2011年9月中旬・早朝・気温22℃
水門の下でジョロウグモ(Nephila clavata)が何匹も大きな網を構えています。
そのうちの♀一匹が朝のお勤めで網の左半分を張り替えていました。
辺りはクズが生い茂っています。
破れたり粘着性の無くなった古い網は既に取り壊され、残った縦糸にジグザグの足場糸を張っているところでした。
クモは腹面を向けていますが、右側の網は取り壊されずに残っています。
ジョロウグモは螺旋状にグルグル回るのではなく、上を向いたまま左右に(振子状に)往復しつつ下へ下へ(外側へ)と張り進みます。
新旧の網の境界で粘らない足場糸を折り返します。
縦糸に付けられていく足場糸は横一直線ではなくジグザグになるのがジョロウグモの特徴です。
張り方を観察していると、足場糸の間隔は体長と比例する(成長とともに増大する)だろうと予測が付きます。
まさに身の丈に合ったweb管理。
時折それまでの作業を中断して縦糸を伝い降りる行動が目を引きました。
縦糸の補強・追加だろうか。
新しい縦糸を枠糸に固定して元の位置に戻り、足場糸を張る作業を再開します。
後に粘着性の横糸を張り始めてからは決して縦糸補強を行いませんでした。
ジョロウグモ特有の行動で縦糸を張る際に糸を分割する※と本で読みましたが、これがそうなのかいまいち良く分かりませんでした(関係ないかも)。
※『クモの巣と網の不思議』 p154より
職人の丹念な仕事ぶりに魅了され、また長々と動画に撮ってしまいました。
下限の枠糸に達して足場糸を張り終えると、休むことなく粘着性の横糸を張り始めました。
(つづく→次は横糸張り)
お忙しい方は動画の冒頭を飛ばして途中から(5:57〜)ご覧下さい。
2011年9月中旬・早朝・気温22℃
水辺に近いクズの茂みで造網中のクモを発見。
こちらからは腹面しか見えないものの、丸々と太った♀のアカオニグモ(Araneus pinguis)だと思います。
昨年も10月中旬にほぼ同じ場所で本種を見ています。
関連記事はこちら→「アカオニグモ♀」
見つけたときはもう垂直円網に横糸を張り巡らしている最後の段階で、網を一から作っているのか張り替え作業(メンテナンス)なのか不明です※。
※甑(こしき)の部分をよく見れば区別できるのかもしれません。
予め螺旋状に粗く張っておいた足場糸(非粘着性)を切りながら糸疣から出した横糸(粘着性)を縦糸(非粘着性)に固定していきます。
(…はずですが、なかなか網にうまくピントが合わず足場糸まで映っていません。)
近くの線路で列車が通過すると、クモは警戒して造網作業を一時中断しました。
これは先日観察したドヨウオニグモでも同じでしたので、造網性クモは振動と騒音に敏感なのでしょう。
円網の外側から中央に向かって螺旋状にグルグル回りながら一筆書きで横糸を張っていくのが一般的なコガネグモ科のセオリーのはずです(私の予備知識では)。
ところが観察していると、この個体は回る向きを頻繁に変えることに気づきました。
一方向の螺旋運動ではなく振り子のような動きで横糸を折り返して行きます。
この動きはジョロウグモ(ジョロウグモ科)が横糸を張る動きと似ています。
関連記事と映像はこちら→「ジョロウグモ♀の造網:横糸張り」
ぐるりと一周する部分もあり、何か規則性があるのか気紛れなのかよく分かりません※。
これは意外な発見か!と興奮して帰りました。
しかしクモの本を読み返してみると、実は結構よくあることらしく「なーんだ!」と拍子抜け。
「右に回転していたクモはあるところまで来ると、今度は左回りに逆回転して横糸を張っていきます。種類によって異なるでしょうが、横糸を張り終えるまでに1〜2回は回転の向きを変化するものが普通のようです。」
(『クモの巣と網の不思議:多様な網とクモの面白い生活』p150より引用)
※ この問題に関して「クモ蟲画像掲示板」にて次のようなコメントを頂きました。
種や個体によって造網場所が異なり、スパイラルでないことは特に珍しいわけではありません。同じ個体でも開けた場所で何らかの物理的障害・外部干渉を受けない造網過程であれば完全なスパイラルとなる可能性が高い・・・一般の人はスパイラルな網を見る確率が高いのかもしれません。「規則性」については同種2個体がまったく同じ状況に置かれても折り返す個体とそうでない個体がいるかもしれません。これは各個体の経験やコンディション等に基づく判断であり「気紛れ」ということではないと思います。
網が完成したらクモを捕獲して同定用の写真を撮るつもりでした。
ところが動画撮影の合間にうっかりカメラでクモの網に触れてしまい、クモは造網作業を中断して隠れ家にすばやく退散してしまいました。
辺りの草葉の陰を探しても住居がどこにあるか見つけられませんでした。
しばらく待ってもクモは網に戻ってくれず、未採集・未採寸。
なにより造網の過程を最後まで見届けられず残念無念。
せっかく無風で絶好のコンディションだったのにー。
この日に限って三脚とマクロレンズを忘れるという痛恨のミス。
写真を拡大すると外雌器に垂体らしきものが見えるので、♀成体だと思います。
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組写真の右下は網の中央部 |
2011年9月上旬・深夜
エンマコオロギ♂♀(Teleogryllus emma)ペアの飼育記録
♂は交尾直後こそ大人しいものの、すぐに情熱的な求愛歌を奏で始めます。
ところが♀は今回その気がないようで、しつこく迫られても知らぬ顔で、面倒臭そうに逃げ回ります。
♀が求愛を受け入れて♂にマウントしないとコオロギの交尾は始まらないので、主導権・選択権は♀にあります。
振られ続けても交尾拒否されてもめげずに頑張る♂の様子をご覧下さい。
実は♀の腹端近くの左側には前回の交尾で受け取った精包がぶら下がっています。
持ち歩いている間に汚れたのか、白色から褐色に変化しています。
精包には♀の交尾をしばらく抑制する成分が含まれているのだろうか。
※コオロギ♀が産卵するためには飼育容器に土を入れておく必要があります。撮影時は未だ入れてませんが、後日ちゃんと土を入れてやりました。
【追記】
ネット上で見つけた専門的な論文※を一読すると、どうやらエンマコオロギ♀による求愛行動拒否と求愛行動無視とを専門家は使い分けているようです。しかしその区別が記述されておらず、素人の私が少し観察しただけでは違いが未だよく分かりません。
※「人工再生音が生体へ及ぼす影響 : 2種の求愛歌BGMがエンマコオロギの求愛・交尾行動へ与える効果(2006)」