2011/09/29

タヌキの死骸を土に還す者たち



自然の営みとはいえ、かなりグロい映像です。お食事前、お食事中の方は決して視聴されないことをお勧めします。


2011年9月上旬

道端でホンドタヌキNyctereutes viverrinus)の新鮮な死骸が横たわっていました。
おそらく夜に車にはねられ輪禍の犠牲となった(ロードキル)と思われます。
未だ腐臭はありません。
外性器もよく見えず、勉強不足の私にはタヌキの性別は分かりませんでした。
成獣の♀ならあるはずの乳首が見当たらないので、若い個体か♂なのかもしれません。
左前足の膝の辺りに外傷が認められますが、古傷なのかも。
早速、キンバエやニクバエの仲間が集まり始めました。
タヌキ死体の開いた口に一番よく集まるようです。


死体に集まる虫の種類やウジ虫の発育状態などから法医昆虫学者は被害者の死亡時刻を推定できるのだそうです。
人気TVドラマCSIに登場するグリッソム主任の得意とする捜査手法ですね。






千載一遇のチャンスなので、死骸が土に還るまでの過程を定点観察することに。
・分解にともなって、遺体を利用する生きものが次々と入れ替わっていく現象は「遷移」とよばれます。 (大園享司『生き物はどのように土にかえるのか: 動植物の死骸をめぐる分解の生物学』より引用) 
・分解者の活動が、温度に依存しているため、日平均気温を積算した積算温度が遺体の分解の速さとよく合致する。 (同書p44-45より)

出来る限り頻繁に通ってみたのですが、連日暑いこともあって生物分解の進行の早さに驚きました。
ハエが産んだ大量の卵がすぐに孵化し※、幼虫(蛆虫)が強力な消化液で腐った肉や内臓を一気に食べてくれます。
(※このハエの仲間は直接幼虫を産み付ける卵胎生だったかも?…うろ覚え。)
死体はぺしゃんこになり、文字通り骨と皮だけになりました。
毛皮から抜けた毛が四散しました。
ご馳走を食べて成長した蛆虫は周囲の土に潜って蛹になるようです。
私が観察したのはハエだけで、なぜか掃除屋シデムシの仲間は見つけられませんでした。


できれば綺麗に白骨化したタヌキの死体を採集して標本にするつもりでした。
残念ながらやがて誰かに死体を悪戯されるようになり(カラスが啄いて裏返した?)、最後は持ち去られてしまいました。
いつか誰にも邪魔されない所でひっそりと、仏画の九相図のように動物の死体が生物分解されていく一部始終を微速度撮影で記録してみるのが私のささやかな夢です。





2011/09/28

網の張り替えで横糸を張るジョロウグモ♀



2011年9月中旬・早朝・気温22℃

承前。
前編はこちら→「網の張り替えで足場糸を張るジョロウグモ♀」。


3年前の晩秋にジョロウグモの同じ行動を夜撮影しましたが、明るい状態の方が糸や網の視認性が高いです。


新旧の網の境目で少しズームアウトすると、横糸を螺旋状ではなく扇状に張っている(一筆書きの折り返し)ことがよく分かります。
粘着性の横糸を張る際に非粘着性の足場糸を切らないで残すのがジョロウグモNephila clavata特有の「仕事の流儀」です。

隣り合う足場糸の間には大体4本の横糸を張るようです。
(場所によって3本や5本のことも。)
このため完成したジョロウグモの網は「五線譜」によく例えられます。


縦糸への固定点が横糸の場合は足場糸のようにジグザグしないで真っ直ぐになります。
眺めていると、ときどき横糸が明らかに脱線することがあるのがなんとも微笑ましい。
足場糸を跨いでしまっています。
クモも完璧なプログラムに従っているのではなく、ミスをしたり結構適当(大雑把)だったりするのかもしれません(融通性)。
あるいは、ひょっとすると造網には習熟性があるのかも。(成熟するにつれて上達する?)


前編で見たように、先程クモが足場糸を張りながらときどき中断しては短い縦糸を追加していました。
確かに所々で縦糸が分岐しています。


観察中に素朴な疑問がもう一つ浮かびました。
網を張り替えているジョロウグモは新旧の網の境目(折り返し点)に到達したことをどのように知るのでしょう?
編み物をするように縦糸の本数を数えている可能性もありますが、ちょっと考えにくい気がします。
横に移動しつつ足元を探っている第一、二脚で古い網に触れたことを感じているように思います。

  • 粘着性の横糸に触れたことを感知?
  • 使い古しの糸になったことを感知?
  • 糸を弾く振動の違いで未完の網の領域ではないことを感知?




♀がせっせと網を張り替えている間、♂らしき二匹がいかにも居候らしく網でじっとしていました。






撮影終了後に失礼して同一個体♀を一時捕獲しました。
この時期にしてはそれほど肥えた♀ではないものの、体長19mmで腹面に外雌器を認めたので成体だと思います。
(亜成体だったりして…?)


捕獲時に容器の蓋に挟んでしまい歩脚欠損


『カラー自然シリーズ60:ジョロウグモ』 p24より引用。
(ジョロウグモ♀)亜成体の生殖口は、膜で保護されています。成体になると保護膜がとれ、2つのくぼみのようなものができます。この生殖口の奥には精子を保存する受精嚢という袋があり、産卵のときに卵と精子を受精させます。






2011/09/27

網の張り替えで足場糸を張るジョロウグモ♀



2011年9月中旬・早朝・気温22℃

水門の下でジョロウグモNephila clavata)が何匹も大きな網を構えています。
そのうちの♀一匹が朝のお勤めで網の左半分を張り替えていました。
辺りはクズが生い茂っています。
破れたり粘着性の無くなった古い網は既に取り壊され、残った縦糸にジグザグの足場糸を張っているところでした。
クモは腹面を向けていますが、右側の網は取り壊されずに残っています。


ジョロウグモは螺旋状にグルグル回るのではなく、上を向いたまま左右に(振子状に)往復しつつ下へ下へ(外側へ)と張り進みます。

新旧の網の境界で粘らない足場糸を折り返します。
縦糸に付けられていく足場糸は横一直線ではなくジグザグになるのがジョロウグモの特徴です。


張り方を観察していると、足場糸の間隔は体長と比例する(成長とともに増大する)だろうと予測が付きます。
まさに身の丈に合ったweb管理。



時折それまでの作業を中断して縦糸を伝い降りる行動が目を引きました。
縦糸の補強・追加だろうか。
新しい縦糸を枠糸に固定して元の位置に戻り、足場糸を張る作業を再開します。
後に粘着性の横糸を張り始めてからは決して縦糸補強を行いませんでした。
ジョロウグモ特有の行動で縦糸を張る際に糸を分割する※と本で読みましたが、これがそうなのかいまいち良く分かりませんでした(関係ないかも)
※『クモの巣と網の不思議』 p154より
職人の丹念な仕事ぶりに魅了され、また長々と動画に撮ってしまいました。

下限の枠糸に達して足場糸を張り終えると、休むことなく粘着性の横糸を張り始めました。
(つづく→次は横糸張り






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