2012年1月下旬・室温16℃
タケカレハの飼育記録
結局、夜間も眠状態のままタケカレハ幼虫bに変化ありませんでした。
関連記事→「脱皮前の眠で微動だにするタケカレハ幼虫(蛾)」朝からカメラのバッテリーを交換してインターバル撮影を再開。
動画の前半部は3時間40分を200倍速にした早回し映像です。
カメラに任せてしばらく目を離していたら幼虫の動きが突如として活発になりました。
脚で掴まっていた葉縁から幼虫の上半身がだらんと横にずり落ちカメラから死角になっていたので慌てて直しました。
ここでハプニング発生!
撮りやすいように葉を茎から切り離して床に置いたら、その後幼虫が動き回る度に枯葉の重心がずれてシーソーのようにパタパタと傾き、ややお見苦しい映像になりました。
次に気づいたときにはもう上半身は脱ぎかけでした。
脱皮殻を枯葉に残したまま少し前進。
古い頭部の殻はまだ付けたままです。
最後の20分間はインターバル撮影の設定を変えて50倍速に下げました。
遂に頭部の古い抜け殻がポロリと剥がれ落ち、無事に脱皮が完了しました。
一皮剥けると幼虫bの背中にあった瘤は無くなっていました。
寄生や腫瘍を疑っていたのですが、大丈夫かも。
脱皮間隔は19日でした。
前日に別の一匹(幼虫a)が脱皮したのも朝だったので、タケカレハが脱皮する時間帯は午前中と決まっているのかもしれません。
撮影のため蛍光灯で一日中照らしても幼虫の日周リズム(体内時計)は狂いませんでした。
あと何回脱皮してくれるか分かりませんが、微速度撮影に再チャレンジしてみるつもりです。
こうして脱皮の規則性がおぼろげながら掴めてくると撮影予定が立てやすくなります。
前日に脱皮したばかりの個体aはこの間、依然としてほとんど動きがありませんでした。
クチクラが固まるまでとにかく安静にしているようです。
夜に新鮮な食草を入れてやりました。
頭部脱皮殻の造形美がたまりません♪ |
脱皮周期同調の謎
それにしても、飼っているタケカレハ幼虫2匹の脱皮周期がほぼ同期しているのはなぜだろう?
11月下旬に採集して以来、3回とも1日のズレを保ったまま相次いで脱皮したのです。
3回も続くと偶然では片付けられない気がします。
食料資源の奪い合いという観点から考えると、片方が眠の期間にもう一匹がここぞとばかりにモリモリ摂食すれば良さそうなのに…。
一番単純な仮説としては、タケカレハという種の特性として各齢の日数(=脱皮間隔)が予めきっちり決まっていれば(個体差なし)説明可能です。
しかし食料事情や気温などに大きく左右されるはずですから、到底あり得ないでしょう。
次はもっと大胆な仮説(妄想)。
軽く密閉した容器で同居させているので、何か脱皮周期同調フェロモンのようなものを放出しているのだろうか。
ヒトの場合ですが、女子寮や修道院に住むルームメイトの月経周期が次第に同期してくる話は有名です(性周期同調フェロモン)。
脱皮前後の幼虫は無防備なのでなるべく一斉に脱皮することで天敵に対して数で対抗する戦略なのかも(「赤信号皆で渡れば怖くない♪」)、と勝手な想像を膨らませてみました。
あるいは、羽化の時期をなるべく揃えて交尾相手を見つけやすくするためかもしれません。
しかし開放的な野外では幼虫の生息密度はずっと低いはずで、揮発性のフェロモンで互いに交信するのは難しそうです。
簡単な実験として、二匹の幼虫を別居させれば脱皮周期が次第にずれてくるだろうか?
そもそも二匹の幼虫が何齢なのか私には見分けられません。
微妙な体長差があっても同じ齢数なのかな?
【追記】
色々と妄想を逞しくしたものの、2匹のシンクロ率はその後あっさり崩れました。
大柄の個体aは更に1回脱皮して終齢幼虫を経て繭を紡ぎました。
同居していた小柄な個体bは食が細くなり、全く成長・脱皮しなくなりました。
やはり内部寄生されていて幼若ホルモンや脱皮ホルモンの分泌が操作されているのではないかという疑念が拭えません。
おまけに気になる瘤(腫瘍?)のあった場所のクチクラが黒化(色素沈着)してきました。
ここの皮膚を破って寄生蜂や寄生ハエが出てくるのだろうか?
あるいは、幼虫越冬の生活史を忠実に全うしているのが個体bで、早々と繭を作って蛹化した個体aは外気温と比べて高い室温のせいで季節外れに成長した早熟な個体なのかもしれません。
【追記2】
やはりヤドリバエに寄生されていました。
つづき→「タケカレハ幼虫に寄生したヤドリバエ科の一種」