2011年8月下旬
クワコ(蛾)の飼育記録#3
終齢幼虫から飼育してきた二頭のクワコ(Bombyx mandarina)がようやく繭を紡ぎました。
関連記事はこちら→「繭を紡ぐクワコ終齢幼虫(蛾)の微速度撮影」
口元から金色の絹糸を吐く様子を接写しました。
まず足場糸を張り、葉を左右から引き寄せシェルターを作る初めの工程です。
育ち盛りの終齢幼虫は恐ろしい勢いで桑の葉を食べては糞をモリモリ出していたのですが(快食快便!)、撮りたくても毎回脱糞の予兆が掴めませんでした。
ようやく脱糞シーンを動画に撮ることが出来ました(1:19)。
繭を紡ぐ様子を観察していたら偶然撮れたので、ぎりぎりのタイミングでした。
繭が出来上がってきてからも、クワコ幼虫は作業の合間に脱糞していました。
尾端をシェルターの外に出してから排泄するという行儀良さに感心しました。
繭の中を糞で汚したりしません。
一番驚いたのは、作業の終盤で作りかけの繭から下半身を思いっ切り出して大量の液体をジャーッと排泄したことです。
上の映像(4:07〜)に映っているのは排尿がほぼ終わり、尾端から雫が滴り落ちている状態です(カメラが間に合わず…)。
下に敷いておいた新聞紙がびっしょり濡れるほどの量でした。
初めて見たので病気なのかと心配しましたが、すっきりすると何事もなかったように繭へ戻り、作業を再開しました。
この後で繭の底を絹糸で綴って塞ぎます。
営繭終盤の大量排尿は二頭とも見られたので一般的な行動と思われます。
体内に蓄えておいた余分な水分をこの段階で排泄しておくのでしょう。(蛹化・変態への準備?)
口から吐く絹糸の成分が後半になると変わるのかもしれません。
蛾のネタついでに、最近聞いた秀逸な回文で閉めます。
「ガガの頭にまたあの蛾が」
(つづく→シリーズ#4「クワコ♀の羽化と性フェロモン放出」)
【追記】
桑原保正『性フェロモン:オスを誘惑する物質の秘密』を読むと、この排泄行動も記述されていました。
カイコは最後のトイレを済ませてから一気に繭を作って中に籠もるが、クワゴは最後には繭の中に籠もるものの、繭を作りながら、途中までトイレに抜け出すための穴を用意する。そして最後のトイレを済ませると、安心して繭を完成する。 (p44より引用)
2011年5月下旬
別種のハエトリグモが出会うとどのような行動を取るでしょう?
室内で別々に捕獲して飼い始めたワカバネコハエトリ?♂(体長〜4.5mm)とヤガタハエトリ♀(Pseudeuophrys erratica;体長〜3.5mm)を一時的に同じ容器に同居させてみました。
たまたま♂♀のペアとなりましたが、優れた視覚を有するハエトリグモは当然ながら違う種の間で求愛・交接を行ないません。
種特異的な求愛ダンスを踊ることが性的隔離のメカニズムの一つと考えられています。
このワカバネコハエトリ?♂は捕獲した時から左の第一脚を欠損しています。
容器内でヤガタハエトリ♀の存在を認めるとワカバネコハエトリ♂は一本しか無い第一脚を高々と振り上げました。
この行動はハエトリグモではよく見られる威嚇ディスプレーと思われます。
それを見たヤガタハエトリ♀は特に歩脚や触肢を使った示威行動を取ることなく、おとなしく退却しました。
体格差が多少あるものの、狩りなどの直接攻撃に至ることもありませんでした。
前の記事で報告したように、後に同じ個体のヤガタハエトリ♀を用いて同種と思われるヤガタハエトリ♂と同居させました。
ところが、なぜかペアリング(求愛・交接などの繁殖活動)が上手くいきませんでした。
このヤガタハエトリ♀は奥手なのか気難しいのか出会いに消極的で、異種のハエトリグモ♂に対する反応と同じでした。
関連記事はこちら→「ヤガタハエトリ♂♀飼育記録:プラトニックな関係(求愛拒否?)」
今思えば、ヤガタハエトリvsワカバネコハエトリの対決をどうせやるなら♂同士の方がクモ合戦として面白いはずなんですけど(文字通り異種格闘技)、試すのを忘れました。