2011年12月中旬
実はこのジョロウグモ(Nephila clavata)♀成体(体長21mm)は、飼育中のコカマキリ♀に与える生き餌として採集してきたクモです。
ところがコカマキリの食欲が全く無くなり、狩りをしなくなって命拾いしました。
外は根雪になり、逃がすと寒さで忽ち死んでしまう事態になりジョロウグモの処遇に困りました。
一方、コカマキリ♀には冬の代用食として牛乳を与え始めました。
さすが完全食品だけあって、延命効果は抜群です。
関連記事はこちら→「飼育コカマキリ♀に牛乳を与える【冬の代用食】」ついでにクモにも牛乳をお裾分けしたらどうかと思いつきました。
以前、徘徊性のイオウイロハシリグモ♀を飼っていたときに、冬になってからハチミツを水に溶かして与えてみたことがあります。
関連記事はこちら→「飼育イオウイロハシリグモ♀:こっちの水は甘いぞ♪」
ジョロウグモ♀は狭い容器内で粗末な網を張って占座しています。
牛乳に浸した綿棒でクモの口元に雫を付けてみました。
網の振動を感知してクモが逃げ回るので何度か失敗したものの、ようやく上手くいきました。
(ちなみに、映像の冒頭で容器の底に付着している白い液体は牛乳ではなくジョロウグモの排泄した糞です。)
口器を接写すると、牛乳の雫を少しずつ嚥下していました。
消化液を口から出し入れしているようです(クモ特有の体外消化)。
果たして牛乳はお口に合いましたでしょうか?
しかしコカマキリ♀とは異なり、ジョロウグモ♀はその後も綿棒を嫌がって逃げる素振りが続きました(牛乳嫌い?)。
数日後は牛乳を吐き戻すようになり、残念ながら翌日死んでいました。
牛乳がジョロウグモの死期を早める結果になったのか否か、この一例だけでは分かりません。
コカマキリでは問題なかっただけに意外でした。
ジョロウグモにも乳糖不耐症があるのだろうか?
【追記】
『クモを利用する策士、クモヒメバチ: 身近で起こる本当のエイリアンとプレデターの闘い』p108によると、
だいたいの造網性クモは、飼育下で本来の造網行動ができないような状況を強いられると、本来の網型によらず共通してランダムに糸を引き渡し、糸さえあればぶら下がってとりあえず落ち着く。(中略)そのようなトリッキーな状況では、円網性種を筆頭に、餌を与えても捕虫しないことが多い。
クモに様々な薬物を経口投与して造網行動への影響を調べる※という古典的な実験があり、薬理学や動物行動学の本によく載っています。
いつか私も再現実験してみたいと思っているのですが、カフェインやアルコール以外の薬物(LSDやコカインなど)は当然一般人の手に入りません。
今回は造網性クモへ経口投与する実験の練習になったと前向きに考えることにします。
その後、オニグモ幼体(亜成体♀?)にも同様に牛乳を綿棒で給餌してみました。
ところがオニグモの腹面は毛深く、雫を弾いてしまい失敗。
生き物相手では一筋縄では行きません。
何事も実際にやってみないと分からないものだと実感しました。
【参考動画】
↑ハエトリグモに牛乳の雫を乗せた板を差し出すと、飲んでいます。(飲まない個体もいる)
「クモは肉食なのであるが、人間が人工飼育で飼う場合は、鶏卵や牛乳の水溶液・蜂蜜・各種ビタミンをスポイトなどで与えればこれを吸収して育つことができるようだ。」(出典はこちら。)
飼育の難しいクモ幼体も牛乳を人工飼料として育つのであれば、とても楽になるのですが…。
※ 造網性クモに薬物投与する研究の記録映像が残っていないか探してみたのですが、YouTubeに公開されていたのは↓これだけ。
一見もっともらしく始まるものの、後半でパロディ(フェイク?)と分かります。
逆に、パロディが作られるほど有名な実験ということです。
【追記】
私が正にやりたかった実験を行った素晴らしい記事がデイリーポータルZで公開されています。
「クモを酔わせてどうするつもり」と題した記事で、野外で採集したコガタコガネグモにカフェインやアルコールを経口投与して造網への影響を調べています。
クモ好きの方は必見です!