2015年11月上旬
堤防の水門に張られた網にジョロウグモ♀(Nephila clavata)に生き餌を給餌してみました。
歩脚に欠損のない五体満足の個体ですけど、体格はやや小型の印象。(未採寸)
水門の裏面を徘徊していたホソヘリカメムシ(Riptortus pedestris)を生け捕りにし、ジョロウグモの網に投げつけました。
すぐに駆けつけたジョロウグモ♀はかなり長時間、獲物を噛んでいました。
その間は見ていても退屈なので、6倍速の早回し映像に加工しました。
クモに噛まれても毒液があまり効かないのか、ホソヘリカメムシは後脚を動かしてしばらく暴れています。
ホソヘリカメムシは太くて棘のある腿節を闘争用の武器としています。
しかし胸部を噛まれているため、反撃したくても武器が敵に届かず虚しく空を切るばかりです。
・(ホソヘリカメムシの)雄の成虫の後脚腿節が不釣り合いに太く、その内側に棘の列がある[2]。
・雄は雌の居場所を縄張りとし、縄張りをめぐって争う。争いでは棘がついた後ろ足で相手をはさみつけるという方法がとられ、後脚腿節が長いものが有利になる[12]。(wikipediaより)
クモに攻撃されている間、異臭を全く感じなかったので、カメムシは身を守る毒ガスを発しなかったようです。
不思議に思い調べてみると、ホソヘリカメムシは
カメムシには珍しく、匂いがない[4]。(wikipediaより)
一方、ジョロウグモは噛み付きながらときどき歩脚の先で獲物に触れて生死を確認しているようです。(歩脚の先で獲物の周囲の糸を切っているのかも?)
次にジョロウグモは獲物を梱包ラッピングし始めたものの、なぜか手間取っています。
水色のペンキで塗られた水門が背景だとジョロウグモの網も糸も極めて見え難いのですが、梱包ラッピングする捕帯の糸が殆ど出ていない点が気になりました。
レンズを至近距離まで近づけても捕帯の糸は見えません。
晩秋の餌不足でジョロウグモ♀が飢餓状態となり、出糸腺(ブドウ状腺)の糸が枯渇しているのかな?と想像しました。
あるいは産後の肥立ちが悪いのかもしれません(産卵した直後なのか?)。
ジョロウグモ♀は最小限の糸を節約して使い、時間をかけてなんとかラッピングしました。
獲物を噛んで体外消化しながら直ちに消化吸収して、泥縄式に糸を合成したのかもしれません。
ようやく毒が回り、獲物は動かなくなりました。
クモは噛みつきを止めてラッピングに専念しています。
『スパイダーウォーズ』p145-146によると、
オニグモはコガネグモと同じように攻撃ラッピングを多用するクモですので糸腺の数が多く、ジョロウグモはそれをしないので糸腺(ブドウ状腺)も少ない、とも解釈できます。噛みつきによって殺した餌の接着や梱包には、たくさんの糸は必要ないのです。
ジョロウグモ♀は円網の甑に獲物を持ち帰ると身繕い。
糸で汚れた歩脚の先を順に舐めて掃除しています。
化粧が済むと、網に吊り下げていた獲物を引き寄せ、ようやく口を付けました。
【追記】
吉田真『クモはどのようにして餌を捕らえるか?』によると、
ジョロウグモ属のクモでは、捕帯による固定はみられず、固定はもっぱら噛みつきによってなされます。しかし、このクモの網には、セミ・バッタ・トンボなどの大型の昆虫や、ハチなどの危険な昆虫、カメムシなどの不快な匂いを出す昆虫の食いかすが残されています。このことは、捕帯による固定ができなくとも、大型あるいは危険な餌を捕獲できることを示しています。(中略)大型の餌または危険な餌がかかると、このクモはなかなか噛みつこうとせず、固定には長い時間がかかります。その間に網から逃れる昆虫もいるのでしょうが、多くの糸を使った網が餌の逃亡を防ぐ効果的な罠となっているのかもしれません。 (ポピュラー・サイエンス『動物たちの気になる行動(1)食う・住む・生きる篇』p46-47より引用)
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