2022/03/01

切株内の巣で晩秋に生き残ったキイロスズメバチ♀の群れ

 

2021年11月下旬・午前9:15頃・くもり・気温〜8℃(10℃以下) 


夏に山腹の草むらでキイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)の巣を見つけました。
前回の記事:▶ 草むらの奥にある巣に出入りするキイロスズメバチ♀の群れ【HD動画&ハイスピード動画】
生態動画を撮影したくても、スズメバチ専用の防護服を持っていない私は、怖くてなかなか巣に近づけませんでした。 
晩秋で霜が降りるぐらい気温が下がると変温動物のスズメバチは活動できなくなり、攻撃性・危険性はほとんど無くなります。 
気温が上がらない午前中の早い時間に調査することにしました。 

実は夏から秋にかけて現場をときどき訪れていたのですが、2回目以降は蜂の姿が無くなったので、てっきり誰か(林業関係者)に駆除されたのかと思い込んでいました。 
周囲の地形と背後の杉の木を目印に営巣地を覚えていたつもりが、似た地形に惑わされて場所を勘違いしていたようです。 
今回はしっかりGPS座標を頼りに現場を再訪すると、キイロスズメバチの巣が残っていました。
コロニーを定点観察できなかったのは痛恨のミスです。 

枯れ草に覆われた斜面を少し登りかけた地点に伐根された古い切り株が転がっていて、その内部のちょっとした樹洞がキイロスズメバチの巣窟になっていました。 
上から見下ろすと、樹洞の天井部の隙間が鱗状の巣材(外皮)で塞がれています。 
樹上営巣性のキイロスズメバチが地面からこれほど低い位置の樹洞内に営巣したのは珍しい気がします。 
もしかすると、ここは創設女王による母巣で、コロニーは後にどこか別の場所に移動巣(第二次巣)を作り引っ越したという可能性も考えられます。 
私のミスで観察漏れの期間があることがつくづく悔やまれます。 

蜂の巣が何者かに破壊された痕跡も残されていました。 
斜面の下には巣盤の大きな欠片が転がっていました。 
雨水をぐっしょりと含んでいたので、巣盤を採集する気になりませんでした。 
キイロスズメバチ成虫の死骸も1匹見つかりました。 
死骸の頭部は失われ、体も生物分解が進んで脆くなっていました。 

ヒトが駆除したにしては中途半端(お粗末)です。 
生き残りのワーカー♀が多数、巣内に留まっていたからです。 
野生動物(クマ?)や野鳥(ハチクマ?)がキイロスズメバチの巣を襲って蜂の子を捕食したのでしょうか? 
難を逃れた残党のワーカー♀がコロニーを再建したのかな? 

ワーカー♀の残党が巣内の地面に多数(約10匹)転がっていました。 
初めは死んでいるのかと思いきや、小枝でつついてみると緩慢に身動きします。 
気温が低過ぎて(〜8℃)、生き残りのキイロスズメバチ♀は飛んだり私を攻撃したりすることができません。 
低温障害で動きがひどく鈍く、ひっくり返しても自力ではなかなか起き上がれません。 
飛び立つ力も全くないようです。 
防護服を着用しなくても、殺虫剤や発煙筒を使わなくても、キイロスズメバチの巣内を安全にじっくり観察することができました。 
 新女王や雄蜂♂は既に巣を離れてしまった後のようです。 
巣口に15cm定規を置いて写し込みました。 

後半は内部の構造を接写するために、ハンディカムを樹洞内に差し入れました。 
補助照明の白色LEDを点灯しています。 
カメラを上に向けると、巣の天井部に巣盤が残っていました(破壊後に再建した巣盤?)。 そこにも蜂がびっしりと身を寄せ合い、かすかに動いていました。 
まさか新女王の集団越冬地なのかな? 
秋の長雨で樹洞内は湿っぽく、あちこちに白っぽいカビが生えていました。 
現場は豪雪地帯の山中なので、冬になると深い雪の下に完全に埋もれてしまいます。 
春が来るまでに雪崩によって切り株ごと谷底まで流されてしまうかもしれません。 (※追記参照)
キイロスズメバチの新女王はもっと安全な場所で越冬するはずです。 
おそらく生き残りのワーカー♀が余生を送っている(寿命が来るのを待っている)だけでしょう。 
今思うと、蜂を採集して採寸し、ワーカー♀か新女王か確定すべきでしたね。 
目視では特に大型(=新女王)とは思いませんでした。


※【追記】
2022年6月中旬。

冬に積もった根雪が完全に溶けても切り株の位置は変わっていませんでした。
同じ場所で2年連続して営巣するスズメバチはいませんでした。
樹洞内は空っぽで、古巣の痕跡は跡形も無くなっていました。
スズメバチの巣や死骸を食べる昆虫によって分解されたのでしょう。

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