クロアゲハの飼育記録:その4
2012年7月中旬・室温26℃
4齢幼虫は食欲が落ちて眠の状態に入りました。
『カラー自然シリーズ28アゲハチョウ』p12によると
幼虫の成長は、気温に左右されますが、ふつう4齢になって5~6日たつと、幼虫が動かなくなります。餌も食べず、前足(胸脚)を浮かせてうずくまります。脱皮前の休眠です。休眠は、半日から1日続きます。頭の付け根や白い帯の部分が、緑色に見えてきたら脱皮は間近です。
ところが油断していたら脱皮の瞬間を見逃してしまいました。
それまで若齢幼虫は鳥の糞に擬態していましたが、一皮剥けると緑色の保護色に変身しました。
これで4齢から5齢に脱皮したと分かりました。
また、採集して以来ずっとナミアゲハの幼虫かと予想していたのですが、5齢になって初めてクロアゲハの幼虫と判明しました。
『イモムシ ハンドブック』p18によると、
クロアゲハ終齢幼虫の斜帯は茶褐色で淡色の網目模様があり、背面で切れない。
脱皮の過程を微速度撮影する計画だったので残念無念…。
本で調べるとクロアゲハの幼虫は終齢が5齢らしいので、これが最終脱皮となります。
仕方がないので悔し紛れに、脱皮直後の幼虫の様子を微速度撮影してみました(10倍速の早回し映像)。
新しい体が固まるまで、山椒の枝に掴まって休んでいるようです。
脱皮直後の5齢幼虫は緑色が未だ薄いです。
しばらくすると5齢幼虫はいつの間にか体の向きを変え、萎れかけたサンショウの葉裏に残った脱皮殻を食べていました。
これは本で予習していた通りの行動です。
カラー自然シリーズ28『アゲハチョウ』p15には脱皮殻を食べるアゲハ終齢幼虫の写真が掲載されています。
頭楯の脱皮殻は下に落ちてしまっています。
葉ごと食べるのではなく、抜け殻だけを刮げるように食しています。
たった数分で脱皮殻はきれいさっぱり無くなりました。
わずかに滓が残っている程度です。
食べ終わった幼虫はUターンして茎を登り始めました。
食草を食べる食欲は未だありません。
もし脱皮殻を取り上げて食べさせないようにすると、その後の発育にどう影響するのでしょう?
機会があれば調べてみたいものです。
- 複数個体で対照実験が必要。
- 抜け殻を取り上げて別個体の幼虫に与えたらどうなるか?
栄養を無駄にしないという目的の他に、天敵に存在を悟られないよう脱皮の痕跡を残さないようにしているのかもしれません。
【追記】
藤丸篤夫『アゲハチョウ観察事典』によれば、少なくともナミアゲハの場合は
ぬいだ皮は、脱皮するたびにたべてしまいますが、卵の殻のときとおなじように、たべさせないでそだててみてもちゃんと成長します。(p12より引用)
つづく→「クロアゲハ♀5齢幼虫の排便」
2012年7月中旬・気温25℃
神社の境内で赤土が露出した地面にエントツドロバチ(別名オオカバフスジドロバチ;Orancistrocerus drewseni)が何匹も巣材集めに通って来ています。
軒下に固く締まった地面を大顎で削り取りながら、吐き戻した水とこねて泥玉を作り、泥巣を作る材料とするのです。
果たして何匹のエントツドロバチ♀が採土に通っているのか個体識別してみることにしました。
蜂をいちいち捕獲・麻酔・標識するのは面倒ですし、蜂にも負担(ストレス)がかかります。
地面で夢中になって泥玉を作っている蜂を狙って、腹背に素早く油性ペンでちょんと印を付けてみました。
大型の蜂だからこそできる芸当です。
体に触れられた蜂は驚いて飛び去りますが、この程度で反撃したり刺したりすることはありません。
水色と桃色の2色で一匹ずつマーキングに成功しました。
三脚に固定したカメラで動画撮影したのですが、標識作業はうまく撮れませんでした。(カメラのアングルを考える余裕がなく、肝心の手元が腕で死角になってしまった。)
マーキングされた蜂はしばらく姿を見せなくなり、心配になりました。
しばらく待つと採土を再開してくれたので一安心。
♀水色を個体標識する際に手元が狂ってインクがドバっと出てしまいました。
右翅も汚してしまったのですが、幸い飛翔には支障ないようです。
入れ替わり立ち替わり採土場に飛来し、泥玉を作って帰巣するエントツドロバチ達の様子をご覧下さい。
(無駄に長い動画なので、適当に飛ばしながらご覧下さい。)
観察で気づいた点を箇条書きに。
- 少し離れた位置に着陸しても、結局お気に入りの採土場に歩いて到着。
- 泥玉が完成すると、地上で羽ばたいたり身繕いしてから飛び立つ。
- もう採土場に通い慣れて完全に記憶しているためか、泥玉を抱えて飛び去る際に定位飛行を披露する蜂はいない。
- 採土場で♀同士が出会っても激しい干渉や喧嘩にはならない。一方、例えば採土しているスズバチ同士は出会い頭に激しく喧嘩します。
- 写っている採土場の中でも更に土質の優れた一等地があるような印象。順番待ちしてでもなるべくお気に入りの一等地から採土する傾向?
