2018/08/19

ハコネウツギの花で穿孔盗蜜と正当訪花を自在に切り替えるクロマルハナバチ♀



2018年6月中旬
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ハコネウツギに正当訪花で採餌するクロマルハナバチ♀

ハコネウツギ(別名ベニウツギ)の生垣でクロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀が訪花していました。

少なくとも2匹のワーカーが採餌していたのですが、動画に撮りながら同一個体を追いかけると、正当訪花と穿孔盗蜜を切り替えていました。
穿孔盗蜜とは、漏斗状の花筒の根元を外側から噛んで穴を開け、そこから舌を差し込んで蜜腺を舐める採餌行動のことです。
特にラストシーンを見てもらうと(@4:00〜)、穿孔盗蜜の手順がよく分かります。(これは会心の証拠映像!と自画自賛)
蜂は後ろ向きなので口元の動きは見えませんが、花筒の奥を正面から見ていると、蜂が花弁の根元に外側から小さな穴を開け、次に黒くて細長い舌をその穴に挿入して蜜腺を舐めています。
植物の側からすると送粉の報酬としてせっかく花蜜を用意したのに、盗蜜されると丸損になります。
クロマルハナバチはマルハナバチ類の中でも舌が短く、盗蜜の常習犯として知られています。
ハコネウツギの花筒に対してクロマルハナバチ♀は正当訪花でも吸蜜できるのに、なぜか盗蜜行動⇔正当訪花と自由自在に(気紛れに?)スイッチするのがとても面白く思いました。
ハコネウツギの咲いたばかりの白い花でも、咲いてから日にちの経ったピンクの花でも、クロマルハナバチ♀は穿孔盗蜜していました。

後脚の花粉籠に注目すると、白い大きな花粉団子を付けていました。
もし盗蜜に専念しているのであれば、花筒の中で待ち構えている雄しべに全く触れませんから体は花粉で汚れず、後脚の花粉籠は空荷のはずです。
こうした個体は花粉籠が満タンなのに胃は未だ満腹ではない、と仮定すれば説明できるでしょうか。
つまり、「もう花粉で体が汚れるのは煩わしいけれども帰巣する前に蜜だけ吸いたい」と判断した蜂が正当訪花から盗蜜に切り替えたのかもしれません。
しかし、逆に盗蜜から正当訪花に切り替える場合もあることをこの仮説は説明できません。
自分で穿孔するのは面倒でやらないけれど、もし先客が穿孔した盗蜜痕を見つけたら手っ取り早くそれを利用して盗蜜する、という二次盗蜜者の採餌戦略なのかもしれません。
あるいはもしかすると、ハコネウツギの花筒の長さには変異があるのでしょうか。
訪花するクロマルハナバチ♀はそれを瞬時に見分けて、正当訪花しても舌が蜜腺に届きそうにない長い花筒の場合は盗蜜するのかな?

興味深い問題ですが、素人にはこれ以上どうやって追求したらよいものやら、分かりません。
とりあえず、個体標識したワーカー♀をひたすら追跡して採餌法を記録する、ぐらいしか思いつきません。

その後で蜂の舌の長さや訪花した花筒の長さを丹念に採寸すれば何か分かるかもしれません。
そもそも盗蜜行動は各自が学習によって身につけるものなのか、それとも生得的な採餌法なのか、気になります。



【追記】
同じハコネウツギの花でひたすら穿孔盗蜜に専念するクマバチ♀とは対照的です。


クロマルハナバチ♀@ハコネウツギ訪花+穿孔盗蜜
クロマルハナバチ♀@ハコネウツギ訪花+穿孔盗蜜
クロマルハナバチ♀@ハコネウツギ訪花+穿孔盗蜜
クロマルハナバチ♀@ハコネウツギ訪花+穿孔盗蜜

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