2011/01/09

クサグモ幼体の脱皮



2009年12月上旬

出嚢してから飼育容器内で張り巡らした棚網上でクサグモAgelena silvatica)幼体が次々に脱皮していました。
小さな抜け殻が網のあちこちにぶら下がっています。
孵化してから何も食べていないはずなのに、2齢から3齢幼体になったのだろうか。
脱皮直後で抜け殻の傍らでクチクラが固まるまで休んでいる個体にもう一匹の幼体が接近したので、共食いが始まるのかと緊張しました。
触肢で触れてはいるものの、噛みついてはいないようです。
衣替えしたばかりの無防備な個体は身の危険を感じたのか殆んど動きません(擬死?)。
どうやらただのニアミスだったようです。
出嚢後のクサグモ幼体はいわゆる団居の形成を行いませんでした。
一般にクモの幼体は3齢になると分散します。
3齢でようやく毒腺が発達し、自力で虫が倒せるようになるのだそうです。
 (つづく


クサグモ二齢幼体の出嚢



2009年11月下旬

杉の枝から採集したクサグモAgelena silvatica)の卵嚢を室内の飼育容器に入れて放置していたら、15日後に数匹の幼体が出嚢しました。
卵嚢内で一回目の脱皮を済ませた二齢の幼体と思われます。
歩きながら卵嚢の周囲に糸を引き回しています。
少し散歩するとすぐに仲間の居る卵嚢に戻りました。
卵嚢と一緒に採集した母クモの死骸はカビが生えていて残念ながら同定出来ませんでした。
しかし出嚢した幼体の色(頭胸部が赤くて腹部が黒い)から近縁種の中でもクサグモであることが判明しました(コクサグモ、イナヅマクサグモとは違う)。
室温で飼育していること(明暗条件もコントロールしていない)、採集直後に観察のため卵嚢の外側を鋏で切り裂いていることなどから、当地における野外での正常な出嚢時期(おそらく早春?)とはかなりずれていると思われます。
季節外れに早く出てきてしまったものは仕方が無いので、出来る限り飼育を続けてみます。
つづく
 


【追記
『クモのはなしI:小さな狩人たちの進化のなぞを探る』第20話 加藤輝代子「冬の眠り」p177によると、
(東京付近で調べた)クサグモの冬ごしは、日長で支配される「休眠」でした。10月から12月にかけて、日の長さがだんだん短くなってくると、卵嚢の中の子グモはこれを感じて眠りにつき、たとえ気温が高くても外へ出てきません。そしてある期間低温(冬)の時期を経過すると休眠は消去され、気温さえ高くなればいつでも出嚢できる準備がととのいます。この休眠が消去される時期は、冬至のころと推定されますが、実際に出嚢するのは3月下旬ごろからです。

クサグモの卵嚢と一齢幼体



2009年11月上旬

杉の枝先にクサグモAgelena silvaticaの卵嚢が付いていました。
少し歪(いびつ)ですけど、白い星型の美しい造形です。
母親の♀クモは卵嚢の傍で死んでいて白カビが生えていました。
出嚢済みなのかどうか分からなかったので、鋏で卵嚢を切り裂いてみました。
中で孵化直後の一齢幼体がびっしり蠢いて居ました。
このまま飼育してみます。
つづく


【追記】
『クモのはなしI:小さな狩人たちの進化のなぞを探る』第20話 加藤輝代子「冬の眠り」p175-177に、東京近郊で調べられたクサグモの生活環が記されていました。
♀親が9月から10月にかけて、多面体の紙風船のような卵嚢をつくります。そしてその中には、クリーム色の卵が、真綿でくるんだような状態で70個ほど入っています。卵は10日ほどでふ化して、幼体はその後もう一度脱皮して2齢幼体になりますが、卵嚢から出ることなく、そのまま冬をこします。この幼体が卵嚢から出嚢するのは春になってからです。



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