに行きます。
どうやら独房を掘り上げたようです。
今度は巣穴を一時閉鎖するために手頃なサイズの閉塞石を探し始めました。

どうせまたすぐ埋め戻すのなら、先程掘り出した小石を一箇所に集めて置いておけば良いのにと思うのですが、蜂にそこまでの知恵はないようです。(何か理由がある?)
小石を咥えて帰巣するのに手間取っています。
迷子になったのか、ジグザクに歩いて探索しているようにも見えます。
それとも、天敵のアリや寄生バエに巣の位置を悟られないよう、警戒している(敵を巻いている)のでしょうか?
初めに持ち込んだ石は大き過ぎたのか、何度か試した後に捨てました。
巣坑からなぜか枯れた松葉を引きずり出して捨てました。
テトリスでもするように、咥えた閉塞石の向きを変えながら巣坑に詰め込みます。
貯食完了後の永久閉鎖作業とは違い、押し固め行動を伴わず、ジージー♪鳴くこともありません。
小石や砂利で大方埋め終わると、後ろ向きになって脚で地面をかき、砂をかき入れます。
砂利詰めと砂かけを交互に行います。
もう一つ永久閉鎖作業と違うのは、営巣地の偽装工作もやりませんでした。
もしかするとこの営巣地では偽装不要と判断して省略したのかもしれません。
裸地に枯葉を集めて被せた方が不自然でしょう。

巣穴の一時閉塞(戸締り)が完了すると、触角で激しく地面を叩きながら歩き回ります。
通りがかったアリを撃退しました。
巣穴の位置を記憶する(定位)ための徘徊行動のように思いました。

他の蜂でよく見られる定位飛行ではなく、定位歩行?
目印となるような大きめの小石や木片で立ち止まり、念入りに触角で調べています。
アリのように道標フェロモンを付けているかもしれません。

動物行動学のパイオニアで1973年にノーベル賞生理学・医学賞を受賞したティンバーゲンはジガバチの一種(日本にはいない種類?)で帰巣能力の実験を行い、化学的情報(道標フェロモン)ではなく視覚情報(目印)で巣の位置を記憶することを証明しています。
教科書に載っているこの古典的で単純(エレガント)な実験をいつか私も真似して日本のジガバチでやってみたいものです。
例えば古い本ですが『無名のものたちの世界I』p44には「図形を覚えているジガバチ」という図版でこの実験を説明しています。こちらのサイトでも簡単な解説があります。英語のサイトですが、解説図版を見つけました。 

ジガバチの営巣行動の前半部をようやく観察することができました。
狩りに出かけた蜂の帰りを待ちます。

つづく→「
ジガバチの営巣:獲物を狙う寄生ハエとの死闘#1」。

【追記】
ヤマジガバチでは体重の10倍以上もある小石を運んだ観察例がある。(『日本動物大百科10昆虫Ⅲ』p44より)




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