- いかにも獲物となりそうな尺取虫が近くの地面を徘徊したときも、採土モードで頭がいっぱいのエントツドロバチは見向きもせず、狩りを行わず。
後半は採寸のため、採土場に一円玉を置いて動画に写し込みました。
映像を見る限り、蜂の体長は♀水色>♀桃色、♀無印とまちまちでした。
幼虫時代の栄養状態(育房内の貯食物の量)で成虫の体格が決まってしまうのでしょう。
♀水色が最も頻繁に採土に訪れています。
各泥巣の営巣段階に応じて巣材の需要が違うのかもしれません。
残念ながら、蜂がどこで営巣しているのか突き止められませんでした。
採土前に蜂がどこで水を飲んで来るのかも不明です。
♀桃色および♀水色の帰巣方向は二匹ともほぼ同じ北北東。
他の方角へ飛んで帰る蜂もいます。
ドロバチは原則として、単独で独立の場所に巣作りしているはずです。
しかしエントツドロバチの場合はそうとも言い切れません。
本種の営巣習性はドロバチにしてはきわめて特殊かつミステリアスです。
亜社会性を示し、羽化した娘バチは母巣にとどまって繁殖する傾向があるらしい。
エントツドロバチは一番身近に多いドロバチですが、個人的に営巣の全貌を観察するのが一番難しい蜂だという気がしています。図鑑に記述された習性を自分の目で一つ一つ実際に確認するだけでも強烈に難しいです。随時給餌を行うため営巣のペースがのんびりしていることも難しさの理由です。
残念ながら飛来する全個体をマーキングする前に夕刻となり時間切れ。
薄暗くなると蜂がぴたっと来なくなりました。
それでも、この日は少なくとも3匹のエントツドロバチ♀が同じ採土場に通っていたことが分かりました。
ただし、全てのエントツドロバチ♀が必ずしも同じ場所に通っている訳ではなく、4mほど離れた地面から採土する個体もいました。(一匹を白色で標識。映像なし)
2箇所の採土場を同時に監視することはできませんが、♀白が監視カメラに映ることはありませんでした。
実は去年も全く同じ場所でエントツドロバチの集団採土を目撃してます。(映像なし)
毎年繰り返されるのは不思議というか不気味ですらあります。
まさか前世の記憶?などと言い出すとオカルトになってしまうので、自分なりに考察してみました。
辺りには幾らでも土が露出しているのに、ここがよほど巣材に好適な土質なのだろうか?
あるいは同じ泥巣から羽化した姉妹の♀が行動圏で飛び回っている間に互いを意識して(真似して)自然と同じ採土場に集まってくるのだろうか?
エントツドロバチの乾燥標本を囮(デコイ)として何匹か適当な地面に置いておけば、仲間が採土に飛来するだろうか?
(蟻に見つかったらデコイの蜂はあっと言う間に持ち去られそうな気がします。)
母蜂がこしらえた独房で育った娘蜂は馴染みのある巣材を近所から匂いなどで探し当てる能力があるのかもしれません。
採土場に集まってくる♀がもし血縁関係にあるのなら、集合フェロモンを放出している可能性もあるかも?
【追記】
後日、何度か定点観察で通ってみたのですが、採土に来ているのは無印のエントツドロバチばかりでした。
5日後に一度だけ♀水色と再会しました。
インクに急性毒性が無いことも分かりました。
2012年7月中旬
山際の集落で出会ったホンドギツネ(Vulpes vulpes japonica)。
民家の裏をぐるっと回って逃げて行きました。
撮れたのはほんの一瞬の邂逅なので、1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみます。
るーるるるる♪とか声を掛ける暇もありませんでした。
↓手ブレ補正版(リプレイ無し)