2016年10月下旬・午後15:04〜15:12
里山の麓にある建物の土台(基礎)となるコンクリートの壁面(西面)にザトウムシの仲間が群がっていました。
おそらく地面から歩いて登ってきたのでしょう。
壁面の数カ所に別れて集結しています。
初めは交尾や求愛行動なのかと思ったのですが、垂直の壁にへばり付くように、じっと静止していました。
ザトウムシの配偶行動(※)は未見ですけど、秋に行うのですかね? (確かザトウムシの繁殖期は秋ではない…はず?)
おそらく集団越冬する場所を探している途中なのでしょう。
まず、3匹(a,b,c)の群れに注目しました。
素人目には同種に見えるのですけど、真相は分かりません(種名不詳)。
日本産ザトウムシを見分けられる実用的な図鑑がいつになっても刊行されないので、在野のナチュラリストは困ってしまいます。
形態分類が困難なのであれば、DNAバーコーディングによる簡便かつ確実な同定が早く普及して欲しいものです。
ザトウムシを殺さなくても歩脚の先端を切除すればDNAを採取する試料になるはずです。
全くの当てずっぽうですが、私の写真と見比べると素人目にはオオナミザトウムシ(Nelima genufusca)と似ています。
胴体の大きさ(体長)は、まちまちです。(未採寸)
成体だと体長は♀>♂らしく、更に幼体が混じっているのかもしれません。(私は性別の見分け方も知りません)
ちなみに、英語版wikipediaによるとNelima genufuscaはカワザトウムシ科に属するらしい。
日本語のサイトではマザトウムシ科らしいのですが、一体どちらが正しいの?
3匹とも動きがありません。
左から順によく観察すると、
a:計4対(8本)あるはずの歩脚が6本しか無くて、根元から欠損しています。
b:歩脚を1本欠損(-L1)
c:五体満足の個体。
この歩脚の欠損状態で個体識別が可能です。
bとcは互いに長い歩脚で恐る恐る(?)触れ合った結果、この微妙な距離を保っているように思います。
やがて、左下に居た個体aがコンクリート壁をどんどん登り始め、仲間(b,c)に接近します。
長い歩脚で触れられても、先客の2匹(b,c)は逃げたり威嚇したりせず無反応でした。
胴体を跨いですれ違う際に触れたものの、交尾行動は見られませんでした。
庇の下に達したaが静止すると、今度はbが登り始めました。
aに接近すると、互いに身を寄せ合います。
おそろしく長い歩脚同士が互いによく絡み合わないものだと感心します。
しばらくすると、個体aは一番長い歩脚R2だけ動かして、右隣の個体cの様子を探っています。
話には聞いていましたが、実際にザトウムシの大集合を観察するのはこれが初めてです。
カメムシのように、個々のザトウムシが集合フェロモンを放出しているのでしょうか?
今回の3匹は、少なくとも歩脚の触覚を介して互いの存在を認識していることは間違いありません。
越冬適地を各自が自由に探索していると、自然に(結果的に)同種が集まってしまうのかもしれません。
ザトウムシが群がる壁面を一日中、微速度撮影すれば分布や集合の変化(離合集散)を追跡できて面白い映像になりそうです。
しかし、あいにくカメラの三脚を持参しておらず断念。
コンクリート壁面の上部には庇があって(地上からの高さ80cm)、このまま壁面にへばりついていても雨は凌げるのですが、本格的な冬になればこの高さだと根雪に埋もれてしまいます。
したがって、このままこの壁面で集団越冬する訳ではないでしょう。
実際、後日に現場を再訪したらザトウムシの群れは一匹も居なくなっていました。
つづく→別の小群の行動
※ 『クモのはなしI:小さな狩人たちの進化のなぞを探る』によると、
ザトウムシはクモ形類中、一部のダニを除くと唯一、直接的な交尾を行なう動物ですが、多くの種類では交尾に際して特別な求愛行動のようなものが見られません。ザトウムシの交尾は二個体が出会い、♂にその気さえあればたいていすぐに成立します。♀は、はたから見るかぎりでは、まったく受動的です。 (p132より引用)
【追記】
クモと違ってザトウムシは歩脚が欠損しても再生能力をもたないのだそうです。
ザトウムシの欠損した脚は脱皮で再生しないため、これは頻繫に使われるほどコストがかかる防御手段であり、脚の減少により機動性・感覚能力・代謝率などが低下することが知られている[58][59][60][61][62][63]。一方、脚の欠損は知られる限り交尾の成功率に顕著な悪影響を与えていない[64]。 (wikipedia:ザトウムシより引用)
a,b,c |
b,a,c |
b,a,c |
aがbを跨ぐ |
b,a |
b |
c |
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